イバラの道を選んだマツダ vol.2 独自路線を行くマツダ「スカイアクティブ」 人間のミスを軽減するテクノロジー
更新日:2024.09.09
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自動車専門誌として人気が高かった「NAVI」という専門誌では20年間、クルマの動的な安全性をテスト&評価してきた。そのNAVIが休刊となった今、私が主宰する動画サイト(startyourengines.net)でダイナミックセイフティテスト(DST)を続けている。
text:清水和夫 photo:長谷川徹 [aheadアーカイブス vol.154 2015年9月号]
text:清水和夫 photo:長谷川徹 [aheadアーカイブス vol.154 2015年9月号]
vol.2 独自路線を行くマツダ「スカイアクティブ」 人間のミスを軽減するテクノロジー
そのテストでも明らかになったのは、マツダが主張するスカイアクティブ・テクノロジーの隠されたマツダ流良いクルマ作りの哲学の存在であった。
当初はスカイGとスカイDと呼ばれる先進的なガソリン&ディーゼルエンジンがプロトタイプに搭載されて話題となった。もちろんマツダの横串を貫くデザインも話題となった。実際に見て、乗るとすぐにその良さが理解できた。
そしていよいよフルにスカイアクティブ・テクノロジーで開発されたSUVのCX–5が登場した。デザイン、エンジン、サスペンションとその走りは明らかに従来のマツダ車とは異なり、むしろ欧州車と肩を並べるか、それ以上に走りが洗練されていた。
クルマの評価に異常な執念を抱く私は「このCX–5が走りやすい理由がどこにあるのだろうか」と観察していた。チーフエンジニアはシートや視界にこだわったと熱く語る。たしかにドライビングポジションが自然だ。シートを良くしても、ポジションに違和感があるクルマも少なくない。
ふと足元を見ると、なんとアクセルがオルガン式ではないか。CセグメントのFF車でオルガン式は感動した。踵を支点にして走れるし、長距離では脚が疲れないのだ。さらにそのポジションが「正しい位置」に配置されていた。通常FF車はデフ(左右のタイヤの位置)がキャビン側に近く、そのためにホイールハウスがキャビン内に侵入しやすい。
とくに右側にあるアクセルが影響を受けるので、ペダル全体が左にオフセットしやすいのだ。右の脚で身体の中心よりも左にあるブレーキを踏むという人間の感覚に合わないレイアウトのクルマがなんと多いことか。日本車は右ハンドルなので、軽自動車から中型車まで多くのペダルは「正しい位置」になかったのだ。
スカイアクティブの哲学で開発されたエンジンはガソリンでもディーゼルでも、その搭載位置を前方に移動させることで、タイヤをできるだけ前方に配置することに成功している。そのためにラジエーターやウオーターポンプなどの補器類にも様々な工夫を施して全体を見直している。
ペダルを吊り下げ式からオルガン式に変えるだけでも大変な作業だが、マツダは快適なドライビングポジションを追及して、徹底的にドライバーのドライビング環境を見直したのである。
私はこう考えるようになった。「スカイアクティブ」の表向きはテクノロジーだが、その背景には〝スカイアクティブ・フィロソフィー〟ともいうべくクルマ作りの哲学が存在する。その考え方の基本は人間中心。人間はミスをすることを前提に、人間がミスをしないような工夫を施しているのである。
オルガン式ペダルを採用したのも、その思想が根底にあったからだろう。オルガン式の良さは踵を床につけて踏み込めることだ。軽いブレーキであれば、踵を動かさずに足先の向きを変えるだけでよい。
急ブレーキを踏むときは、踵を上げてしっかりと踏み込む。アクセルを踏むときの足の動きとブレーキを踏むときの動きは全然違う。つまり直感的に「その違い」が分かるので、踏み間違えしにくい。
オルガン式に代表される人間中心のデザインは「HMI」(ヒューマン・マシン・インタラクション)という言葉で説明できる。それゆえにデミオまでその哲学は貫かれ、しかもHUD(ヘッドアップ・ディスプレイ)もスカイアクティブの重要なアイテムとなっている。マツダは本気で世界と戦うために、従来の常識を覆そうとしている。
当初はスカイGとスカイDと呼ばれる先進的なガソリン&ディーゼルエンジンがプロトタイプに搭載されて話題となった。もちろんマツダの横串を貫くデザインも話題となった。実際に見て、乗るとすぐにその良さが理解できた。
そしていよいよフルにスカイアクティブ・テクノロジーで開発されたSUVのCX–5が登場した。デザイン、エンジン、サスペンションとその走りは明らかに従来のマツダ車とは異なり、むしろ欧州車と肩を並べるか、それ以上に走りが洗練されていた。
