ランチア テーマ8.32とは?フェラーリと同じエンジンを積んだセダン
更新日:2024.09.09
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フェラーリといえば、いわずと知れたイタリアを代表する高級スポーツカーブランド。そんなフェラーリのエンジンを搭載したセダンとして、現在、人気なのがマセラティのクワトロポルテです。しかし1980年代にも、他メーカーなのにフェラーリエンジンが載ったセダンが存在していました。それが、ランチア テーマ8.32です。
文・西山昭智
文・西山昭智
- Chapter
- ランチアの歴史
- ランチア テーマが登場
- ランチア テーマ8.32とは
ランチアの歴史
ランチアは、フェラーリと同じイタリアの自動車メーカー。歴史はフェラーリよりも古く、1906年に設立されました。
戦前には、1922年に世界初のモノコックボディを採用したラムダ、1937年には風洞実験によって設計されたボディと、狭角V4エンジンを積んだアプリリアを世に送り出し、自動車シーンにおいてランチアの名声をゆるぎないものにします。しかし、同じ年に創業者であるヴィンチェンツォ・ランチアが死去。息子のジャンニが、会社を引き継ぐことになりました。
戦後、ジャンニの率いるランチアは、世界初のV型6気筒エンジンにトランスアクスルレイアウト採用したアウレリアを生み出します。同時に、レースシーンにも進出、ミッレ・ミリアやル・マン、さらにF1など意欲的に活動を行っています。
しかし1955年には経営の悪化によって倒産。新しい経営者のもと、FFのフラヴィア、フルヴィア、FRのフラミニアといったモデルを発表するものの経営は軌道に乗らず、1969年にはフィアット傘下に収まることになりました。
さまざまなブランドを有していたフィアットのなかで、ランチアは高級車部門という位置づけで、1972年にはフィアットのエンジンを搭載したベータ、1974年にストラトス、1979年に5ドアハッチバックのデルタが誕生。同年のヨーロッパ・カー・オブ・ザ・イヤーに見事選出されています。
このフィアット期には、ストラトス、037ラリー、デルタ インテグラーレに代表されるWRCに加え、ル・マンを始めとしたロードレースでも華々しい成績を残しますが、現在はブランドこそ残されているものの、販売される車両は、同じクループのクライスラー製となり、当時の輝きを完全に失ってしまったようです。
戦前には、1922年に世界初のモノコックボディを採用したラムダ、1937年には風洞実験によって設計されたボディと、狭角V4エンジンを積んだアプリリアを世に送り出し、自動車シーンにおいてランチアの名声をゆるぎないものにします。しかし、同じ年に創業者であるヴィンチェンツォ・ランチアが死去。息子のジャンニが、会社を引き継ぐことになりました。
戦後、ジャンニの率いるランチアは、世界初のV型6気筒エンジンにトランスアクスルレイアウト採用したアウレリアを生み出します。同時に、レースシーンにも進出、ミッレ・ミリアやル・マン、さらにF1など意欲的に活動を行っています。
しかし1955年には経営の悪化によって倒産。新しい経営者のもと、FFのフラヴィア、フルヴィア、FRのフラミニアといったモデルを発表するものの経営は軌道に乗らず、1969年にはフィアット傘下に収まることになりました。
さまざまなブランドを有していたフィアットのなかで、ランチアは高級車部門という位置づけで、1972年にはフィアットのエンジンを搭載したベータ、1974年にストラトス、1979年に5ドアハッチバックのデルタが誕生。同年のヨーロッパ・カー・オブ・ザ・イヤーに見事選出されています。
このフィアット期には、ストラトス、037ラリー、デルタ インテグラーレに代表されるWRCに加え、ル・マンを始めとしたロードレースでも華々しい成績を残しますが、現在はブランドこそ残されているものの、販売される車両は、同じクループのクライスラー製となり、当時の輝きを完全に失ってしまったようです。
ランチア テーマが登場
そんなランチアの黄金期であった1984年にデビューしたのが、ガンマの後継版となるテーマです。ジウジアーロ率いるイタルデザインがスタイリングを手がけたアッパーミドルグレードのセダン(後にステーションワゴンも追加)で、1994年まで生産され続けた息の長い人気モデルでした。
