忘れられないこの1台 vol.59 トヨタ スターレット(KP61)
更新日:2024.09.09
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時は平成元年。静岡県長泉町の旧街道沿い。プレハブ事務所の古びた中古車屋で「ヤツ」に出会う。道路に面した展示場所には本命のAE86レビン&トレノが3台並んでた。当時走り屋御用達といえば、トヨタ「ハチロク」。免許取りたての私にとっても憧れのクルマ。でも私が目をつけたのは、ハチロクのせいで店の隅へと追いやられた「ヤツ」。昭和59年式トヨタ・スターレットSi。通勤途中で見つけた白いKP61だ。
text:ピエール北川 [aheadアーカイブス vol.137 2014年4月号]
text:ピエール北川 [aheadアーカイブス vol.137 2014年4月号]
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- vol.59 トヨタ スターレット(KP61)
vol.59 トヨタ スターレット(KP61)
▶︎1973年から'84年まで発売されたトヨタ・スターレット(KP61)は、コンパクトなハッチバックボディに1,300ccのFRで、モータースポーツのシーンにも沢山登場したクルマだ。発売当初からTVCMに出演したのは、当時トヨタ・チーム・ヨーロッパ(現TMG)社長のオベ・アンダーソン。見事なドライビングでお茶の間をあっといわせた映像だった。
意を決して店に入った日、中古車屋のオヤジがニヤリと笑顔でこう言った。「兄ちゃん、こんな上玉KPは、もう二度と出ないよ!」と。
今思えば何とも〝ベタな〟台詞だが18歳のウブな少年には、いとも簡単にハンコを押させる魔法のコトバだった……てな訳で後先考えず高い金利でオートローンを組んだのは、懐かしい記憶。ハチロクは高くて手が届かなかったけど、KP61は身分相応のお買得車。めでたく初めの愛車となった。
僕のクルマ選びの条件は、「軽量」「コンパクト」「5速MT」そして何が何でも「FR」。
なぜFRかといえば、単にドリフトがカッコイイからっ! 当時ラリーに憧れた自分には、豪快にアクセル踏んだままカウンターステアをあて、コーナーを横向きドリフトで駆け抜けて行くヨーロッパのドライバーは理屈抜きにカッコ良く見えた。だから自分もその技をマスターするために「FR」が必須条件だったというわけ。
KP61は、この条件をすべて満たしていた。4Kエンジンは非力だったが、若葉マークの下手クソ君には練習にちょうど良いポテンシャル。パワースライドは無理でも、ひとたび雨が降ればリアをスライドさせてカウンターステア! 車重も軽いので万が一でもダメージが少ないのが安心。
そして毎夜埠頭に繰り出してはサイドブレーキを引きまくって、スピンターンの練習に明け暮れたし、街の一時停止標識や赤信号は、絶好のヒールアンドトゥーの練習チャンスとばかり、電光石火の早業で手足を連動させ、ピタッと停止線に停めたときには快感だったな!
ホイールベースが短く、山道のコーナリングでは何度も手に汗握ったが、小さなボディはクイックな動きで「FUN to DRIVE」を常に提供してくれた。
最近のクルマと違って、KP61はクルマがテクノロジーを主張し過ぎず、上手く走るためには運転手が「腕」(運転技術)で何とかするもんだ、ということを教えてくれた本当に素晴らしい相棒だったと思う。実は僕のモータースポーツデビューを飾ったのもこのクルマ。ジムカーナだったが、結果は惨敗!色々な意味で忘れられない1台なのだった。
意を決して店に入った日、中古車屋のオヤジがニヤリと笑顔でこう言った。「兄ちゃん、こんな上玉KPは、もう二度と出ないよ!」と。
今思えば何とも〝ベタな〟台詞だが18歳のウブな少年には、いとも簡単にハンコを押させる魔法のコトバだった……てな訳で後先考えず高い金利でオートローンを組んだのは、懐かしい記憶。ハチロクは高くて手が届かなかったけど、KP61は身分相応のお買得車。めでたく初めの愛車となった。
僕のクルマ選びの条件は、「軽量」「コンパクト」「5速MT」そして何が何でも「FR」。
なぜFRかといえば、単にドリフトがカッコイイからっ! 当時ラリーに憧れた自分には、豪快にアクセル踏んだままカウンターステアをあて、コーナーを横向きドリフトで駆け抜けて行くヨーロッパのドライバーは理屈抜きにカッコ良く見えた。だから自分もその技をマスターするために「FR」が必須条件だったというわけ。
KP61は、この条件をすべて満たしていた。4Kエンジンは非力だったが、若葉マークの下手クソ君には練習にちょうど良いポテンシャル。パワースライドは無理でも、ひとたび雨が降ればリアをスライドさせてカウンターステア! 車重も軽いので万が一でもダメージが少ないのが安心。
そして毎夜埠頭に繰り出してはサイドブレーキを引きまくって、スピンターンの練習に明け暮れたし、街の一時停止標識や赤信号は、絶好のヒールアンドトゥーの練習チャンスとばかり、電光石火の早業で手足を連動させ、ピタッと停止線に停めたときには快感だったな!
ホイールベースが短く、山道のコーナリングでは何度も手に汗握ったが、小さなボディはクイックな動きで「FUN to DRIVE」を常に提供してくれた。
最近のクルマと違って、KP61はクルマがテクノロジーを主張し過ぎず、上手く走るためには運転手が「腕」(運転技術)で何とかするもんだ、ということを教えてくれた本当に素晴らしい相棒だったと思う。実は僕のモータースポーツデビューを飾ったのもこのクルマ。ジムカーナだったが、結果は惨敗!色々な意味で忘れられない1台なのだった。
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text:ピエール北川/Pierre Kitagawa
サラリーマンからひょんな事でモータースポーツ実況の世界へ。現在 SUPER GT、スーパーフォーミュラの、国内二大シリーズでサーキットの場内実況を務め、また鈴鹿サーキットで毎年開催されるF1日本GPでも実況を担当する。2輪ファンには鈴鹿8耐やMotoGP日本グランプリの声としてもおなじみだ。
text:ピエール北川/Pierre Kitagawa
サラリーマンからひょんな事でモータースポーツ実況の世界へ。現在 SUPER GT、スーパーフォーミュラの、国内二大シリーズでサーキットの場内実況を務め、また鈴鹿サーキットで毎年開催されるF1日本GPでも実況を担当する。2輪ファンには鈴鹿8耐やMotoGP日本グランプリの声としてもおなじみだ。