クルマの評価に異常な執念を抱く私は「このCX–5が走りやすい理由がどこにあるのだろうか」と観察していた。チーフエンジニアはシートや視界にこだわったと熱く語る。たしかにドライビングポジションが自然だ。シートを良くしても、ポジションに違和感があるクルマも少なくない。
ふと足元を見ると、なんとアクセルがオルガン式ではないか。CセグメントのFF車でオルガン式は感動した。踵を支点にして走れるし、長距離では脚が疲れないのだ。さらにそのポジションが「正しい位置」に配置されていた。通常FF車はデフ(左右のタイヤの位置)がキャビン側に近く、そのためにホイールハウスがキャビン内に侵入しやすい。
とくに右側にあるアクセルが影響を受けるので、ペダル全体が左にオフセットしやすいのだ。右の脚で身体の中心よりも左にあるブレーキを踏むという人間の感覚に合わないレイアウトのクルマがなんと多いことか。日本車は右ハンドルなので、軽自動車から中型車まで多くのペダルは「正しい位置」になかったのだ。
スカイアクティブの哲学で開発されたエンジンはガソリンでもディーゼルでも、その搭載位置を前方に移動させることで、タイヤをできるだけ前方に配置することに成功している。そのためにラジエーターやウオーターポンプなどの補器類にも様々な工夫を施して全体を見直している。
ペダルを吊り下げ式からオルガン式に変えるだけでも大変な作業だが、マツダは快適なドライビングポジションを追及して、徹底的にドライバーのドライビング環境を見直したのである。
私はこう考えるようになった。「スカイアクティブ」の表向きはテクノロジーだが、その背景には〝スカイアクティブ・フィロソフィー〟ともいうべくクルマ作りの哲学が存在する。その考え方の基本は人間中心。人間はミスをすることを前提に、人間がミスをしないような工夫を施しているのである。
オルガン式ペダルを採用したのも、その思想が根底にあったからだろう。オルガン式の良さは踵を床につけて踏み込めることだ。軽いブレーキであれば、踵を動かさずに足先の向きを変えるだけでよい。
急ブレーキを踏むときは、踵を上げてしっかりと踏み込む。アクセルを踏むときの足の動きとブレーキを踏むときの動きは全然違う。つまり直感的に「その違い」が分かるので、踏み間違えしにくい。
オルガン式に代表される人間中心のデザインは「HMI」(ヒューマン・マシン・インタラクション)という言葉で説明できる。それゆえにデミオまでその哲学は貫かれ、しかもHUD(ヘッドアップ・ディスプレイ)もスカイアクティブの重要なアイテムとなっている。マツダは本気で世界と戦うために、従来の常識を覆そうとしている。
▶︎マツダは3つのステップで理想のドライビングポジションを実現。まずは「理想のドライビングポジションを規定する」こと。次に「理想のドライビングポジションに合わせて操作ユニットを配置する」こと。最後が「人間の特性に操作ユニットの特性を合わせる」こと。
無駄な力の入らないリラックスした状態で、足を自然に伸ばした先にアクセルとブレーキがある。この状態をつくるためにCX-5以降、マツダ車は前輪のホイールハウスを少し前に移動している。また、かかとを床につけることで足の姿勢を楽に保つため、床に視点を置いたオルガン式アクセルペダルを採用するなど徹底的にこだわっている。
また新型デミオでも、ペダルの間隔を広げ、できる限り左右対称とすることで、下半身をひねらずペダルを踏むことができるようになった。これにより、コンパクトカーである新型デミオでもより大きなクラスのクルマ同様、疲れにくく、踏み間違いをしにくいドライビングポジションを実現した。詳しくはwww2.mazda.co.jp/beadriver/drivingposition/
無駄な力の入らないリラックスした状態で、足を自然に伸ばした先にアクセルとブレーキがある。この状態をつくるためにCX-5以降、マツダ車は前輪のホイールハウスを少し前に移動している。また、かかとを床につけることで足の姿勢を楽に保つため、床に視点を置いたオルガン式アクセルペダルを採用するなど徹底的にこだわっている。
また新型デミオでも、ペダルの間隔を広げ、できる限り左右対称とすることで、下半身をひねらずペダルを踏むことができるようになった。これにより、コンパクトカーである新型デミオでもより大きなクラスのクルマ同様、疲れにくく、踏み間違いをしにくいドライビングポジションを実現した。詳しくはwww2.mazda.co.jp/beadriver/drivingposition/