CITROËN DS DAY in 増上寺

アヘッド CITROËN DS DAY

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「クルマ離れ」というフレーズ、もはや使い古された感もあるけれど、それはつまり、この問題が依然として進行中であることを示している。メーカーやインポーターはそれを食い止めるべく、あの手この手と知恵を絞っている。

text:森口将之 [aheadアーカイブス vol.140 2014年7月号]
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CITROËN DS DAY in 増上寺

CITROËN DS DAY in 増上寺

もちろん僕を含めた自動車メディアに携わる人間も同じなのだが、悩ましきこのテーマに対するひとつの回答と言えそうなイベントが先日あったので紹介しよう。シトロエンDSラインのオーナーたちを対象とした「DS DAY」だ。

実はシトロエン、パリなど海外では同種のイベントを開催していた。日本での実施を決めたのは、2010年のDS3導入から数えて、我が国でのDSラインの累計登録台数が5000台を超えたからだという。

僕はこのイベントに、同業の飯田裕子さん、岡崎五朗さんとトークショーに参加する予定だった。8時スタートと聞いていたので、いつもより早起きし、フェイスブックをなにげなく見て驚いた。6時過ぎだというのに、入場待ちのDSラインが列をなしている写真がアップされていたのだ。予想以上に盛り上がりそうだ。気を引き締めつつ家を出た。
会場に着くと、専用駐車場はすでに満車。直前に来場したDSラインは、一般向けの駐車場に停めざるを得なかった。オーナーたちはまず、増上寺の本堂で交通安全を祈願。

法要が終わると、本堂へ続く階段を使い、直前に発表されたばかりの特別仕様車DS3/DS4フォーブール・アディクトと、今後導入予定というDS5フォーブール・アディクトを前にして記念撮影。続いてその階段に座ってもらい、トークショーを進めていった。

会場はコンパクトながら、遠藤イヅルさんのイラスト描き下ろしブース、2CVやType Hトラックのカフェ、グッズショップなど多彩なメニューが用意されており、イベント終了の午前10時を過ぎても多くの人で賑わっていた。土曜日の午前中オンリーだったので参加しやすかったためもあろうが、大盛況だった。
▶︎穏やかな晴天の中、MCに飯田裕子さん、ゲストには筆者とともに岡崎五朗さんが参加し、トークショーも盛り上がった。


なによりも増上寺という場所が良かった。日本文化を継承する建造物でフランス車の安全祈願を行い、トークショーは本堂の背後に東京タワーを望みつつ進められた。伝統と革新を融合したシトロエンらしい舞台だった。DSラインの立ち位置をきちんとわきまえていなければ、こういうシチュエーションは実現しなかったはずだ。

インポーターが主催したこともプラスに働いたはずだ。日本で新車で販売される輸入車の約7割はドイツ車。フランス車ユーザーは少数派という立場に置かれている。

だからこそ、つながりを求める気持ちが強いはず。インポーター自身がこういう舞台を用意してくれたことで、オーナー同士、オーナーとインポーターとの絆は確実に強まっただろう。インポーターにとっても、どんなユーザーがどんなスタイルでDSラインに乗っているか、動向を細かくチェックできた。インタラクティブな舞台装置でもあったわけだ。
▶︎増上寺の境内を埋め尽くしたDSの数々。オーナーの個性がそのまま表現されたクルマの数々は、1台として同じものはなかった。お互いのクルマについて語り合ったり、情報交換したり、オーナー同士の話も弾む。


交通安全祈願はDSユーザーに限られたものの、会場へはどんな人どんなクルマでも無料で入場可能という門戸の広さにも好感が持てた。2CVやType Hのカフェを並べたりして、クラシックなモデルをリスペクトする姿勢も忘れていなかった。これもまたDSラインのなんたるかをわきまえている証拠だろう。

クルマのイベントだからといってデザインやメカニズムといった表面的な部分をクローズアップせず、文化的精神的な部分をクローズアップさせたDS DAYは、実にDSラインらしいひとときだった。おそらく多くのDS乗りが、愛車への理解を深めたことだろう。
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text:森口将之/Masayuki Moriguchi
1962年東京生まれ。モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。移動や都市という視点から自動車や公共交通を取材し、雑誌・インターネット・テレビ・ラジオ・講演などで発表。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、グッドデザイン賞審査委員を務める。著作に「パリ流 環境社会への挑戦」「これから始まる自動運転 社会はどうなる!?」など。
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