オリンピックと「i-ROAD」が風景を変える

アヘッド i-ROAD

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今年3月、トヨタ自動車が2024年までの10年間、国際オリンピック委員会(IOC)との間でTOPパートナー契約を結んだと発表した。ここでのTOPは頂点という意味ではなく、ジ・オリンピック・パートナーの頭文字なのだが、最高レベルのグローバルスポンサーシッププログラムであることは間違いない。

text:森口将之 [aheadアーカイブス vol.150 2015年5月号]
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オリンピックと「i-ROAD」が風景を変える

オリンピックと「i-ROAD」が風景を変える

対象はもちろんモビリティで、車両(乗用車、小型モビリティ、商用車等)とインフラ(ITS、テレマティクスサービス等)の両面でオリンピックをバックアップするという。もちろん2020年の東京も例外ではない。

ここで気づいたのは乗用車とは別扱いで小型モビリティと書かれていること。たしかに東京オリンピックはコンパクト五輪をコンセプトとして掲げているぐらいだから、近距離の移動手段は大切だ。トヨタが今後、小型モビリティの分野にいままで以上に精力的に取り組むことが予想できる。

動きはすでに始まっている。2013年のジュネーブ・モーターショーで発表された、モーターサイクルのようにバンクして走る3輪電気自動車「i-ROAD(アイ・ロード)」を使ったカーシェアリングの実証実験を、国内最大規模のカーシェアリングサービス、タイムズカープラスを展開するパーク24と共同で、4月からスタートしたのだ。

実は「i-ROAD」が公道を走るのはこれが初めてではない。昨年3月には地元の愛知県豊田市、10月にはフランスのグルノーブル市で、ハーモ(Ha:mo)と名付けられたトヨタのシェアリングサービスの一環として導入されたし、同年3月から6月にかけては、首都圏で10台を使ってのモニター調査を実施している。
今回は有楽町で「i-ROAD」を借り、有楽町のほか東京タワー、浅草、お台場パレットタウン、東京ドームシティのタイムズステーションで返却するワンウェイ型カーシェアリングとしている。

ワンウェイ型とは借りた場所と違う場所への返却が可能なこと。従来のカーシェアリングは多くが同じ場所への返却を義務づけていたが、そもそも移動とはAからBへ動くことだから、海外を中心に普及が進むワンウェイ型のほうが理に叶っている。

僕は一昨年のグッドデザイン賞の審査で「i-ROAD」に初めて乗った。前輪が上下にスライドして車体を傾かせ、後輪を操舵して曲がるという走行感覚は、モーターサイクルともクルマとも違う新鮮なものだった。衝撃が感動に変わるのに時間は掛からなかった。それ以降、トヨタでいちばん好きなクルマは「i-ROAD」であり続けている。

利用できるのはタイムズカープラスの法人会員と、TCPと名付けられたポイントプログラムでステージ2以上の個人会員に限定される。でもそれさえクリアできれば、革新的な「i-ROAD」で東京の街を走ることができる。2020年の先取りと言えそうな今回のモビリティプロジェクト。近未来を体感できる貴重なチャンスだ。

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森口将之著(¥500)
2011年から始めた著者のブログから、オリンピック・パラリンピック開催が決まった東京の交通に関する問題点や解決法を再編集し、まとめた電子書籍。

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text:森口将之/Masayuki Moriguchi
1962年東京生まれ。モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。移動や都市という視点から自動車や公共交通を取材し、雑誌・インターネット・テレビ・ラジオ・講演などで発表。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、グッドデザイン賞審査委員を務める。著作に「パリ流 環境社会への挑戦」「これから始まる自動運転 社会はどうなる!?」など。
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