観客も参加者もエンターティナー Wheels and Waves
更新日:2024.09.09
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僕はここ数年、6月にフランス・ビアリッツで開催されるバイクイベント「Wheels and Waves/ホイールス・アンド・ウェーブス」を取材している。今年で開催7回目、プレ開催や本開催までの準備期間を入れると約10年の歴史を持つイベントだ。
text/photo:河野正士 [aheadアーカイブス vol.189 2018年8月号]
text/photo:河野正士 [aheadアーカイブス vol.189 2018年8月号]
観客も参加者もエンターティナー
このイベントを一言で説明すると、バイクとサーフィンを中心にライフスタイルカルチャーがミックスしたイベント、となる。しかしこんな言葉はイベントの本質を捉えていないし、なによりこの説明を聞いてもワクワクしない。
ではなぜ僕は、わざわざ南フランスまで毎年出かけているのか。よくよく考えると、そこに集まる人々に魅せられていることに気がついた。
ではなぜ僕は、わざわざ南フランスまで毎年出かけているのか。よくよく考えると、そこに集まる人々に魅せられていることに気がついた。
Art Ride
もちろんタイムスケジュールにはさまざまなコンテンツが並んでいる。イベント期間中、ビーチではサーフコンテストが行われ、「パンクスピーク」と呼ばれる農道を封鎖した公道ドラッグレースも開催される。このレースは複数のクラスが用意され、カスタムバイクからビンテージバイクまで、個性豊かなバイクが速さを競う。
とはいえ勝つためだけにマシンを造り込んで来るヤツは居ない。みな純粋に〝競争〟を楽しんでいる。競馬場のショートトラックで開催されるダートトラックレース「エル・ロロ」も同じだ。みなマシンを仕上げ、トレーニングもしているが、パドックやコース上は、選手権レースのそれらとはまったく違う雰囲気に満ちあふれている。
そしてカスタムバイクやビンテージバイクをアート作品とともに展示する「アートライド」も開催される。しかしここでは、どのバイクやアートが優れているか、といった視点で作品が展示されているわけではない。誰かの意志によって、それをもとに、人が造り上げたバイクはアートと同等である。そしてアートとは、優劣を競うものではない。
そんな、新車を紹介するモーターサイクルショーとも美しさを競うカスタムバイクショーとも異なる解釈と視点で、このコンテンツがプログラムされている、と僕は解釈している。
とはいえ勝つためだけにマシンを造り込んで来るヤツは居ない。みな純粋に〝競争〟を楽しんでいる。競馬場のショートトラックで開催されるダートトラックレース「エル・ロロ」も同じだ。みなマシンを仕上げ、トレーニングもしているが、パドックやコース上は、選手権レースのそれらとはまったく違う雰囲気に満ちあふれている。
そしてカスタムバイクやビンテージバイクをアート作品とともに展示する「アートライド」も開催される。しかしここでは、どのバイクやアートが優れているか、といった視点で作品が展示されているわけではない。誰かの意志によって、それをもとに、人が造り上げたバイクはアートと同等である。そしてアートとは、優劣を競うものではない。
そんな、新車を紹介するモーターサイクルショーとも美しさを競うカスタムバイクショーとも異なる解釈と視点で、このコンテンツがプログラムされている、と僕は解釈している。
El Rollo
というのも、主催者自身はイベントそのものや各コンテンツの趣旨を、あえて事細かに説明したりしない。そして各イベントはタイムスケジュールこそ公表されているが、各会場で観客を誘導したり煽ったりするアナウンスは一切行われない。日本のイベントでは考えられないほどの、放置プレーだ。
しかしそれに文句を言う人たちはいない。
そう、ココに来る人たちは、誰かに楽しませてもらおうなんて気は、さらさら無いのだ。だからいま目の前を走っているライダーは誰で、どんなバイクに乗っていてなんてことは、気になれば近くにいるヤツに聞けば良いし、なんなら本人に直接聞いちゃったりしている。
ライダーやビルダーたちはじつに気さくで、自分たちが造ったものや、やっていることを理解してくれようとしている人には、とことん付き合ってくれる。また路面コンディションや天候の回復を待つためにタイムスケジュールが押したとしても、そんなアナウンスはないし、知りたければ、コレどうなってんの? と互いに聞きあい、そこから会話が生まれたり、面白い話が聞けたりするのだ。
そしてそうやって楽しんでいる彼らを見て、僕もその真似をしていくうちに、どんどんこのイベントが好きになり、ここに集まる人たちが好きになっていった。
しかしそれに文句を言う人たちはいない。
そう、ココに来る人たちは、誰かに楽しませてもらおうなんて気は、さらさら無いのだ。だからいま目の前を走っているライダーは誰で、どんなバイクに乗っていてなんてことは、気になれば近くにいるヤツに聞けば良いし、なんなら本人に直接聞いちゃったりしている。
ライダーやビルダーたちはじつに気さくで、自分たちが造ったものや、やっていることを理解してくれようとしている人には、とことん付き合ってくれる。また路面コンディションや天候の回復を待つためにタイムスケジュールが押したとしても、そんなアナウンスはないし、知りたければ、コレどうなってんの? と互いに聞きあい、そこから会話が生まれたり、面白い話が聞けたりするのだ。
そしてそうやって楽しんでいる彼らを見て、僕もその真似をしていくうちに、どんどんこのイベントが好きになり、ここに集まる人たちが好きになっていった。
Swank Rally
なにより驚くのは、レースやイベントに出場している参加者はもちろんだが、観客も含めエンターティナーが多いことだ。エンターテナーというか、楽しんでいる自分を隠すことがない。イベントに出場している人たちは、プロアマ問わず、皆を楽しませようとするし、観客たちもそれにしっかりと応える。
もちろん、そんなことしなくても観客たちは、自分たちで勝手に楽しむ術を知っている。そしてそんな彼らにカメラを持って近づいていくと、自身がWheels and Wavesの一部であることを理解し、それに相応しい振る舞いでレンズの前で佇んでくれる。だから、Wheels and Wavesでは人の写真が多い。
帰国してさまざまな媒体でイベント紹介ページを造るときは、分かりやすく、バイクの写真を中心とするが、個人的には、バイクや競技の写真や文字情報だけでは、このイベントの本質は見えてこないと考えている。
そしてそういった写真や動画は、インターネットやSNSを通じて、瞬く間に世界中を駆け巡り、また僕のようなファンを生むと信じている。そんな言い訳を造って、僕は来年も南フランスに出かけるだろう。
もちろん、そんなことしなくても観客たちは、自分たちで勝手に楽しむ術を知っている。そしてそんな彼らにカメラを持って近づいていくと、自身がWheels and Wavesの一部であることを理解し、それに相応しい振る舞いでレンズの前で佇んでくれる。だから、Wheels and Wavesでは人の写真が多い。
帰国してさまざまな媒体でイベント紹介ページを造るときは、分かりやすく、バイクの写真を中心とするが、個人的には、バイクや競技の写真や文字情報だけでは、このイベントの本質は見えてこないと考えている。
そしてそういった写真や動画は、インターネットやSNSを通じて、瞬く間に世界中を駆け巡り、また僕のようなファンを生むと信じている。そんな言い訳を造って、僕は来年も南フランスに出かけるだろう。
Punks Peak
Village
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text : 河野正士/Tadashi Kohno
1968年、高知県生まれ。2輪専門誌の編集部に在籍した後、フリーランスに。雑誌を中心に、ライター&エディターとして活動するほか、様々なコンテンツ制作にも携わっている。