その駐車、必要ですか 〜障害者等用駐車場を巡って

アヘッド 障害者等用駐車場

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ショッピングセンターやパーキングエリアに設定された車椅子マークの駐車スペース。これに関して、ネット上で大論争が起こったことがあるのをご存知だろうか。

text:今井優杏 [aheadアーカイブス vol.179 2017年10月号]
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その駐車、必要ですか 〜障害者等用駐車場を巡って

その駐車、必要ですか 〜障害者等用駐車場を巡って

発端は健常者がこのスペースに駐車をしたことの是非を問うものだったのだが、論点は「ではあのマークは誰のためのものか」「車椅子使用者だけのためのものなのか」「歩行困難者は含まれるのか」「ロフスト杖(腕で支える杖)使用者はどうか」「妊婦は含まれるのか」にまで波及し、現在もおそらく収束していない。

何故ならば、この車椅子マークの駐車場、国土交通省では「障害者等用駐車場」とするこのスペースに駐車する人の定義がはっきりと定められていないためである。しかし、ここでは誰が停めていいのか、とかその法の未制定へのもどかしさに言及したいのではない。
例えば欧米各国では「パーキングパーミット」という制度があり、ハンディキャップ用駐車場にクルマを停めるためには州(またはそれに順ずる自治体)に申請して許可証を得なければならず、その許可証がないままに停めてしまうと数万円(約200〜500ドル/アメリカの場合)の罰金を支払わなければいけない、というシステムがある。

このパーキングパーミットは日本でも導入している自治体が増えていて、日本で利用証の交付を受ければ他府県はもちろん、アメリカの多くの州でもそのまま利用できるようにもなっている(各州の制度による)。もちろんこれでもまだまだ完璧とは言えず、改善点も多く叫ばれているのだが、取り組みは始まっている。しかし、このシステムが欧米のように完璧に普及するには膨大な時間がかかるだろう。

だから、その前に法よりもなによりも知識として覚えておいて欲しいのは、こういう法整備が必要とされるくらいに曖昧な場所に対して、障害者等用駐車場をどれほど強く必要としている人がいるかを知る、ということだ。

例えば、ほとんどの障害者等用駐車場は広いスペースが取られている。何故か。車椅子利用者が乗降する際にはドアを全開にしなければならず、それだけの面積が車椅子から自動車への乗降に必要だからだ。あの空間がなければ、乗降が出来ないためだ。

そんなところに「近いから」「満車で他に空きがなかったから」と言う理由で「ちょっとくらいならいいだろう」なんていう軽い気持ちで駐車しては「いけない」ということを、もっと把握して認識する必要がまずあると私は考えている。
※駐車場で見かけるあの車椅子マークは世界共通のもので、正式名称は「国際シンボルマーク」。車椅子や足の不自由な人だけではなく、障害を持つ人々が利用できる建物や施設であることを示す。障害者等用駐車場が普通の駐車場と異なる点は2つ。ひとつは横幅が3m以上と広いスペースが取られていること。そして動線に配慮し、建物の入り口付近に設置されているという点だ。この便利さを享受したいという心ない一部の人たちによって、本来利用できるべき人たちの外出が妨げられている。
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text:今井優杏/Yuki Imai
レースクイーン、広告代理店勤務を経て自動車ジャーナリスト。WEB、自動車専門誌に寄稿する傍らモータースポーツMCとしての肩書も持ち、サーキットや各種レース、自動車イベント等で活躍している。バイク乗りでもあり、最近はオートバイ誌にも活動の場を広げている。

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