多彩な使い方を受け止めてくれる フランス生まれのカングー

アヘッド カングー

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本国フランスでは商用車・乗用車ともにラインアップされているカングーだが、日本では商用・乗用の枠を超えて不思議なほど愛され続けている。

text:石井昌道 photo:  長谷川徹 ルノー・ジャポン [aheadアーカイブス vol.122 2013年1月号]
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多彩な使い方を受け止めてくれる フランス生まれのカングー
カングー

多彩な使い方を受け止めてくれる フランス生まれのカングー

今や初夏の恒例となっているイベント、ルノー「カングージャンボリー」には、色とりどりのカングーが400台以上も集結する。ユーザー同士の親交も深めている。こういったムーブメントは世界中どこにもなく、日本だけのものだという。これにはフランス本国のエンジニアたちも大喜びで、様々な協力体制がしかれているそうだ。

'02〜'09年まで販売されていたカングー1は商用車をベースに乗用車へとラインアップを広げたこともあり、今以上に商用車よりの性格だった。

しかし同じ道具でもフランス生まれのカングーは何やら華やかな雰囲気があり、まずはコジャレた花屋さんやケータリングサービス会社がこぞって導入。そのスタイルに惚れて乗用車として使う人も徐々に増えていった。

そういった背景があったからか、2009年発売の現行型カングー2は、開発時から乗用車として企画された。居住性や快適性、ピープルムーバとしての使い勝手を大幅に向上させ、日本ではミニバン・ユーザーをも取り込んでいった。

日本のミニバンの装備の充実ぶりは世界的に見ても随一で秀逸ではあるが、デザインや乗り味の面で受け付けない人も少なからずいるようで、そういった層にとってカングーはピタリとハマる存在なのだ。

デザインは、シンプルな道具感をベースにしつつもどこか愛嬌がある。日本のミニバンが過剰なデザインだったりコワモテ系だったりするのとは趣が180度違う。

そのフレンドリーな雰囲気に惹かれてドアを開け、シートに腰を降ろしてみると、今度はユッタリと寛げる心地よさに気付くことになる。

ミニバンの多くはシートアレンジを多彩にし、さらに室内を広く見せるためにシートを小振りにするのだが、カングーはフランス車の常で、座り心地を最優先。座面はたっぷりとした厚みがあり、お尻がスッと沈み込むようなアタリの柔らかさがある。まるで快適なソファーのようなのだ。

それでいて走り始めてみると、身体がフワフワするなんてことはなく、キチンとしたホールド性も確保されている。フランスは古い街並みが多く石畳などゴツゴツした路面が点在している。そこでシートのソフトさが求められるのだ。

また、高速道路の平均速度は日本よりも格段に高く、夏のバカンスなど長距離移動の機会が多いため、走っているときのしっかり感や疲れの少なさをも両立させることが不可欠。決して高級車ではないカングーでも、日本では考えられないほどシートにはコストが掛かっているというわけだ。


装備面では日本車が独壇場かと思いきや、カングーにはフランス車らしい気遣いがある。

たとえばリアシート。一般的には2人なら快適に座れるものの真ん中の3人目はちょっと窮屈になる、ということも多いが、カングーは3人が平等になるよう配慮。

リアシートから頭上に手を伸ばすと小物が入れられるオーバーヘッドボックスが備わるが、これも平等に3分割されている。出生率を高める政策を推進するフランスでは子供3人という家庭が多く、移動中に兄弟喧嘩しないようにという配慮だという。

その他、グリップ部分が大きくて握りやすくなっているサイドブレーキは、頻繁に上げ下げする郵便局や宅配のドライバーのことを考えているというリアルでユニークなエピソードもある。現行モデルは乗用車としての性格を強めてはいるが、商用車ユーザーへの配慮も忘れてはいないのだ。そしてそれは意外なところでの評価にも繋がっている。

荷物の出し入れがしやすいようフロアを低く設定したり、使いやすい観音開きのバックドアやスライドサイドドアなどを採用しているが、これが愛犬をドライブに連れていくにはもってこい。

愛犬家達の間でも評判で、それを受けてルノーでは荷室と後席を仕切るドッグネットや汚れても洗えるリアシートエプロンなど、ワンちゃん向けのアクセサリーも充実させている。

その他、自転車を積むにも適しているなど、多彩な趣味をサポートするモデルとしても重宝がられている。

商用車としてもキチンと造り込まれていることが様々なメリットをもたらしているのだ。こういったところに、フランスの合理主義的な考え方が表れていると言えるだろう。カングーを手に入れると、ライフスタイルが一気に華やぎそうな予感がするのはそのため。道具として使いやすい空間を持っているということも、自動車の大きな価値なのだ。

最後に付け加えておきたいのは、カングーは運転してみると意外と楽しいということ。加速が素早いとか、俊敏なハンドリングを持っているとか、そういったスポーツカー的な楽しみはないが、荷物を積んで走ってもフラフラしないようタフに仕上げられつつも、実にしなやかな乗り心地をみせる絶妙なバランスのサスペンションには、奥深い味わいがある。

付き合いが長くなればなるほど、離れがたくなるような不思議な魅力があるのだ。

カングー

車両本体価格:¥2,198,000(MT)
車両本体価格:¥2,298,000(AT)
排気量:1,598cc
最高出力:78kW(105ps)/5,750rpm
最大トルク:148Nm(15.1kgm)/3,750rpm

ルノー・コール TEL:0120(676)365
www.renault.jp
Kangoo クルール
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Kangoo イマージュ
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ブルーエトワールM
マロン ショコラM
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text:石井昌道/Masamichi Ishii
自動車専門誌編集部員を経てモータージャーナリストへ。国産車、輸入車、それぞれをメインとする雑誌の編集に携わってきたため知識は幅広く、現在もジャンルを問わない執筆活動を展開。また、ワンメイク・レース等への参戦経験も豊富。エコドライブの研究にも熱心で、エコドライブを広く普及させるための活動にも力を注いでいる。
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