キャデラック CT6を試乗レビュー!高級車ブランドの評価はいかに?
更新日:2024.09.09
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第一次世界大戦と第二次大戦を挟んだ時代、キャデラックは世界最上級の高級車ブランドの一角を占めていた。高級車という分野においては極めて重要な「格式」という要素について、この時代のV-16ないしはV-12エンジンを搭載したキャデラックに匹敵し得るアメリカ製ブランドは「パッカード」くらいのもの。
文・武田公実 写真・Yoshi Dazai
文・武田公実 写真・Yoshi Dazai
キャデラックはアメリカンドリームの象徴
ヨーロッパに目を移しても、今も昔も高級なプロダクツの代名詞である英国の「ロールス・ロイス」。フランス車ならば「イスパノ・スイザ」や一部の「ブガッティ」。そしてドイツ車で言うなら「メルセデス・ベンツ」の高級モデル、縦長のラジエーターグリルがV字型に折られた500K/540K、770グロッサーなどと同格のライバルとして君臨していた。
また、第二次大戦後の社会情勢に適合するため、自ら民主化路線へと軌道修正を果たした1940~60年代には、戦前以来の身上であった革新的テクノロジーが世界の高級車の規範ともなる。例えば、オートマティック・トランスミッションやパワーステアリングなどのコンポーネンツは英国のロールス・ロイス/ベントレーにも供給されていた。
ところがメルセデスSクラスの登場により、高級車のグローバルスタンダードがヨーロッパ車へと移行してしまった1970年代後半になると、キャデラックは世界に影響を及ぼすような技術革新とは無縁の存在となってしまう。
それは現在のキャデラック自身も良く分かっているようで、1974年から97年までの23年間をして「テクノロジー面の暗黒時代」と規定。また「格式」の点においても、アメリカ国内のガラパゴス的価値観における「アメリカンドリーム」の象徴としてのみ評価されることになってゆくのだ。
また、第二次大戦後の社会情勢に適合するため、自ら民主化路線へと軌道修正を果たした1940~60年代には、戦前以来の身上であった革新的テクノロジーが世界の高級車の規範ともなる。例えば、オートマティック・トランスミッションやパワーステアリングなどのコンポーネンツは英国のロールス・ロイス/ベントレーにも供給されていた。
ところがメルセデスSクラスの登場により、高級車のグローバルスタンダードがヨーロッパ車へと移行してしまった1970年代後半になると、キャデラックは世界に影響を及ぼすような技術革新とは無縁の存在となってしまう。
それは現在のキャデラック自身も良く分かっているようで、1974年から97年までの23年間をして「テクノロジー面の暗黒時代」と規定。また「格式」の点においても、アメリカ国内のガラパゴス的価値観における「アメリカンドリーム」の象徴としてのみ評価されることになってゆくのだ。
現代キャデラックのフラッグシップセダン「CT6」の誕生
しかし今世紀を迎えたキャデラックは、現代を見据えた抜本的な改革に着手。「アート&サイエンス」なるモットーとともにデザイン改革を図ることで、これまでのアメリカ車はもちろん、欧州車にも例を見ない先鋭的なデザインを打ち出すことに成功している。
また、前世紀のキャデラックでは考えられなかったモータースポーツ活動を積極的に展開するとともに、生産モデルについてもニュルブルクリンク北コースにおける開発データをフィードバック。ミドルクラスの「ATS」やアッパーミドルの「CTS」には、BMW MやメルセデスAMGなどのヨーロッパ製スーパーセダンと肩を並べる超高性能モデルが設定されることになった。
さらには軍事・航空機技術を適用したナイトビジョンを逸早く採用したほか、自動運転テクノロジー由来の安全運転支援システムやコネクティビティの点でも世界最高レベルに到達しつつあるなど、実は現代のキャデラックはその伝統に相応しい実力を備えているのだが、一方でしばし途絶えていたのが本流であるプレステージセダン。
その最後に残されたパズルのピースを埋めるかのように、数多くの先進テクノロジーを引っ提げて2016年にデビューしたのが現代キャデラックのフラッグシップセダン「CT6」なのだ。
また、前世紀のキャデラックでは考えられなかったモータースポーツ活動を積極的に展開するとともに、生産モデルについてもニュルブルクリンク北コースにおける開発データをフィードバック。ミドルクラスの「ATS」やアッパーミドルの「CTS」には、BMW MやメルセデスAMGなどのヨーロッパ製スーパーセダンと肩を並べる超高性能モデルが設定されることになった。
さらには軍事・航空機技術を適用したナイトビジョンを逸早く採用したほか、自動運転テクノロジー由来の安全運転支援システムやコネクティビティの点でも世界最高レベルに到達しつつあるなど、実は現代のキャデラックはその伝統に相応しい実力を備えているのだが、一方でしばし途絶えていたのが本流であるプレステージセダン。
その最後に残されたパズルのピースを埋めるかのように、数多くの先進テクノロジーを引っ提げて2016年にデビューしたのが現代キャデラックのフラッグシップセダン「CT6」なのだ。
キャデラック CT6 ギャラリー
キャデラック CT6は軽妙にして上品なドライブフィール
キャデラックCT6はホイールベース3,110mm、スリーサイズは5,190×1,885×1,495mmという堂々たる体躯を誇る。
