ミツビシがパイクスピークで得たものは何か

アヘッド 三菱 パイクスピーク

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三菱自動車は6月23日〜29日にアメリカ・コロラド州で開催された「パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム」に出場した。標高2862mの地点からスタートし、約20㎞先にある標高4301mのゴールを目指す。

text:世良耕太 [aheadアーカイブス vol.142 2014年9月号]
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ミツビシがパイクスピークで得たものは何か

そんな過酷な環境に持ち込んだのは「MiEVエボリューションⅢ」と名付けた2台の競技車両で、電気自動車改造クラスにエントリー。車名の「Ⅲ」が示すように、参戦車両としては3代目、すなわち3年目の挑戦である。

二輪車クラスで過去6度の優勝を誇るグレッグ・トレーシー選手が9分08秒188を記録し、クラス優勝(総合2位)を果たした。監督兼務でステアリングを握った増岡 浩選手は9分12秒204でクラス2位(総合3位)となり、三菱自動車は念願の初優勝を飾ったばかりか、1〜2位を独占した。
「10分を切るのがひとつの壁だったのに、8分台目前のタイムで優勝することができました。やり遂げた手応えは感じています」

そう話すのは初期からプロジェクトに携わる百瀬信夫さん(電動車両事業本部 副本部長)だ。

競技に出るからには勝つ。非常にシンプルな目標だが、三菱自動車のスタンスは勝利至上ではない。

「世界ラリー選手権に参戦していた頃からそうですが、三菱自動車は、量産車に盛り込む技術を鍛える場としてモータースポーツを捉えています。パイクスピークへの挑戦も例外ではありません」

パイクスピーク専用に部品を開発することも可能だったが、それでは量産技術に結びつかない。だから三菱自動車はあえて、量産品を使うことにした。ベースとなるのは電気自動車のi-MiEVだ。

「環境を考えることがものすごく大事になった世の中で、新たなモータースポーツを模索したいという考えがありました。同時に、生まれたばかりの電気自動車を鍛えたいという思いもありました」

モータースポーツの未来と電気自動車の未来。このふたつをともに満足させられる競技が、パイクスピークだったというわけだ。
1年目の挑戦はあえてフルノーマルのリチウムイオン電池とモーターで臨んだ。モーターは量産仕様で設定している安全マージンを削り、47‌kWから80‌kWに出力を高めて使用したが、基本的には「量産車が備えている限界性能を見る」ことを目的とした。

コースの情報を収集するのも目的だった。「ラリーも同じですが、勝つためにはまず現地の情報を知ることが重要」だからだ。

「1年目にデータ収集をしたおかげで、クルマを速くするためのシミュレーションができるようになり、計算結果を2年目のMiEVエボリューションⅡに入れました」

本気モードに切り換えたわけだが、やはり専用品を開発することはせず、量産ベースにこだわった。

「レース専用は絶対にやりません。年目は次世代に向けて開発中の電池とモーターをベースに、高出力化して投入しました」

お家芸である車両運動統合システムS-AWCを投入したのも2年目の特徴だ。リヤのモーターを左右独立で制御して旋回性を高めた。3年目の「Ⅲ」ではモーターの出力をさらに高めると同時に、S–AWCの制御を進化させている。

パイクスピークでは100m走ると7m高い位置に達するような急な勾配を20㎞走ることになるため、電池にもモーターにも過酷で、それぞれ熱を持つ。その熱のマネージメントが鍛えどころであり、それこそが量産に結びつくキー技術だ。大きな電池とモーターを積んで「それ行け!」とやれば済むほど単純ではない。誰もが簡単につくれるわけではないのだ。

MiEVエボリューションⅢはセルと呼ぶリチウムイオン電池の最小単位を200個以上集めてひとつのパックに収めているが、そのセルのひとつひとつを緻密に管理してやらないと、性能は発揮できないし、信頼性も確保できない。

「電池はまさに〝箱入り娘〟です」と百瀬さんは言う。「暑いところは苦手、寒いのもイヤ。丁寧にケアしてあげないと、すぐにすねてしまう。鉛バッテリーは一度上がっても復帰しますが、リチウムイオン電池は一度上げてしまったら終わり。だから、ひとつひとつのセルの温度や電圧を厳密にコンピューターで管理しています」

そこが自動車メーカーのノウハウである。パイクスピークを通じて得た技術は、いずれ量産車にフィードバックされることだろう。「パイクスピークを始めてから社員が元気になったし、エンジニアがたくましくなった」のもまた、モータースポーツの持つ力である。

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三菱自動車は、ラリーチームへの技術支援を通じ「アウトランダーPHEV」での「アジアクロスカントリーラリー」にも挑戦している。先月開催された2014年大会では、総走行距離約1,986㎞の過酷なコースを走り切り、総合14位、T1Eクラス(電気自動車クラス)で見事優勝。前年に続き2年連続で完走を果たし、「アウトランダーPHEV」の信頼性・耐久性および走破性の高さを発揮するとともに、過酷な道路状況に十分耐えうることも実証した。ちなみに競技車両には、車高アップや制御システムの競技向けセッティングなどを施したものの、“プラグインハイブリッドEVシステム”をはじめ、ハード面では市販車とほぼ同様の仕様で参戦したという。
三菱自動車の各販売店では、このベースとなった「アウトランダーPHEV」を無料で貸し出す「Let’s PHEV!1泊2日無料レンタルキャンペーン」を実施中だ。加速感や走行安定性、プラグインハイブリッドEVならではの経済性など、新しい走りや使い方を普段の暮らしやレジャーなどで思う存分体感できる。普通運転免証を持ち1年以上運転経験があること、駐車スペースを試乗期間中確保できることなどの条件を満たせば、販売店で申し込みが可能。

詳しくはホームページ、または電話で問い合わせを。

●三菱自動車お客様相談センター
0120(324)860 受付時間:9:00〜17:00(土・日は12:00〜13:00休止)
www.mitsubishi-motors.co.jp

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text:世良耕太/Kota Sera
F1ジャーナリスト/ライター&エディター。出版社勤務後、独立。F1やWEC(世界耐久選手権)を中心としたモータースポーツ、および量産車の技術面を中心に取材・編集・執筆活動を行う。近編著に『F1機械工学大全』『モータースポーツのテクノロジー2016-2017』(ともに三栄書房)、『図解自動車エンジンの技術』(ナツメ社)など。http://serakota.blog.so-net.ne.jp/
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