小林ゆきの一寸法話 vol.4 一時停止とは多段階停止である
更新日:2024.09.09
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一時停止標識の停止線の手前で、きちんと一時停止している人はどれだけいるだろうか。
text:小林ゆき [aheadアーカイブス vol.152 2015年7月号]
text:小林ゆき [aheadアーカイブス vol.152 2015年7月号]
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- vol.4 一時停止とは多段階停止である
vol.4 一時停止とは多段階停止である
オートバイに乗っていて、車両はほぼ停止状態だったのに、交差点の先に隠れていた警察官に「足が着いていなかったから一時停止と見なさない」と言われ、反則切符を切られたという経験のあるライダーさんもいると聞く。
とはいえ、日本の道路では停止線の手前できちんと停止しても、その先の交差する道路が見えないことが多い。なぜ、確認しやすい位置よりも手前で停止しなければならないのか、疑問に思っている人も多いことだろう。
日本の道路の一時停止の仕組みは、端的に言えば「多段階停止」をすべき道路構造のシステムになっている。
停止線の位置は、運転者から見て交差する道路を確認しやすい位置ではなく、右左折で対向してくるクルマやトラックのオーバーハングや内輪差の影響が出ない位置が優先されている。右左折してくる対向車をいったん優先させるために、手前に引かれた一時停止線で第一回目の停止をしなければならない。
次に、歩道と車道が分かれている歩車道分離の道路の場合、交差する道路の歩行者や自転車の往来を目視できる位置まで進んで第二回目の停止をする。ここには停止線はないから、運転者の判断にゆだねられる。
さらには、交差する車道の往来を目視できる位置までそろそろと進んで第三回目の停止……という具合に「多段階停止」を強いられる。
交通の往来の少ない地方では、多段階停止をすることが非常に面倒に感じられる。もし見通しの悪い交差点を一時停止せずに進んだとしても、ほかのクルマやバイク、自転車、歩行者にぶつかる確率はすこぶる低い。
このような体験を重ねたドライバーは、無意識下で正常化バイアス(危険が危惧される状況なのに、それを無視したり軽視してしまう心理状態のこと。)が働き、刷り込まれ、必要な一時停止も怠るようになったりする。
かくして、一時停止は安全確認のためではなく、法律で決まっているからしなければならないけど、取り締まりさえなければしなくてもいいもの……というように形骸化する。
そして万が一は、ときに発生する。
海外では……という常套句はあまり使いたくはないが、学ぶべき事例は数多くある。
イギリスでは、STOP(止まれ)もあるがGIVE WAY(前方優先)の標識も多い。多くは鈍角に合流できるような道路構造になっていて後方確認もしやすい。確実に合流の安全を運転者が確認しなければならない仕組みだ。
アメリカでは、路地が優先道路に対して十の字で交差するのではなく、クランク状になっている場所がある。日本の左側通行に置き換えると、路地から素直に直進はできず、いったん優先道路に左折してからすぐ右折するイメージだ。この場合、物理的に道路が多段階確認させる仕組みになっている。
オーストラリアでは、アメリカに似ているが、道路中央部に上下線の右折レーンと左折レーンの併用ができる車線が設けてあったりする。
こちらも、多段階で右左折を確認しやすいうえ、たとえば片側一車線の道路の場合、もし右折レーンを設けるとしたら4車線化しないといけないが、中央部を上下線右左折併用レーンにすれば3車線分のスペースで済む。
急に日本の道路構造を変えることは困難だが、「一時停止」とは、実は「多段階停止」をするべき日本独特のシステムであることを周知すれば、少しは事故軽減につなげられるのではないだろうか。
とはいえ、日本の道路では停止線の手前できちんと停止しても、その先の交差する道路が見えないことが多い。なぜ、確認しやすい位置よりも手前で停止しなければならないのか、疑問に思っている人も多いことだろう。
日本の道路の一時停止の仕組みは、端的に言えば「多段階停止」をすべき道路構造のシステムになっている。
停止線の位置は、運転者から見て交差する道路を確認しやすい位置ではなく、右左折で対向してくるクルマやトラックのオーバーハングや内輪差の影響が出ない位置が優先されている。右左折してくる対向車をいったん優先させるために、手前に引かれた一時停止線で第一回目の停止をしなければならない。