テーマの内装の一部は、イタリアの名門高級家具メーカーのポルトローナ・フロウが担当、さらにファッションブランドのエルメネジルド・ゼニアの生地やアルカンターラを使用するなど、高級感あふれる仕上がりで評判を集めました。
テーマは、フロントにエンジンを搭載するFFレイアウトで、のちに2.0L NAのほか、2.0LターボやV6、ディーゼルモデルなどが、ラインナップされていました。そのようなラインナップに追加されたモデルが、テーマ8.32でした。
テーマの内装の一部は、イタリアの名門高級家具メーカーのポルトローナ・フロウが担当、さらにファッションブランドのエルメネジルド・ゼニアの生地やアルカンターラを使用するなど、高級感あふれる仕上がりで評判を集めました。
テーマは、フロントにエンジンを搭載するFFレイアウトで、のちに2.0L NAのほか、2.0LターボやV6、ディーゼルモデルなどが、ラインナップされていました。そのようなラインナップに追加されたモデルが、テーマ8.32でした。
ランチア テーマ8.32とは
1986年にトリノショーで発表されたテーマ8.32は、3.0L V型8気筒エンジンを搭載するモデルで、名前の由来は8気筒32バルブというもの。その変わった名前のつけ方からも分かるように、このエンジンはフェラーリ308クワトロバルボーレと同じものが使われています。フェラーリも同じようにフィアット傘下だったということから誕生したスペシャリティな1台が、このランチア テーマ8.32の正体です。
排気ガス規制を受けて、キャブレターからインジェクションに変更された308のV8エンジンを、フロントに横置き(308はミドシップ)で搭載された308のV8エンジンは、排気ガス規制を受けてキャブレターからインジェクションに変更されたもの。ヘッドカバーにはLANCIA by Ferrariという文字がしっかりと刻まれています。
ベースグレードのテーマが120psだったのに対し、テーマ8.32の最高出力は210ps。重量のあるV8をフロントに搭載したことで重量バランスが崩れたため、グッドイヤーが新しくタイヤを開発したというエピソードもあるほどです。
ほかにも、星型のホイールデザインや格子状グリルなどフェラーリの意匠をスタイリングの随所にちりばめたほか、格納式のリアスポイラーをトランクリッドに配置。さらに、内装材にはローズウッドを使うなど、あらゆる面でスペシャルな仕上がりになった8.32は、そのぶんだけ高額で、ベースグレードの倍近い金額でした。
排気ガス規制を受けて、キャブレターからインジェクションに変更された308のV8エンジンを、フロントに横置き(308はミドシップ)で搭載された308のV8エンジンは、排気ガス規制を受けてキャブレターからインジェクションに変更されたもの。ヘッドカバーにはLANCIA by Ferrariという文字がしっかりと刻まれています。
ベースグレードのテーマが120psだったのに対し、テーマ8.32の最高出力は210ps。重量のあるV8をフロントに搭載したことで重量バランスが崩れたため、グッドイヤーが新しくタイヤを開発したというエピソードもあるほどです。
ほかにも、星型のホイールデザインや格子状グリルなどフェラーリの意匠をスタイリングの随所にちりばめたほか、格納式のリアスポイラーをトランクリッドに配置。さらに、内装材にはローズウッドを使うなど、あらゆる面でスペシャルな仕上がりになった8.32は、そのぶんだけ高額で、ベースグレードの倍近い金額でした。
一見すると、品の良いミドルクラスサルーンにしか見えないボディに、フェラーリと同じエンジンを搭載したテーマ8.32。このモデルは1992年に生産が終了され、その後のフラッグシップには、アルファロメオのV6エンジンが採用されています。
フィアットという巨大自動車メーカーが存在し、フェラーリとランチアという特別なブランドがフィアット傘下に収まっていたからこそ、この化学反応が生まれたのかもしれません。
フィアットという巨大自動車メーカーが存在し、フェラーリとランチアという特別なブランドがフィアット傘下に収まっていたからこそ、この化学反応が生まれたのかもしれません。
西山昭智
大学卒業後自動車雑誌の編集部へ入社。アメリカ車を皮切りに輸入中古車やスーパーカー専門誌の編集部を経て独立。現在も紙媒体の自動車雑誌で編集および執筆を行なっている。正規販売ディーラーや中古車専門店などに取材を行なうことが多く、現場でしか聞けない業界の裏話的なものも取り扱い中。好きな車はフランス車。