なぜレクサスは中国で生産をしないのか?国内生産にこだわるワケ

2014 Lexus NX 200t

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不景気といわれても富裕層が活気づいている中国。世界の高級車メーカーは中国市場に狙いを定め、ドイツの高級車メーカーのメルセデスベンツ、BMW、アウディは中国国内で販売だけでなく現地生産までしています。しかし、日本を代表するブランド、レクサスは中国で製造していません。一体どのような理由があるのでしょうか?
Chapter
レクサスは北米市場で基礎を築いた
レクサスは16年を経て日本でも展開
アジア市場でのレクサス
レクサスの国内生産にこだわるワケ
中国市場におけるレクサスの本音と現実

レクサスは北米市場で基礎を築いた

レクサスはトヨタが1989年から展開する高級車ブランドです。アメリカで誕生し、初代セルシオをレクサスLS400として発売されました。キャデラックやリンカーンといった米国内の伝統的な高級車ブランドはもちろん、メルセデスベンツやBMWなどの強豪がひしめく市場で、故障しにくく快適で機能的な高級車として人気が出て、北米で確固たる地位を確立しました。

反対に、伝統的な高級車ブランドが数多く存在するヨーロッパでは、発売当初、苦戦する結果になったのですが、2000年代半ばからレクサスでもハイブリッド車を展開したことが転機となり、エコロジーな高級車として徐々に販売台数も伸びてきました。

レクサスは16年を経て日本でも展開

日本市場での展開に、トヨタは慎重でした。同社にはクラウンという何十年もの歴史を持つ高級車があり、それよりも高額な自動車となると輸入車への羨望が強いためです。そのうえ、1990年代半ばからバブル崩壊による不況に陥っていたことも、展開に慎重になっていた大きな理由になっていました。

その後、長く続いた不況から「いざなみ景気」と呼ばれる景気回復期入り、この影響を受け、トヨタは時期を慎重に見極めたうえで、2003年から日本市場でレクサスを展開すると発表しました。

当初はGS、IS、SCの3車種のみ鮮烈な印象があった訳ではないですが、2006年にセルシオを廃止して最高級車のレクサスLSを投入してからは販売台数も急増しました。LSは個人オーナーも多いですが、日本のトップの総理大臣の専用車にもレクサスLSが使われているように、社長車に使用する法人も多くあります。

アジア市場でのレクサス

レクサスは2000年頃からアジア市場でも展開しており、日本を除くアジア地域では16ヶ国で販売しています。ドイツ車ほどではありませんが、頑丈で高品質と、もともと高い評価を受けている日本車です。豊かになってきたアジア市場でレクサスが受け入れられるのは自然な流れだったでしょう。

さて、冒頭にも書きましたが、メルセデスベンツ、BMW、アウディ、ボルボといった高級車メーカーは、中国に生産工場を持っています。中国で生産工場をもっている理由は、中国市場が大きいから、というのはもちろんですが、最大の理由は関税の高さにあります。

中国では完成車の輸入に25%の関税をかけています。しかし、国内生産にすれば、この関税が不要になります。そのため、中国市場で販売台数を伸ばすため、多くのメーカーが中国で現地生産をしているのです。

しかし、現地生産といっても適当な場所を見つけて工場を作ればいい、というものではなく、中国の場合、現地企業と合弁会社を設立する必要があります。

それでは、レクサスが中国に工場を持たない理由には何があるのでしょうか。

レクサスの国内生産にこだわるワケ

現在、レクサスは全ての車種が日本国内で製造されて、世界各国へ輸出されています。例外としては、RXがカナダ・オンタリオ州のTMMC工場でも製造されていますが、その他はすべて国内工場です。

理由としては、トヨタの高級ブランドとして、クラウンなどをも上回る完成度が要求されるからと推察されます。トヨタ車の精度は世界トップクラス。各パーツの隙間や塗装のツヤや質など、欧米の高級車メーカーでも追いつけないほどのクオリティを誇ります。レクサスではそれを維持するために、国内生産にこだわっているのでしょう。

しかし、トヨタも中国生産をまったく考えていない訳ではありません。2015年7月には、トヨタがレクサスの中国生産を少なくとも2018年まで先送りする計画だと報じられました。
つまり、「中国で製造しよう」という考えはあるのです。当初は、年内(2015年内)に決定する方向だった、という報道も出ています。

中国市場におけるレクサスの本音と現実

報道では、トヨタの中国幹部の話として、「中国自動車市場の成長が緩慢になってきたこと」「円安で日本での生産コストが低下していること」を中国生産延長の理由として挙げています。そのうえで、「トヨタが将来的に中国でレクサスを生産することは確実」としつつも、現地生産を始める前に「やるべきことがある」と述べた、と紹介しています。

これに対し、中国メディアの盖世汽車網は、「一方で合弁会社を設立することで、「中国企業にレクサスブランドの主導権を握られたくないと思っているのではないか」と論じています。
2015年6月に行われたトヨタの株式総会では、豊田章男社長が「日本での生産が、トヨタに一定の競争力を持たせている」と語ったと伝えられています。

中国人は日本人以上に欧米ブランドの崇拝が強いそうで、レクサスは中国市場では好調ではありません。また、ドイツメーカーは中国での現地生産を開始して長いですが、レクサスはブランドそのものが浸透していないため、中国生産の計画が遅れているのではないでしょうか。

現地生産の前の「やるべきこと」とは、中国国内でのブランド力を高め、販売台数そのものを伸ばすことにあります。そういった課題を抱えつつ、2018年頃に改めて中国生産を行うか判断を行うことになりそうです。
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