次に、歩道と車道が分かれている歩車道分離の道路の場合、交差する道路の歩行者や自転車の往来を目視できる位置まで進んで第二回目の停止をする。ここには停止線はないから、運転者の判断にゆだねられる。
さらには、交差する車道の往来を目視できる位置までそろそろと進んで第三回目の停止……という具合に「多段階停止」を強いられる。
交通の往来の少ない地方では、多段階停止をすることが非常に面倒に感じられる。もし見通しの悪い交差点を一時停止せずに進んだとしても、ほかのクルマやバイク、自転車、歩行者にぶつかる確率はすこぶる低い。
このような体験を重ねたドライバーは、無意識下で正常化バイアス(危険が危惧される状況なのに、それを無視したり軽視してしまう心理状態のこと。)が働き、刷り込まれ、必要な一時停止も怠るようになったりする。
かくして、一時停止は安全確認のためではなく、法律で決まっているからしなければならないけど、取り締まりさえなければしなくてもいいもの……というように形骸化する。
そして万が一は、ときに発生する。
海外では……という常套句はあまり使いたくはないが、学ぶべき事例は数多くある。
イギリスでは、STOP(止まれ)もあるがGIVE WAY(前方優先)の標識も多い。多くは鈍角に合流できるような道路構造になっていて後方確認もしやすい。確実に合流の安全を運転者が確認しなければならない仕組みだ。
アメリカでは、路地が優先道路に対して十の字で交差するのではなく、クランク状になっている場所がある。日本の左側通行に置き換えると、路地から素直に直進はできず、いったん優先道路に左折してからすぐ右折するイメージだ。この場合、物理的に道路が多段階確認させる仕組みになっている。
オーストラリアでは、アメリカに似ているが、道路中央部に上下線の右折レーンと左折レーンの併用ができる車線が設けてあったりする。
こちらも、多段階で右左折を確認しやすいうえ、たとえば片側一車線の道路の場合、もし右折レーンを設けるとしたら4車線化しないといけないが、中央部を上下線右左折併用レーンにすれば3車線分のスペースで済む。
急に日本の道路構造を変えることは困難だが、「一時停止」とは、実は「多段階停止」をするべき日本独特のシステムであることを周知すれば、少しは事故軽減につなげられるのではないだろうか。
【道路交通法】
第3章
車両及び路面電車の交通方法
第8節 徐行及び一時停止
(指定場所における一時停止)
第43条 車両等は、交通整理が行なわれていない交差点又はその手前の直近において、道路標識等により一時停止すべきことが指定されているときは、道路標識等による停止線の直前(道路標識等による停止線が設けられていない場合にあつては、交差点の直前)で一時停止しなければならない。この場合において、当該車両等は、第36条第2項の規定に該当する場合のほか、交差道路を通行する車両等の進行妨害をしてはならない。
第3章
車両及び路面電車の交通方法
第8節 徐行及び一時停止
(指定場所における一時停止)
第43条 車両等は、交通整理が行なわれていない交差点又はその手前の直近において、道路標識等により一時停止すべきことが指定されているときは、道路標識等による停止線の直前(道路標識等による停止線が設けられていない場合にあつては、交差点の直前)で一時停止しなければならない。この場合において、当該車両等は、第36条第2項の規定に該当する場合のほか、交差道路を通行する車両等の進行妨害をしてはならない。
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text:小林ゆき/Yuki Kobayashi
オートバイ雑誌の編集者を経て1998年に独立。 現在はフリーランスライター、ライディングスクール講師など幅広く活躍するほか、世界最古の公道オートバイレース・マン島TTレースへは 1996年から通い続け、文化人類学の研究テーマにもするなどライフワークとして取り組んでいる。
text:小林ゆき/Yuki Kobayashi
オートバイ雑誌の編集者を経て1998年に独立。 現在はフリーランスライター、ライディングスクール講師など幅広く活躍するほか、世界最古の公道オートバイレース・マン島TTレースへは 1996年から通い続け、文化人類学の研究テーマにもするなどライフワークとして取り組んでいる。