東京エスプリ倶楽部 vol.9 大事なのは身体

アヘッド 東京エスプリ

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2017年に入って、ハイブリッド・カーに乗る機会が増えてきた。私が乗ったのは、日産ノートe-power、ホンダ・アコード・ハイブリッド、そして三菱アウトランダーPHEVの3台で、この3台には共通点がある。

text:今尾直樹 [aheadアーカイブス vol.174 2017年5月号]
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vol.9 大事なのは身体

vol.9 大事なのは身体

ハイブリッドといっても、エンジンが主でモーターが補助的な助けをするのではなくて、モーターが主役をつとめていることだ。エンジンはもっぱら発電を担い、黒子に徹している。モーター主体だから、運転感覚はどれも電気自動車(EV)に近い。

モーターはその特性上、最初の1回転から最大トルクを生み出す。いきなり最大トルクなので、いきなり速い。しかも電気モーターのようにスムーズなのである。当たり前ですけど。

私のEV初体験は三菱i-MiEVだけれど、記憶に残るのは2010年に乗ったテスラ・ロードスターである。ロータスに開発を託されたこのミドシップ電気スポーツカーは、ガソリン自動車とは異次元の加速、アクセルを緩めるだけで減速する不思議な感覚、ヒュイイインッというUFOが発するようなSF的ギアのサウンドでもって私を感激させた。

国産3車にもテスラと同種の感動があった。モーターがパワフルで、ようするに、いきなり速い。ただし、3台ともに電池が減ってくるとエンジンが始動し、そうなると明らかに加速が鈍る、ように感じられる。大きめのバッテリーを積んでいるクルマでも、山道で全開を繰り返しているとアッという間に電池がなくなる。

それなら、ゆっくり走ればいいじゃん、という優しさが私にはカケラもない。逆にエンジニア氏をつかまえてムチ打つようなことを言う。遅くなるのは電池のエネルギーがなくなるからですか? と確認した。

エンジニア氏はこのように説明した(と私は理解した)。エンジンがかかって発電し始めたからといって遅くなることはない。新幹線同様、等加速度運動だから速さを感じないのだ、と。でも、もしそうであれば、速さを感じるような、つまりガソリン自動車みたいな出力特性にモーターのトルクの出し方を変えたらどうでしょう?  そう食い下がった。

いや、アクセルを踏んだときにスッと前に出るほうが一般道では走りやすくて疲れない。テストでガソリン車と一緒に一般道を走ると、飛ばしたわけでもないのにいつの間にか20分ぐらい差がついて、EVのほうが早く戻ってこられる。だからモーターはモーターの特性を生かしたセッティングのほうがよいのである。

ははぁ、そんなものですか。

疑り深い私は、日本EV教の開祖、碩学の館内 端さんにこの件について質問した。

「エンジンよりモーターのほうが速いのは真実。ただし、モーターは電池がなくなってくると、すぐ加速が鈍る。電池がなくなってくると、電池自身が電気を流せなくなるから。自分の身体を大事にしなさい。イマオをイマオにならせているのはその肉体なんだから」

伝えたかったのは、EV云々ではなくて館内さんのこの言葉だ。自分の身体感覚を信ぜよ。

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text:今尾直樹/Naoki Imao
1960年生まれ。雑誌『NAVI』『ENGINE』を経て、現在はフリーランスのエディター、自動車ジャーナリストとして活動。現在の愛車は60万円で購入した2002年式ルーテシアR.S.。
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