なぜランエボ・ワゴンは海外で人気なのか?その魅力とは?

第三世代目のランサー・エボリューションにワゴンがあったのは皆様もご存知のことと思います。この異色の「ランエボ・ワゴン」、海外でも人気のようでネット上でも、時折取り上げられているのを目にすることがあります。ランエボやランエボ・ワゴンが外国人のクルマ好きから見ると「クール・ジャパン」の最たるものなのだとか。

性能、サイズと価格のバランスは、たしかにこの日本車でなければ成し得ないものはあるかもしれません。今回は改めて、第三世代のランエボにあった「ワゴン」の魅力とはどんなところにあったのか、そんなあたりに注目して書き進めてみたいと思います。

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ワゴンボディにしたことであらゆることが丸く収まる?
日常と、非日常の同居がたまらない?!
どことなく大人っぽい、そこも魅力

ワゴンボディにしたことであらゆることが丸く収まる?

CT9W型”エボワゴン”。この第三世代のランエボはワゴン追加の他にも、5段オートマチックの追加などユーザーの間口を広げるような施策が取られた世代。基礎的な性能はすでに折り紙つきでしたから、ランエボの更なる進化のカタチとしてイージードライブやユーティリティの確保など、それまでとは異なった方向性や可能性を追及されたのが、このモデルの特徴と言えるでしょう。

見た目は「ランサー・ワゴン」に酷似しているものの、骨格構造はエボ専用のものとされ、どちらかというとランサー・ワゴンをベースに作り上げられたというより、ランエボ「セダン」のシャシーや骨格にワゴンボディを溶接したような作りなのだとか。ワゴンボディから新規に開発するよりそちらのほうが早かったということなのでしょう。どこかこのあたり、R33スカイラインGT-R4ドア版にも、似た生い立ちのようにも見えます。

ワゴンボディはスポーツモデルとして車体剛性に劣るという定説はありますが、エボワゴンは上記のような構造を持つことに加えて、リアゲートへのスポット(溶接)増しなどにより十全な剛性を確保。また、元来フロントヘビーな構造だったことから、後方により荷重の嵩む構造体ができたことでむしろ重量バランスが改善され、ハンドリングにおいてはセダンより好ましいという声もあるほど。レースの世界では空力特性もセダンより良好で、直線スピードではこちらのほうが上という現象も。

あらゆる点で、ワゴンというボディを身につけたことで、ネガティブよりポジティブな面をより引き出したと言えるのが、このエボワゴンだったということのようです。

日常と、非日常の同居がたまらない?!

性能や数値を追求するなら、より剛性も高く採りやすく重量も嵩まないセダンボディを、という方向性になっていくわけですが、そこを敢えてワゴンボディでも出してきた。その心は「日常と非日常の同居」にあると思います。

ワゴンボディのユーティリティの高さは、ご説明するまでもないと思います。日常生活を助けるこの高い実用性を併せ持ったスポーツモデル、というところにこのクルマの魅力の全てが詰め込まれているといっていいです。時にサーキットを攻めるような走りにも十分に応えてくれて、同時にホームセンターで買った小さなタンスくらいは軽く飲み込めるラゲッジスペースをも併せ持つ日常性を一度に得られるというのはちょっと刺激的です。

その意外性というか、人があまり考えつかないようなアイデアを具現化しているところに、きっと外国人も心惹かれるところがあるのだと思います。ましてや欧米人はクルマに対して合理的で、あちらでは日本よりずっと「ワゴン文化」ですから、ワゴンに対する想いは人一倍といってもいいと。

そこに、日本車特有のハイテク武装による素晴らしい動力性能や運動性能が一度に手に入るというのは、やはり魅力的に感じているのだと思います。

それとここまで速い「ワゴン」、ここまで突き抜けた「ワゴン」というのもなかなか世界中を見回しても、他に見当たらなかったりもします。アウディやボルボなども考えられますがより高価ですし、あるいは同じ日本発のインプレッサWRXのワゴンか、ということになるわけです。スタイリング的にもエボワゴンはWRXワゴンより、ずっと四角張って、ワゴンらしいワゴンに見えるというところもまた特徴ですね。

どことなく大人っぽい、そこも魅力

ワゴンボディによる実用性やオートマチックも選べるイージードライブという要素が、このクルマを「大人」にも選ばせる要因になっていたことは間違いないでしょう。どこか若者向けといった印象のあったランエボは、間口を広げたことで大人も取り込むだけの魅力を備えるに至った訳です。

たとえばこの内装の仕立て。黒のレザーとのコンビで、落ち着いていてシックな雰囲気を備えているあたり、これまでのランエボとはちょっと異なった趣ですよね。とくに室内に関してはユーザーの年齢層をはっきりと左右する要素ですから、こうした仕立てとしてきているということは、三菱自身も今までとは違った「層」を取り込みたいと狙ってのものと思われます。実際に街中を見てもランエボワゴンや同時期のGTAに乗る大人のドライバーが多かった記憶があります。

また同時に、ランエボというクルマのユーザー、あるいはファンの年齢が、年を経ることに合わせて上昇していたという現実もあるのだと思います。若くして初期のランエボを手にしていたユーザーは時間とともに年齢を重ね、家族を持ち、走りだけではなくユーティリティも必要になり始めた、そんな実情も反映していたのかもしれませんね。


今回はちょっと異色の「ランサーエボリューション・ワゴン」についてを取り上げてみました。異色、というのもワゴンはこの代限りで次世代には引き継がれなかったという点です。第四世代のランエボはさらにハイテク武装に磨きをかけ、戦闘力を増していくことになりますが、第三世代のエボワゴンで見せたような大人っぽさよりも、また改めてストイックに走りを追求したモデルとなっています。やはりエボワゴンはユーザーにはあまり受け入れられなかったのでしょうか。

中古車市場を見ても台数はおおよそセダンの3分の1程度の流通量、価格もセダンと同じか、場合によってはやや割安なこともあるようです。個人的にエボワゴン、中古車で購入するには大穴だと思います。スポーツモデルとは言え、多少はおとなしく乗られてコンディションの良いものが選びやすいと想像できることや、希少性と価格も魅力に挙げられると思います。ランエボご購入の折には一度ご検討されてはいかがでしょうか。

<前田恵之進>