LC500に見るレクサスの野望

アヘッド LEXUS LC500

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レクサスLC500で走り回った1日の最後に横浜でヨーコに会った。待ち合わせしたのだけれど、渋滞で遅れて1時間待たせた。ヨーコはどこにいるのか。髪の長い女だって。ここにはたくさんいるからね。ヨーコには3度会ったことがあるのだけれど、ちょっと前なら覚ちゃいるが、最後に会ったのはひと月前のことで、物覚えの悪いおいらはヨーコの顔を忘れちまったのだった。港のヨーコ、ヨコハマ、ヨコスカ……あ、横須賀ぢゃなくてみなとみらい地区なんですけどね。

text:今尾直樹 [aheadアーカイブス vol.176 2017年7月号]
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LC500に見るレクサスの野望

LC500に見るレクサスの野望

ヨーコに無事会えて、「送るよ」とおいらはいった。おいらのポケットにはレクサスLC500の日本刀のつか、というよりはナイフとか拳銃のグリップのような形状のキーがあった。借り物だ。で、ヨーコをLC500の駐車場まで案内しようと思った。

ちょっと前なら覚えちゃいるが、1時間もお茶していたから、物覚えの悪いおいらは駐車場所を忘れちまったのだった。港のヨーコ、ヨコハマ、みなとみらいの駐車場。

LC500の駐車場をようやく見つけてヨーコを乗せると、「ゴージャスね」と彼女は目を丸くしていった。真紅のグラマラスなボディにタンの内装。助手席にヨーコが座ったとき、レクサスLCのようなラグジュアリー・クーペに乗る男の心境というものをおいらは初めて知った。

女が女っぽくあることができるのは、女っぽいシチュエーションが許されるなかでのことなのだ。当たり前だけど。

「ローマの休日」のオードリー・ヘプバーンが超かわいいのは、ローマという舞台が背景にあるからなんである。「モテキ」の長澤まさみは超かわいいのに、「真田丸」のきりが超かわいいとは思えなかったのは戦国の世のならいというべきだったのではござらぬか。
「ラグジュアリーはいま転換期にある。所有よりも経験の方が大切である。ストーリー重視で豊かさの本質を表現する。驚きと感動をもたらすラグジュアリー・ライフスタイル・ブランドでありたい」

というような内容のことをレクサスの広報マンが語ったのは5月に開かれたLCの横浜試乗会でのことだった。

〝ラグジュアリー・ライフスタイル・ブランド〟ってナンノコッチャ? と思うわけだけれど、たとえば2013年に東京につくった「インターセクト・バイ・レクサス」なる、レクサスのエンスージアストが集まる交流の場としてのカフェを、ドバイに続いて、2017年の半ばにニューヨークにもオープンさせるとか、年初にフロリダで披露したレクサス・スポーツヨット・コンセプトなる高級ボート—レクサスのV8エンジンを2基搭載したこれを2020年までに商品化してマリン市場に参入するとかも、この戦略の一環と位置づけられている。

でもって、本年3月に発売となったLCである。5リッターV8を搭載する500と、3.5リッターV6+電気モーターのハイブリッドの500hからなるこれは、レクサスの今後を象徴するフラッグシップ・モデルとしてつくられた。

「よりエモーショナルなブランドとなるために、ブランドを象徴するラグジュアリー・クーペが必要だった」からである。そうレクサスの広報マンは率直に語った。そのために開発陣は理屈抜きにカッコいいデザインと、気持ちのいい走り、感性(に訴える)価値というものを具現化させなければならなかった。

喧伝されているように、LCは2012年のデトロイト・ショーに出品されたコンセンプト・カー、LF-LCのデザインをベースにしている。異様なほどロー&ワイドなスタイリングの量産化が実現できたのは、TNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー) の後輪駆動版というべき、のちに「GA-Lプラットフォーム」と紹介されることになる新プラットフォームの採用が決定したからだった。

これにより、フロント・ミドシップで低重心を強調したプロポーション、性能を追求したかたちをつくり出すことができた。

LCの開発陣は「より鋭く、より優雅に。素性のよいクルマづくりにこだわった」  世界の道で走り込み、アメリカ西海岸の「エンジェルス・クレスト・ハイウェイ」をマスター・ロードとし、もちろん富士スピードウェイ、ニュルブルクリンクでもテストした。

でもってレクサスは、助手席にオンナを乗せてのテストも繰り返したに違いない(筆者の妄想です)。カフェもヨットもクルマもインターセクトの場である。intersectとは、英語で「交わる」という意味である。

レクサスは現在、世界90ヵ国に展開されていて、昨年は67万台が販売された。日本国内は5万台で過去最高を記録。メルセデス・ベンツは6万7000台、BMWは5万台だった。

日本発のこのプレミアム・ブランドは米国市場や国内においてはベンツ、ビーエムと戦うだけの地力をつけてきているといえるわけだけれど、メルセデスの2016年の世界販売台数は208万台、BMWは200万台、アウディが187万台ということを知れば、レクサスの野望がもっと遠いところにあることがわかるだろう。

あんた、レクサスのなんなのさ。ちょっと前なら覚えちゃいるが……港のヨーコ、横浜、黄昏、ホテルの小部屋……。昭和歌謡、それではまた。

■LEXUS LC500
車両本体価格:¥13,000,000〜(税込、5.0ℓV8 L package)
*写真はLC500h。¥13,500,000〜(税込)
全長×全幅×全高:4,770mm×1,920mm×1,345mm
車両重量:1,960kg
エンジン:V型8気筒DOHC
排気量:4,968cc
最高出力:351kW(477ps)/7,100rpm
最大トルク:500Nm(55.1kgm)/4,800rpm
JC08モード燃費:7.8km/ℓ
駆動方式:後輪駆動

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text:今尾直樹/Naoki Imao
1960年生まれ。雑誌『NAVI』『ENGINE』を経て、現在はフリーランスのエディター、自動車ジャーナリストとして活動。現在の愛車は60万円で購入した2002年式ルーテシアR.S.。
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