モタスポ見聞録 Vol.1 GT3とは何か

アヘッド GT3

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世界のレースシーンで「GT3」が活躍の場を広げている。日本も例外ではない。鈴鹿サーキットを運営するモビリティランドは3月4日、2018年8月から「鈴鹿10時間耐久レース(仮称)」を開催すると発表した。鈴鹿サーキットでは'66年から「鈴鹿1000km」が行われており、'06年からはスーパーGTの一戦に組み込まれている。鈴鹿10時間はその後継イベントで、「世界中のGT3にGT300を加え、世界一を決める」のがコンセプトだ。では、GT3とはいったいどんな車両なのだろうか。

text:世良耕太 [aheadアーカイブス vol.173 2017年4月号]
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Vol.1 GT3とは何か

Vol.1 GT3とは何か

▶︎2012年にデビューした日本初のGT3であるNISSAN NISMO GT-R GT-3に続き、2014年に発表され、地道な開発を続けてきたLEXUS RC F GT3が今年から本格的にレース参戦する。国内では、スーパーGT 300クラスに2台がフル参戦する予定。これらは国産車とはいえ左ハンドルとなる。


国内最高峰のスーパーGTはGT500とGT300にクラスが分かれている。トヨタ(レクサス)、ホンダ、日産/ニスモが参戦するGT500は、車体骨格(モノコック)を始め、ギアボックスやブレーキなどが共通部品に指定されており、改造範囲は狭い。空力の開発エリアも限定 されている。全車、独自開発の2ℓ・直4直噴ターボエンジンを搭載する決まりだ。

GT300はJAF-GTとGT3に分類できる。JAF-GTは日本独自の規格で、改造範囲が広いのが特徴だ。例えば、プリウスのボディなのに3.4ℓ・V8自然吸気エンジンを車両ミッドに搭載した参戦車両が存在する。ベース車両の車体骨格は用いなくてもいい。

一方、GT3はF1やWEC、WRCなどの世界選手権を統括するFIAが定める国際規格で、改造範囲が限定されているのが特徴。2010年代前半にはGT1やGT2という規格が存在したが、車両の高コスト化などが原因でエントリー数が減り、消滅。相対的に車両コストが低いGT3に人気がシフトし、現在に至っている。

GT3はGT300やJAF-GTとは異なり、ベース車両の車体骨格を用いる決まりだ。エンジンはベース車両が搭載するユニットを積むのが基本。極端に速いクルマや遅いクルマが出ないようにするため、車重やエンジンの出力、空力性能を一定の範囲に収めなければならない。

例えば、軽いクルマの出力は低くしなければならず、重いクルマは出力を高くできる。また、空気抵抗が大きいクルマは、ハンデを帳消しにするため出力を高くできるといった具合だ。

JAF-GTはスーパーGTでしか走れないが、GT3は汎用性が高く、それが世界中で人気を呼んでいる理由だ。日本ではスーパーGTとスーパー耐久に参戦が可能。アメリカではデイトナ24時間を含むIMSA、ヨーロッパではブランパンGTシリーズやニュルブルクリンク24時間が主戦場だ。

これらのシリーズでは、プロとアマチュアが組んで走ることが多い。そのため、GT3はピークの性能を追い求めるのではなく、扱いやすい性格に仕立てられている。その点も、人気を集める理由。

今年はレクサスRC F GT3がアメリカと日本でデビュー。アキュラNSX GT3がアメリカでデビューし、GT3のラインアップがさらに充実した。しばらくはGT3人気が続くだろう。

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text:世良耕太/Kota Sera
F1ジャーナリスト/ライター&エディター。出版社勤務後、独立。F1やWEC(世界耐久選手権)を中心としたモータースポーツ、および量産車の技術面を中心に取材・編集・執筆活動を行う。近編著に『F1機械工学大全』『モータースポーツのテクノロジー2016-2017』(ともに三栄書房)、『図解自動車エンジンの技術』(ナツメ社)など。http://serakota.blog.so-net.ne.jp/
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