"トルクフル"な走りとは、どういう意味?

マツダ CX-3 2016

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クルマの評論でよく使われる"トルクフルな走り"というフレーズ。最近では、自動車メーカーの作るカタログにもトルクフルという言葉が使われるようになりました。しかし、意外に抽象的でわかりにくいと思っている方も多いようです。ここでは、トルクフルとはどういうものなのか考えてみましょう。

文・赤井福
Chapter
そもそもトルクとは?馬力となにが違う?
最近よく聞く、トルクフルとは?
トルクフルだとなにが良いのか?

そもそもトルクとは?馬力となにが違う?

クルマのエンジン性能を表す基準にトルクと馬力があります。トルクとは、エンジンがタイヤを回す力のことで、”瞬間的な力”のことをいいます。対して、馬力というのはトルクの瞬間的な力を”持続する能力”のことです。

この馬力は、トルク×時間で求めることができます。つまり、トルクはクルマが地面を蹴り出す瞬間的な力で、馬力は持久力のようなものです。

最近よく聞く、トルクフルとは?

トルクフルという言葉は、20年くらい前から、クルマを評価する際に良く使われるようになりました。1990年代、エンジン性能を示す数値は馬力がメインで、エンジンを高回転域までしっかり回して、最大パワーを体感するようなシーンを想定していました。

エンジンがもっとも効率良く力を発揮出来る”パワーバンド”という回転域を外さないようにギアチェンジをして、よりパワフルな加速感を得ていました。ドッカンターボが、流行った時代でもありました。

近年では、最高出力を闇雲に大きくするよりも、日常のドライビング領域で頻繁に使う低い回転域で、しっかりと力を出すエンジンが増えてきています。

停車状態からの発進の滑らかさや、合流の際の加速が良く、アクセルペダルの動きに対してクルマがリニアに加速してくれるので、運転がしやすいのが特徴です。普段良く使う回転域の加速性能がいいので、馬力だけが大きなクルマよりも、クルマが速くなったように感じます。

自動車メーカー各社がエコカー開発に力を入れており、小排気量でも低速トルクのしっかりしたクルマが多くなり、以前は高回転域でしか感じ取れなかったトルクを低い回転域から広く感じ取れるようになったことから、”トルクフル”という表現が定着したのです。

トルクフルだとなにが良いのか?

クルマがトルクフルであるという表現は、称賛の意味で使われます。現代のクルマにとってトルクフルであることは、絶対条件に近い項目です。

低速でトルクのあるエンジンは、アクセル開度が少なくても十分に加速しますから、ドライバーが感じるストレスは少なく、燃費にも有利です。さらにエンジン回転を上げずに走ることができるので、エンジン騒音も抑えることができるという良いことづくめなのです。

ちなみに電気モーターは、回転しはじめから最大トルクを発生できるので、ゼロ発進が抜群に優れています。ただし、その後はトルク曲線が下降するので、高速域では発進時ほどトルクフルに感じることはありません。

どんな回転域からも力強いトルクを発生し、アクセルペダルを踏む足にシンクロするような加速感を得られれば、ドライバーの高揚感につながります。また、通常の運転では高回転域を使うことが少なくなるので、燃費もよくなり、エコカーとしての評価も上がります。エンジンがトルクフルであることは、乗って楽しく、お財布にも地球にも優しいクルマといえるのです。


トルクフルという言葉は、単に数値上の性能競争ではなく、自動車メーカーがドライバーと地球環境に目を向けた開発を行った結果、生まれた言葉なのかもしれませんね。

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文・赤井福
フリーライター。大学卒業後、金融業に従事。その後、6年間レクサスの営業マンとして自動車販売の現場に従事する。若者のクルマ離れを危惧し、ライターとしてクルマの楽しさを伝え、ネット上での情報発信を行っている。
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