日本人女性がデザインしたフランス車 Renault CAPTUR

アヘッド ルノー キャプチャー

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昨年開催された東京モーターショーの数あるブースの中でも、ひときわ目を引いたのはルノーのブースだった。「華やか」——そう形容するのがふさわしいだろうか。特にクルマの種類が多いわけでもない、展示方法にあっと驚くような趣向があるわけでもない。なのに美しい色と有機的な形を持ったクルマたちに囲まれているだけで、感性が刺激されて、自然とテンションがあがる。そんな感じだ。

text:ahead編集長・若林葉子 [aheadアーカイブス vol.134 2014年1月号]
Chapter
日本人女性がデザインしたフランス車 Renault CAPTUR

日本人女性がデザインしたフランス車 Renault CAPTUR

(Renault CAPTUR www.renault.jp/index.html 2月下旬発売予定)


この東京モーターショー会場で日本初披露となったのが、完全なるブランニューのクロスオーバーモデル、「CAPTUR(キャプチャー)」である。

ルノーの新デザイン戦略「サイクル・オブ・ライフ」の2番目に当たるクルマ。因みに「サイクル・オブ・ライフ」とは、人生のステージを6つに分け、6枚の花びらに喩えて、それぞれにテーマを持たせる、というもの。

新デザイン戦略の1番目は昨年発売された新型「ルーテシア」で、テーマは〝恋に落ちる〟だった。続く「キャプチャー」のテーマは、恋に落ちた2人が〝冒険の旅に出る〟。

どんなクルマだろう、と興味津々で「キャプチャー」を見ていると、目の前にすっと小柄な、かわいらしい女性が現れた。渡邉加奈さん。「キャプチャー」のボディカラーとインテリアを担当されたデザイナーである。

渡邉さんは、イギリスのロンドンにあるロイヤル・カレッジ・オブ・アートを卒業した後、ドイツに移り、BMW・ミニのカラーチームで5年の実績を積み、2007年ルノーに入社して、現在6年目。

イギリスでデザインを学んだ後、ドイツとフランスという2つの国の自動車メーカーでクルマのデザインに関わってこられたわけだが、「同じデザインでも、ドイツとフランスでは違うところもあるのではありませんか?」と聞いてみる。

  「そうですね。皆さんもそう思われているかも知れませんが、ドイツは機能性を重視しますし、完成度もとても高いし、真面目です。それに対してフランスはもっと感情的で自由です。ラテンだけあって、華やかで柔らかいというか…。デザインの過程であまり決まりがないというのはイギリスと似ていて、私には表現しやすいようです」

ルノーのデザインの現場では、「まずは自由に発想してみなさい」と言われるのだそうだ。

もちろんミニの場合は前提としてクラシック・ミニがあり、「ルーテシア」の場合にも先代のクルマがあり、それぞれのヒストリーの上に立って発想することが求められる。
一方、完全な新型車である「キャプチャー」の場合、最初に決まっているのは、新デザイン戦略「サイクル・オブ・ライフ」で定められているキャプチャーのテーマである〝冒険〟、その花びらに与えられた〝オレンジ色〟など、いくつかのキーワードだけ。自由と言われれば聞こえはいいが、困惑しないのだろうか。

「最初はクルマという定義から外れてもいいんですよ。キャプチャーの素材感に関して言うと、テーマから連想できるワードから始めました。〝遊べる〟とか〝元気がある〟とか、〝スポーティ〟とか。あとはそれらをコラージュして世界観を創り出していくんです。

明るいバージョンのインテリアをつくるときには、フェミニンなスポーツウェアなんかをよく観察していましたし、黒のインテリアをつくるときにはもっとアウトドア寄りのマスキリン(男性的)なスポーツをイメージしました」

こうやって文字にすると、どうしても固定的になってしまうけれど、実際にはデザインの仕事というのはもっとフレキシブルで直感的で複雑な過程を経るものなのだろう。

しかしとにかく渡邉さんの話を聞いて何より興味深いのは、フランス人は「フレキシブルで、いいと思ったらルールは関係ない」ということ。

例えば色を2色しか選べないときに、「青」と「赤」のようにバランスよく用意して、ユーザーの要求に応えなければと思うのが日本人だ。でも、フランス人は青が2つあっても「この青と、あの青は全然違うよね」「じゃぁ赤はやめて、青2つでいこう。かっこいい」となる。

ほとんど信じられないような話だが、そんな風に自由になれたらと羨ましくも思う。自由にはやはりどこか勇気や気概がいるものなのだ。
話を聞いた後、改めて「キャプチャー」を見てみる。屋根とボディで色が異なるツートンのボディカラーや、オプションで色を選べて、なおかつ外せて洗濯機で洗えるシートクロスなど、そんな「自由さ」は随所に表現されている気がする。

ハンモック状に糸を張った背もたれのポケットは、コンセプトカーのアイデアがそのまま残った。

「これが残ったのは奇跡のようです。すごく頑張ったんですよ!」(渡邉さん)

キャプチャーは自由で革新的で柔らか。クルマはお国柄や人柄や企業の有り様まで、いろんなものを映し出す。だからやっぱり面白い。
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text:若林葉子/Yoko Wakabayashi
1971年大阪生まれ。Car&Motorcycle誌編集長。
OL、フリーランスライター・エディターを経て、2005年よりahead編集部に在籍。2017年1月より現職。2009年からモンゴルラリーに参戦、ナビとして4度、ドライバーとして2度出場し全て完走。2015年のダカールラリーではHINO TEAM SUGAWARA1号車のナビゲーターも務めた。
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