大ダメージ!? クルマが止まったままハンドルを切る『据え切り』をしてはいけない理由

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「クルマが止まった状態でハンドルを回してはいけない」と、経験豊富なドライバーから聞いたことはありませんか? これは“据え切り”と呼ばれる操作で、実はクルマに大きなダメージを与える行為なのです。初心者や運転に不慣れな人ほど駐車時などについやってしまいがちですが、なぜ据え切りを避けるべきなのでしょうか?

CARPRIME編集部

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Chapter
据え切りとは?初心者がやりがちな理由
据え切りがタイヤに与える影響 – 摩耗と偏摩耗に注意!
タイヤの一点に集中する大きな負担
偏摩耗が引き起こす様々な悪影響
サスペンションやステアリングへの負担 – 部品にも蓄積ダメージ
見えない部分にもかかる大きな負荷
現代のクルマは頑丈?メーカーの想定とJAFの見解
「塵も積もれば山となる」蓄積ダメージのリスク
パワーステアリングへの思わぬ負荷 – 故障のリスクは?
駐車時のテクニック – 据え切りしない上手なハンドル操作
低速で車を動かしつつハンドルを切る
ハンドルを切るタイミングを工夫する
複数回に分けて切り返す
フルロックを避ける
据え切りが燃費や車全体の寿命に与える意外な影響
まとめ – 車をいたわって長持ち&安全なカーライフを!

据え切りとは?初心者がやりがちな理由

据え切りとは、クルマが静止したままハンドルを切ることを指します。たとえば車庫入れや縦列駐車の際、クルマを完全に止めた状態でハンドルを回す操作がこれに当たります。

かつてパワーステアリング(パワステ)の無い時代には「止まったクルマのハンドルを回すのはとても重労働で、クルマを傷める原因になる」とされ、据え切りはご法度でした。

しかし現代では、ほとんどの車種にパワステが標準装備されており、エンジンさえかかっていれば停止状態でもハンドルを軽い力で回すことができます。駐車場での切り返しなど狭い場所でも楽に操作できるため、初心者ドライバーは「こんなにスイスイ回せるなら問題ないでしょ?」と考えてしまいがちです。

現代ではパワステの普及により、停止中でもハンドル操作がスイスイできてしまい、クルマに負担がかかっていることに気づきにくいのです。

とはいえ、据え切りはクルマに確実に負担をかけています。次章から、その具体的な悪影響をタイヤ・足回り・パワステと順に見ていきましょう。「え、そんなにヤバいの?」と思うかもしれませんが、ご安心を。一度や二度で即座に壊れるわけではありませんので、過度に心配する必要はありません。重要なのは“なぜ良くないか”を知り、なるべく避ける心構えを持つことです。

据え切りがタイヤに与える影響 – 摩耗と偏摩耗に注意!

タイヤの一点に集中する大きな負担

据え切りによってタイヤには大きな負担がかかります。一番わかりやすいのは、タイヤの摩耗(すり減り)です。

クルマが停止したままハンドルを切ると、重い車体に押し付けられたタイヤの接地面が同じ場所で路面とこすれ合います。車重1トン超えのクルマでは、フロントタイヤ1本あたり300kg以上の荷重がかかることもあります。その重さで同じ場所をグリグリと擦るわけですから、タイヤ表面のゴムはたまったものではありません。

人間に例えれば、片足のかかとを床につけたままクルッとその場で回転するようなものです。

体重が一点に集中するので、靴のかかと部分だけが激しく擦り減ってしまいますよね。クルマの据え切りも同じで、タイヤのトレッド面(接地面)の一箇所だけが路面にこすりつけられ、そこだけ摩耗が進んでしまいます。

偏摩耗が引き起こす様々な悪影響

その結果、タイヤは偏摩耗(へんまもう)につながります。表面がデコボコになった偏摩耗タイヤは微振動を起こして乗り心地を悪化させ、最悪の場合パンクやバーストの原因にもなりかねません。

また、新しいアスファルト路面や真夏の炎天下で据え切りをすると、路面にタイヤ痕が渦巻き状に残ることがあります。タイヤのゴムが路面にこすり取られ、黒いスジとして跡が残るのです。せっかくのお気に入りタイヤを削って路上アートを描いても、クルマにとって良いことは一つもありません。

サスペンションやステアリングへの負担 – 部品にも蓄積ダメージ

見えない部分にもかかる大きな負荷

据え切りはタイヤだけでなく、サスペンションや操舵系にも負担をかけます。ハンドルの回転力はステアリングコラム〜シャフトを通じてステアリングラックに伝わり、タイロッドを介してタイヤの向きを変えます。

クルマが静止した状態ではタイヤの接地面に強い摩擦抵抗が生じるため、タイロッドを動かすには普段以上の力が必要です。つまり車体が動かないほど、ハンドル操作時にステアリングシャフトやラック、タイロッドにかかる負荷が大きくなるということです。

現代のクルマは頑丈?メーカーの想定とJAFの見解

近年のクルマでは重量増やタイヤの大型化により、据え切り時に各部品へ従来以上の力がかかりますが、パワーステアリングの性能向上でドライバーはそれを感じにくくなっています。

メーカーもこうした負荷は織り込み済みで、各パーツは十分な強度・耐久性を持つよう設計されています。そのため多少据え切りをしたくらいで、ステアリング周りの部品がすぐに壊れることはありません。

