リトル レッド レーシングカー

アヘッド リトル レッド レーシングカー

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何度もその世界に入り込んだり、現実に同じことをしようと企てたり。幼い頃に大好きだった絵本は、女の子が家のあちこちにメモを隠して、お母さんがその指示通りに辿っていくと、最後にプレゼントが置いてあるという物語だった。

text:まるも亜希子 photo:長谷川徹、奥村純一 [aheadアーカイブス vol.159 2016年2月号]
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リトル レッド レーシングカー

リトル レッド レーシングカー

photo:長谷川徹
今思えば、子ども向けにしては少し文章が固いし、挿絵の色彩は淡く、リアルな描写で大人っぽい。大きな文字で一行、二行の言葉が並び、赤や黄色の原色で目を惹く絵本が子ども向けと言われる中で、ちょっと異色の存在だ。それでも、あれほど熱中していたということは、物語が伝えようとする本質が、子どもの心にもしっかりと響いたのだろうと思う。

いや、きっと子どもにとっても、「見る」絵本と「読む」絵本はちがう。長く深く記憶に残るのは、作者の想いがあふれ出て、それが心を奮わせるような絵本だ。

そんな絵本は長いことなかなか現れなかったが、久しぶりに出逢った。青い空と、クラシカルな赤いマセラティが印象的な、ドワイト・ノールトンの『リトル・レッド・レーシングカー』だ。

ページをめくると、子どもにはいきなり「?」の行列ができる。「レーシングカーってなに?」「レーシングドライバーって?」「レースってどんなの?」と、きっと大人は質問攻めにあうことだろう。けれど、それをクリアにしたならば、そこからはどんどん物語に引き込まれていくはず。作者のポリシーとして、この絵本は主人公の名前や年齢を特定しなかった。

そう、読者の誰もが、主人公と同化しやすいようにとの想いからだ。ちょっとおこがましいようだが、ついつい私はその「男の子」になりきってしまい、ドキドキと達成感を存分に味わった。

表紙に惹かれて読み始めた主人は、「モノを大切にすることも、子どもに教えられるかもな」なんて感想が出てくるところを見ると、父親になりきった模様。私ももう一度、今度は親目線でページをめくってみる。早くこうして、一緒に感動できるようにならないかなぁと、まだ0歳の娘の成長が待ち遠しくなった。

適齢の親子ならば、巻末にはこの絵本の世界が楽しめるペーパークラフトが付いているので、すぐに一緒に夢中で遊ぶことができそうだ。

1台のクルマの人生から、たくさんの空想や、楽しみや、温かな気持ちが生まれる。この絵本は、そうしたクルマの本質を、やさしく深く伝えてくれている。
photo:奥村純一

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text:まるも亜希子/Akiko Marumo
エンスー系自動車雑誌『Tipo』の編集者を経て、カーライフジャーナリストとして独立。ファミリーや女性に対するクルマの魅力解説には定評があり、雑誌やWeb、トークショーなど幅広い分野で活躍中。国際ラリーや国内耐久レースなどモータースポーツにも参戦している。
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