日産、2018年秋に実用化!? 夢の可変圧縮比エンジンとは?

VCターボエンジン 可変圧縮比エンジン

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かつては「夢のエンジン」といわれた可変圧縮比エンジンを、日産が2018年秋に実用化する予定です。圧縮比を条件に応じて最適化することによって、低燃費と高出力を両立する画期的な可変圧縮比エンジン。その仕組みや効果とは?

文・吉川賢一
Chapter
圧縮比を可変にすると、なにが良いのか
可変圧縮比(VCR)機構とは?
VCRの効果とは?
今後の展開

圧縮比を可変にすると、なにが良いのか

エンジンの圧縮比とは、圧縮行程でシリンダーのなかの混合気が、ピストンの上昇によって、何分の1に圧縮されるかの比率のことで、設計によって決まる数値です。圧縮比が高いほど、エンジンの熱効率は高くなります。

熱効率が高いということは、同じ燃料量で多くのエネルギーを発生する、多くの仕事をすることを意味します。結果として、熱効率が高いエンジンは、燃費が良く、高出力になります。

一方、圧縮比を上げると、高回転・高負荷運転条件でノッキングが発生しやすくなります。したがって通常は、ノックが発生せず、かつできるだけ高い圧縮比になるように設定されます。

対して、低回転・低負荷運転条件では、高い圧縮比であってもノックしないので、本来はもっと高い圧縮比に設定しておくことが理想です。

つまり、エンジンは低回転域と高回転域で、効率の良い圧縮比が異なるということ。しかし、これまで市販用エンジンの圧縮比は、固定されたもので、どちらかエンジンが求めるほうに寄せるしか方法はありませんでした。この問題を解決するのが、可変圧縮比機構です。

可変圧縮比機構は、低回転・低負荷運転条件では圧縮比を高く、高回転・高負荷運転条件では圧縮比を低く設定します。また条件に応じて、自動的に最適な圧縮比になるようセットすることにより、燃費と出力を両立することができるのです。

可変圧縮比(VCR)機構とは?

過去にも自動車メーカーからは、いくつかの可変圧縮比(VCR=Variable Compression Ratio)機構が提案されましたが、機構の複雑さや耐久性の問題から、実用化された例はありませんでした。

日産のVCR機構は、圧縮比の変更をピストン上死点の高さを変えて行います。上死点とは、上下運動するピストンの最上点のことで、圧縮行程中のピストンがより高い位置まで移動することで、圧縮比は高まります。

この機構を実現するのが、日産が独自に開発した、複合リンク方式です。ピストンを支持し、クランクの回転運動をピストンの上下運動に変えるコンロッドの代わりに、3本のリンクをモーターによって動かし、ピストン上死点の高さを連続的に変更するのです。

VCRの効果とは?

日産は、今秋発売予定のインフィニティのクロスオーバーSUV「QX50」に搭載の排気量2.0Lのターボエンジンに、VCR機構を採用する予定です。

ターボエンジンは、過給している分ノックしやすいため、自然吸気エンジンに比べて、圧縮比を高く設定できません。そのため、過給の少ない(ない)低中速・低中負荷運転領域では、効率が極端に悪くなってしまいます。

VCR機構では、この低中速・低中負荷運転領域は、燃費を良くするため高圧縮比14に、高速・高負荷運転領域は、ノックが発生しないように低圧縮比8とし、その間の領域の圧縮比は8~14の間をシームレスに変化するようにセッティングします。このようにターボエンジンは、VCRの効果がより発揮できるのです。

そのターボエンジンは、すべての運転領域で、最適な圧縮比に設定できるVCRのメリットを生かし、熱効率は40%を達成しています。もともと、圧縮比の低いターボエンジンにとって、熱効率40%は驚異的に高い数値と言えるでしょう。

今後の展開

日産はこのVCR機構を、日産車やインフィ二ティ車の多くの車種へ展開するべく、次世代エンジンのベースと位置づけています。

ターボエンジン以外でも、e-Powerシステム用の高効率発電用エンジンとしての活用や、次世代技術である超希薄燃焼や超ロングストロークエンジンへの適用が考えられます。

自動車メーカーが考える『エンジンの熱効率向上』において、もっとも注目されているのが、この可変圧縮比エンジンと、HCCI(予混合圧縮着火)エンジンです。

可変圧縮比エンジンは日産によって、HCCIエンジンはマツダによって、いよいよ実用化のレベルまで到達してきました。EV時代到来といわれて久しい今日、エンジン好きなファンのためにも、内燃機関も負けずに進化し続けてほしいものです。

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