MTオイルを換える

アヘッド MTオイル

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免許を取得してクルマに乗り始めた頃、当然ながらすべての操作がおぼつかなかった。ギアチェンジはギクシャク、クラッチ操作は乱暴。すべてが連携して動くベテランドライバーの動きとは違い、リズムに乗り切れていないことが誰の目にも明らかだった。するとクルマに詳しい先輩からこう言われたのだ。

text:橋本洋平 photo:長谷川徹  [aheadアーカイブス vol.174 2017年6月号]
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MTオイルを換える

MTオイルを換える

「そんな乗り方じゃクルマがかわいそう。せめてミッションオイルくらいはマメに交換して、クルマの負担を軽減してやったほうがいいぞ」と。

確かにその通りだ。エンジンオイルのようにフィルター(濾過装置)も持たず、ゴミをかき集めるのはドレンボルトに備わる磁石のみという構造だ。オイルを健全に保つには交換するしか方法がないと言っていい。

アドバイスに従いクルマの下に潜り込んでミッションオイルを抜いてみれば、たしかにオイルは汚れていた。サーキットを走った後だと、オイルが焼けたような匂いもしたし、ドレンボルトに備えられている磁石には、ヘタクソが乗った後だとハッキリ分かる、ギアやシンクロを削った鉄粉がギッシリとついていたのである。

それを綺麗にふき取り、新たなミッションオイルを手押しのポンプで再びミッションに送り込む。これがまたとにかく硬い。エンジンオイルのようなサラサラ加減とは違い、とにかくネットリ。ストーブなどでオイル缶を温めてから交換作業を開始すれば幾分マシになるらしいが、短気だった僕はそうせず、だからこそ硬いポンプと格闘したのだ。

その甲斐あってオイル交換を終えた愛車のシフトは、とにかく滑らかだった。まさに滑り込むようにスッと吸い込まれて行くからたまらない。シフトする歓びを堪能でき、いつしかシフトワークも上達した。

クルマにはエンジンオイルやデフオイルなど他にも交換すべきオイルがあるが、これほど交換した恩恵を受けられるものは他にない。一方でちょっとでもオイルがヘタり始めるとそれが体感できてしまうのもミッションオイルだ。いつしか、シフトフィールがちょっとでもシブくなると即座にジャッキアップを行い、マメに交換する習慣がついてしまった。

いまでは自らミッションオイルを交換するほどの元気はなくなってしまったが、オイル管理に対する姿勢はレース車両でも街乗りのクルマでも変わってはいない。それは愛車を大切にする気持ちと、心地よいシフトフィールを失いたくないからだ。

2ペダルが大半を占めるこのご時世にあってマニュアルミッションのクルマを愛するような人ならば、マメなミッションオイル交換は義務ではないかとも思う。それは愛車との対話性を深めるため、そしてクルマを上手く操るためにも必要なことだ。

エンジンオイルは拘るのにミッションオイルは無頓着になりがち。フランスのオイルメーカー“トタル”ではトヨタ・86、スバル・BRZ、インプレッサ、マツダ・ロードスター(NA~ND)などのFR車用に「Transmission TX 75W90」、スズキ・スイフトスポーツ、ホンダ・インテグラ、シビック、S660などのFF車用に「ZZ-X Transmission FF 75W80」と、推奨オイルが設定されている。またFR車のリアデフには「ZZ-X Transmission FF with LSD 80W90」が適合するなどラインアップも豊富。詳しくはHPまたはオートバックス店頭でチェックしてみてほしい。www.total-lub.jp

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text:橋本洋平/Yohei Hashimoto
自動車雑誌の編集部在籍中にヴィッツ、フォーミュラK、ロドスターパーティレースなど様々なレースを経験。独立後は、レースにも参戦する“走り系モータージャーナリスト”として活躍している。走り系のクルマはもちろん、エコカーからチューニングカー、タイヤまで執筆範囲は幅広い。「GAZOO Racing 86/BRZ Race」には、84回払いのローンで購入したトヨタ86 Racingで参戦中。
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