実際、JAF(日本自動車連盟)も「現代のクルマは部品の強度・精度が高いため、数度の据え切り程度ならほとんど影響はない」と述べています。初心者向けの教習や動画でも、安全優先で据え切りを取り入れるケースがあるほどで、ある程度は想定内とも言えるでしょう。

「塵も積もれば山となる」蓄積ダメージのリスク

しかし、だからといって“完全にノーダメージ”ではありません。JAFは「据え切りの負担がまったくないわけではない」とも指摘し、繰り返し多用すれば部品の破損につながる可能性があると警鐘を鳴らしています。

実際、JAFが以前行っていた車庫入れ講習では、多数の受講者が講習車両で絶え間なくハンドルを切り返したため、その車はタイヤの減りが非常に早く寿命が短かったそうです。

小さな負担でも、塵も積もれば山となります。長期的には、ステアリングのギアやベアリング類にガタつきが出たり、タイロッドブーツ(継手部分のゴム)が破れてグリス漏れを起こしたり、ホイールアライメントの狂いで車が真っ直ぐ走らなくなる等の不具合に発展するケースもあります。

ある整備士は「最近の車は十分な強度があるとはいえ、過度な使用は控えた方が良い。狭いパーキングで数回行う程度なら通常の範囲内だが、必要以上にやるのがマズイということです」と述べています。

パワーステアリングへの思わぬ負荷 – 故障のリスクは?

据え切りは、ハンドル操作を助けるパワーステアリング(PS)自体にも負担をかけます。油圧式パワステ搭載車で据え切りやフルロックを多用すると、ポンプに過大な負荷がかかりオイルが泡立ってアシストが一時的に失われたり、オイル漏れが生じる場合があります。

一方、電動パワステ車では、短時間に据え切りを繰り返すとコンピューターがモーター過熱を検知してアシストを抑制する保護モードが作動し、ハンドルが急に重くなることがあります。故障ではない一時的な安全措置ですが、頻繁に起きるようだとパワステモーターの寿命を縮めかねません。

駐車時のテクニック – 据え切りしない上手なハンドル操作

据え切りの悪影響を知ると、「じゃあ狭い駐車場でどうやって車庫入れすればいいの?」と不安になるかもしれません。でも大丈夫、コツさえ掴めばなるべく車を動かしながらハンドル操作をすることが可能です。以下に、駐車時のハンドルさばきのポイントをまとめました。

低速で車を動かしつつハンドルを切る

停車したままハンドルを回さず、タイヤがわずかでも転がっている状態でハンドル操作する習慣をつけましょう。オートマ車ならエンジンのクリープ現象を利用し、ブレーキでゆっくり車速を調整しながらハンドルを回すと良いです。タイヤと路面の摩擦抵抗が大幅に減るので、ハンドルもスッと軽く回ります。

ハンドルを切るタイミングを工夫する

縦列駐車では、車が後退で動いている最中にハンドルを切り始め、目標位置に入れたら車を停止します。狭い場所でもあわてずゆっくり少しずつ動かせば、据え切りせずに目的の角度まで車の向きを変えられます。こうした操作に慣れれば、据え切りなしでも狭いスペースに車を収めることが可能です。

複数回に分けて切り返す

一度で無理に曲げようとせず、切り返し回数を増やして構いません。その際も、車を動かしながらハンドルを操作するのが鉄則です。何度か前後に振り返して車の角度を調整すればOK。焦って急いで据え切りしてもタイヤに厳しいだけなので、落ち着いて安全確認しながら小刻みに調整しましょう。

フルロックを避ける

ハンドルを限界まで切った状態(「ゴゴゴ…」と振動する位置)で長時間キープしないよう注意しましょう。パワステの油圧ポンプやモーターに過大な負荷がかかり、油温の上昇やモーター過熱の原因になります。狭い場所でもタイヤが擦れるほど無理に切らず、余裕のある範囲で調整する方が車に優しいです。

据え切りが燃費や車全体の寿命に与える意外な影響

据え切りの積み重ねは、タイヤやサスペンションなど足回り部品の寿命を縮め、ひいてはクルマ全体の寿命を短くする要因になり得ます。また、タイヤが擦れる抵抗は本来ムダなエネルギー消費であり、微々たるものとはいえ燃費にもマイナスです。部品交換の手間や費用、燃料コストの面でも、据え切りを減らすことはメリットが大きいと言えるでしょう。

まとめ – 車をいたわって長持ち&安全なカーライフを!

据え切り(停車中のハンドル操作)は、タイヤの偏摩耗やサスペンション・ステアリング系への過剰な負荷につながり、クルマに少しずつダメージを蓄積させます。現代の車は多少の据え切りでは壊れませんが、「やらないに越したことはない」のも事実です。特に初心者の方はついやってしまいがちですが、今日からはなるべく避けるよう意識してみてください。

幸い、据え切りをせずに駐車するテクニックも存在します。車をゆっくり動かしながらハンドルを切る習慣を身につければ、タイヤやパーツにも優しく、結果的に愛車を長持ちさせることができます。多少据え切りが必要な場面でも、必要以上にグリグリしないことが大切です。何事もやりすぎは禁物というわけですね。

もし駐車中につい据え切りしてしまっても、「あ、今タイヤが悲鳴を上げたかも?」と思い出してください。そんなときは少し車を動かしてからハンドルを切り直しましょう。それだけで車への優しさ度がグッとアップします。初心者の皆さんも、「据え切りしない」安全で快適なカーライフを楽しんでくださいね!
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