ホンダ NSXがマイナーチェンジ!ひと足早く公道試乗してみた

メーカー希望小売価格2,370万円(税込)という高価なスーパースポーツ、ホンダ NSXがマイナーチェンジを実施した。といってもマイナーチェンジが発表されたのは2018年10月25日で、実際にデリバリーが始まるのは2019年5月となっている。こうしたスケジュールは、NSXが少量生産のスーパースポーツであり、またアメリカで製造される輸入車だからゆえといえそうだ。そう、ホンダのスポーツフラッグシップであるNSXは、オハイオ州にあるNSX専用工場で、8台/日というペースでじっくりと作られている。
文/写真・山本晋也
シャシーは引き締め、レスポンスはマイルドに
2019年モデルのNSXの外観では、フロントグリルをボディ同色として、メッシュパーツ類をグロスブラックにしている程度で、本当にマイナーチェンジ(小変更)といった雰囲気。ボディカラーに新色サーマルオレンジ・パールが追加されたのが目立つくらいだ。じつは価格も据え置きだったりする。
フットワークについてはタイヤが専用セッティングを受けたコンチネンタル・スポーツコンタクト6にグレードアップされ、さらに前後スタビライザー(アンチロールバー)のバネレートを上げ、リアのサスペンションブッシュやハブベアリングの剛性アップをすることで、ハンドリングを改善している。
フロント2モーター、リア3.5L V6ツインターボ+ワンモーター+9速DCTからなる“ハイブリッド”パワートレインはメカニズムこそ変わっていないが、ドライバーとの一体感をより高めるよう制御系の味付けを変えている。
スポーツハイブリッドSH-AWDはスムースに
そうした進化は市街地走行でも十分に確認することができた。フロントの左右それぞれに独立した駆動モーターを配し、その駆動力によってハンドリングのレベルを上げようというのがNSXにおけるスポーツハイブリッドSH-AWDの狙いだ。
ところが、マイナーチェンジに合わせて熟成したことでSH-AWDの「わざとらしさ」が消え、いつモーター駆動がハンドリングに介入してきたのか、まったく感じられないようになっている。
ありがたみは感じづらいかもしれないが、スムースでナチュラルなハンドリングは従来型よりも印象を良くしている。従来型であってもSH-AWDの制御がハマっている領域では、両腕とフロントタイヤがつながったかのような一体感を覚えたが、その領域が広がっているといったら理解いただけるだろうか。
また、前述したようにリアのサスペンション周りで剛性アップしたことは後輪からのインフォメーションを増やした。さらに電動調整シートが標準装備になったことでシートレールの剛性感も上がった。
こうした相乗効果は、自分の体がクルマとシンクロしているかのような感覚さえ味合わせてくれる。ドライバーは曲がりたいようにステアリングを操作すれば、あとは機械が理想的なラインをトレースしてくれるのだ。
スーパースポーツらしい緊張感が少ないのもNSXの特徴だ。バッテリーが十分に充電されている状態であれば低速時にはEV走行をする(フロントモーターだけで走る)ことができ、エンジンは停止しているのでキャビンは驚くほど静か。ハイグリップなワイドタイヤからの入力は気になるが、市街地をEV走行している限りはスーパースポーツの押し出しは感じない。まるでフィットを運転しているかのようなリラックスした気分になれる。
もちろん、そこからアクセルペダルを踏み込むと、本当に一瞬で法定速度に達してしまうほどのパフォーマンスを確認でき、スーパースポーツの実力を垣間見ることができる。
ハイブリッドのスポーツカー、スーパースポーツというのは他社からも登場しているし、世界的な電動化トレンドを考えるとハイブリッド・スーパースポーツのライバルは増えていくのだろう。
しかし、スポーツハイブリッドSH-AWDによる異次元のハンドリングやEV走行でのフレンドリーさはNSXだけの価値である。イタリアンスーパーカーと比べると刺激という要素では物足りないと思うかもしれないが、それがホンダのスーパースポーツらしい特徴といえるだろう。