これはメルセデスSクラスの標準ボディにも匹敵するサイズで、しかも「アクティブオンデマンドAWD」と名づけた4WDシステムも標準で与えられているのだが、11種類ものマテリアルを適材適所に採用したと標榜する「オメガ」プラットフォームによって、1920kgという比較的軽い車両重量に抑えられているという。
これはメルセデスSクラスの標準ボディにも匹敵するサイズで、しかも「アクティブオンデマンドAWD」と名づけた4WDシステムも標準で与えられているのだが、11種類ものマテリアルを適材適所に採用したと標榜する「オメガ」プラットフォームによって、1920kgという比較的軽い車両重量に抑えられているという。
実際に走り出してみると、たしかにボディサイズによるストレスをまるで感じさせない軽妙な走りに、事前の予想を大きく上回る好印象を受けた。
加えて、舵角やスピードによって後輪も操舵する「アクティブリアステア」、あるいは今世紀初頭にGMグループから世界に広がった磁性流体減衰力可変システム「マグネティックライドコントロール」の効力も相まって、すべてが軽やかでしかも上品。
これこそ、かつて世界のセレブレティを魅了したキャデラック本来の味わいだったのでは……!と感嘆させられてしまったのだ。
加えて、舵角やスピードによって後輪も操舵する「アクティブリアステア」、あるいは今世紀初頭にGMグループから世界に広がった磁性流体減衰力可変システム「マグネティックライドコントロール」の効力も相まって、すべてが軽やかでしかも上品。
これこそ、かつて世界のセレブレティを魅了したキャデラック本来の味わいだったのでは……!と感嘆させられてしまったのだ。
一方パワーユニットは、ダウンサイジングターボ全盛の現代においては貴重になりつつある自然吸気。V型6気筒3.6リッターで最高出力340ps(250kw)/6,900rpm、最大トルクは39.4kgm(386Nm)/5,300rpmというスペックが示すように、力感に不満を覚えることはまったく無かった。
またNAらしくナチュラルに吹け上がるのは魅力なのだが、その回転上昇にしたがってエンジン排気音まで元気に盛り上がってしまうのは、いささか残念なところ。
ロードノイズや車外からの透過音が巧みに抑えられているだけに、ここはさらなるブラッシュアップを望みたい。あるいは、より余裕のある大排気量V8ユニットの搭載も待ち望んでしまうのだが、それはちょっと過ぎた願望かもしれない。
それでも、ドイツ勢を筆頭に強豪ひしめくプレステージセダン・カテゴリーにあって、キャデラックCT6が真の高級車たりえているか?と問われれば、筆者は迷わず「イエス」と答えるだろう。
またNAらしくナチュラルに吹け上がるのは魅力なのだが、その回転上昇にしたがってエンジン排気音まで元気に盛り上がってしまうのは、いささか残念なところ。
ロードノイズや車外からの透過音が巧みに抑えられているだけに、ここはさらなるブラッシュアップを望みたい。あるいは、より余裕のある大排気量V8ユニットの搭載も待ち望んでしまうのだが、それはちょっと過ぎた願望かもしれない。
それでも、ドイツ勢を筆頭に強豪ひしめくプレステージセダン・カテゴリーにあって、キャデラックCT6が真の高級車たりえているか?と問われれば、筆者は迷わず「イエス」と答えるだろう。
キャデラックは世界に冠たる高級車ブランドの地位へ
今やキャデラックにおいても、アメリカではVIPや政府高官のショーファードリヴンにも供用される「エスカレード」や、パーソナルカーとして人気を得ている「XT5クロスオーバー」などのSUVが、ブランドを象徴するモデルとなっていることは認めざるを得ない。
ただその一方で「ATS」や「CTS」などのミドル/アッパーミドルセダンでも、既にグローバルスタンダードにおける優秀な高級モデルという評価を享受しているのだが、キャデラックの保守本流であるプレステージセダンの分野においてもドイツ勢に匹敵、あるいは部分的には凌駕し得るモデルが存在していることを、ここにあらためて訴えたい。
CT6は、キャデラックが世界に冠たる高級車ブランドの地位へと返り咲く日が、もはや決して遠くはないと確信させてくれたのである。
ただその一方で「ATS」や「CTS」などのミドル/アッパーミドルセダンでも、既にグローバルスタンダードにおける優秀な高級モデルという評価を享受しているのだが、キャデラックの保守本流であるプレステージセダンの分野においてもドイツ勢に匹敵、あるいは部分的には凌駕し得るモデルが存在していることを、ここにあらためて訴えたい。
CT6は、キャデラックが世界に冠たる高級車ブランドの地位へと返り咲く日が、もはや決して遠くはないと確信させてくれたのである。
インテリア ギャラリー
武田公実|Takeda Hiromi
かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッドで営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、クラシックカー専門店などで勤務ののち、自動車ライターおよびイタリア語翻訳者として活動。また「東京コンクール・デレガンス」、「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントにも参画したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム」ではキュレーションを担当している。