ULTIMATE JAPAN(アルティメイト ジャパン)

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アヘッド アルティメイトジャパン

F1においても前年の16戦15勝に続きマクラーレン・ホンダが二桁勝利を収めた年で6連覇のさなかにあたる。

あれから四半世紀以上たった今、日本のクルマはどのように進化したのか。そして現代の日本の究極のクルマたちは今も世界と渡り合っているのだろうか。

日本の職人技の集大成 GT-R NISMO

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text:嶋田智之


超高性能スポーツカーは世界に数多あるけれど、中でも日産GT-Rはとても希有な存在だと思う。標準モデルですら〝GT〟にして〝R〟でなければならないという難しい命題を持って生まれたクルマを、僕は他に知らない。

〝GT〟を名乗るからにはグランツーリスモ、つまりは長距離移動を苦にしないある程度以上には快適なロードカーである必要があり、同時に〝R〟、つまりはレーシング・テイストもしくはレーシング・テクノロジーを持った存在でなければならない。

このふたつは高性能でなければならないという部分でこそ共通しているが、それぞれを突き詰めていくと、必ず相反する部分に突き当たるのだ。しかも、よくも悪くも日産スカイラインの中の高性能グレードという位置づけに置かれていた時代とは異なり、2007年にデビューした現行のR35型は独立したひとつのモデル。その命題には裸で向き合わねばならないのである。

はたして〝GT〟なのか、それとも〝R〟なのか。バランシング・ポイントはどこにあるのか。

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初期の頃のR35型GT-Rは、明らかに〝R〟優先だった。モータースポーツ畑が長かった開発責任者がニュルブルクリンクで鍛え上げたクルマらしく、サーキットで走らせると滅法速くて楽しいクルマだったけど、ストリートでの乗り味は粗っぽく、ロングを走る喜びには少しばかり欠けていた。

けれど、最新のGT-Rは違う。毎年ヴァージョンアップを繰り返してきた強靱な速さはほぼそのままに、どこへ行くにも乗って出たくなるような、ストリートを走る喜びに満ちたクルマに生まれ変わっている。

「激変した」と評価された2014年モデルから、開発責任者が〝ストリートを知り尽くした男〟と呼ばれる人物に変わったことが大きいのだが、現在のGT-Rの開発に従事してる人達は、2015年モデルでさらに手を加えた。それも目立つパートをドーンと換えて世の中にアピールするようなやり方ではない。

これまでだって決して評価が低かったわけでもないのに、ダンパーの中にある小さなバルブの構造に手を入れるような、ベアリングをミクロンの単位でチューニングするような、ひとつひとつが地味だけど手間がかかるそうした作業を無数に行い、加えて全体バランスも徹底的に見つめ直さなければならないような、そんな愚直にも思えるやり方だ。

まさに日本の技術者達の職人魂の凄味を強烈に感じさせる手の入れ方である。おかげでクルマの挙動の推移がさらに掴みやすくなり、コントロールの幅も広がり、疲れも少なく、結果的にストリートで持ち前の速さを引き出しやすくなった。〝GT〟と〝R〟のバランスが、抜群に素晴らしいのだ。

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けれど、同じGT-Rの中に、もうひとつ上の〝究極〟があった。GT-R NISMOの存在である。こちらはエンジンのパフォーマンスを600ps/66.5kgmへと引き上げたり、サスペンションを専用のものにしたり、空力パーツを大型化したりと目立つモディファイも行われているけれど、目立たない部分への手の入れ方が、さらに半端じゃない。

例えば車体。通常のスポット溶接に加え、結合部に構造用接着剤を用いてガチッと固め、剛性を稼ぎ出していたりするのだ。岩のように盤石なそのボディが、潜在能力の高まった心臓や足腰や衣装の実力を余すことなく発揮させる。

それが、凄まじく速い。同じコースに様々なスーパーカーで出向いたけれど、ここまで短時間で馴染み、ここまでとんでもないスピードで、ここまで安心感を持って走れたことはない。間違いなく世界の頂点級に、この究極のGT-Rはあった。

1台を作り上げるのにあまりに手がかかるため供給が追いつかず、今はオーダーを受けていないようなのが残念だけど、こうした随の随のようなクルマが日本から生まれ出たという事実を、僕達はもっと誇りに感じていいと思うのだ。

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●NISSAN GT-R NISMO
車両本体価格:¥15,015,000(税込)
エンジン:3.8リッターV型6気筒DOHCツインターボ
排気量:3,799cc
最高出力:441kW (600ps)
最大トルク:652Nm (66.5kgm)

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text:嶋田智之/Tomoyuki Shimada
1964年生まれ。エンスー系自動車雑誌『Tipo』の編集長を長年にわたって務め、総編集長として『ROSSO』のフルリニューアルを果たした後、独立。現在は自動車ライター&エディターとして活躍。

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