アメリカとイタリアの混血種 〜ジープ・レネゲード

アヘッド ジープ・レネゲード

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レネゲードはフィアットのエンジン横置き前輪駆動用のプラットフォームとパワートレーンを用いてつくったジープ初の小型SUVである。その成り立ちはイタリアとアメリカの合作ジープ第1弾である現行5代目チェロキーによく似ている。

text:今尾直樹 [aheadアーカイブス vol.164 2016年7月号]
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アメリカとイタリアの混血種 〜ジープ・レネゲード

アメリカとイタリアの混血種 〜ジープ・レネゲード

●Jeep  Renegade
車両本体価格:¥2,970,000(LONGITUDE、税込)
排気量:1,368cc
エンジン:直列4気筒 マルチエア 16 バルブ インタークーラー付ターボ
最高出力:103kW(140ps)/5,000rpm
最大トルク:230Nm (23.5kgm)/1,750rpm 


そもそもジープ・ブランドはアメリカ陸軍の要請で75年前に誕生した4×4の小型軍事車両を祖先とする。戦場を駆け巡り、自由をわれらにもたらした輝かしき歴史と伝統がある。

エンジン横置きの、道を選ぶようなFF車をジープとは呼ばない。実際に戦争に行ったおじいちゃん、あるいはTVドラマ「コンバット」で育った父親を持つアメリカ人であれば、そう主張するにちがいない。
ジープを持つクライスラーは1998年にダイムラー・ベンツと合併し、およそ10年間、ドイツ人とともにあった。おそらくドイツ人にとっても、クロスオーバーのジープなんてニヒト(NO)、ニヒト(NO)、ニヒト(NO)であったろう。

祖国を打ち負かした戦士たちに対する冒涜だ、とすら彼らは考えたのではあるまいか。であるので、ダイムラー・クライスラーは「コカ・コーラ」「リーバイス」と並べられる偉大なるアメリカの神話的ブランドを生かしきれなかった。少なくとも、ジープのクロスオーバーを製品化する決断が遅れた。
一方、イタリア人にしてみれば、クロスオーバーのジープのどこがいけないんだ? と思った。それゆえ彼らは2008年にリーマンショックでクライスラーが倒産した後、アメリカ政府のご祝儀付きでこのペンタスターを獲得するや、瞬く間に商品化した。それがチェロキーであり、レネゲードである。

イタリア人にとってフェラーリの4ドアは神の摂理に背く。けれど、ジープにはなんの思い入れもない(たぶん)。たとえば、ダブル・エスプレッソは許しがたい。エスプレッソはひとくちで飲み終わるあの小さなカップの量でなければいけない。

ドッピョ(double)・エスプレッソ? エスプレッソが台無しだ。もっと飲みたければ、お代わりすべきである。夜分カプチーノをオーダーする外国人もイケてない。時差があるんだね。カプチーノは朝飲むもんだぜ。

もっとも、近頃、イタリアにやってきた観光客はカプチーノをディナーの後で注文する、というようなことが常識化してきた。「文化」とはとかく人の行動を制限する。グローバル化がその制限をぶち壊す。

それにはもちろん、よい面と悪い面があって一概にはいえないけれど、でも、これだけは確かである。ちょっと背の高いアルファ・ジュリエッタのようなイタリア製ジープ・レネゲードに乗れるのは、いまなればこそである。これこそ21世紀の所産なのだ。

●FIAT 500X
車両本体価格:¥2,862,000(Pop Star、税込 )
排気量:1,368cc
エンジン:直列4気筒 マルチエア
16 バルブ インタークーラー付ターボ
最高出力:103kW(140ps)/5,000rpm
最大トルク:230Nm (23.5kgm)/1,750rpm

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text:今尾直樹/Naoki Imao
1960年生まれ。雑誌『NAVI』『ENGINE』を経て、現在はフリーランスのエディター、自動車ジャーナリストとして活動。現在の愛車は60万円で購入した2002年式ルーテシアR.S.。
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