ツライチOKの保安基準

ツライチ

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見えるか見えないか、オトコはそんなところに心惹かれる。見えてしまっては台無し。ギリギリを突くチラリズムがたまらない。コレ、決して女性のスカートの丈の話じゃない。タイヤとフェンダーの位置関係のお話。平たく言えばツライチか否かということだ。

text:橋本洋平 [aheadアーカイブス vol.177 2017年8月号]
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ツライチOKの保安基準

ツライチOKの保安基準

つい先ごろ道路運送車両の保安基準が改正となった。

概要は以下の通り。

自動車が直進姿勢をとった場合において、車軸中心を含む鉛直面と車軸中心を通りそれぞれ前方30°、後方50°に交わる2平面によりはさまれる範囲の最外側がタイヤとなる部分について、外側方向への突出量が10㎜未満の場合には、「外側方向に突出していないもの」とみなすとある。

ただし、くれぐれも注意したいのは、突出して良いのはタイヤだけ。ホイールのリムが飛び出してはならない。

これは輸入車や一部国産車において、タイヤとフェンダーのツライチ具合を追求するあまり、後方部分が一部突出しているクルマがあった。その対策としてメーカーは日本の保安基準に合わせるべく、小さなヒレのような小ぶりのフェンダーを追加して対策していたのだ。

つまり、これからはそんな無駄なことをすることもなくリリースが可能となり、コストも時間もデザイン自由度も高まることになる。
だが、保安基準の変更を喜んだのは、なにもメーカーやインポーターだけの話ではない。ツライチを探求し続けるチューニング大好きな人間もそのニュースに心を躍らせた。

なぜなら、この保安基準の変更はこれからリリースする新型車だけに適用されるわけじゃなく、これまで販売されたクルマにも適用されるからだ。

かつて僕もそんなツライチを追い求めたことがある。純正のホイールインセットがいくつで、フェンダーの外側まではこれだけ余裕があるから、ホイールインセットはこれくらいにしてみよう。

それでタイヤがフェンダー内側に当たるようであれば、フェンダー内側のツメを板金して織り込むか、それでも基準が満たせそうにないようであればオーバーフェンダーを追加するか……、という具合である。

そのコストと手間は果てしなく、いま思い返せば計算というより現物合わせ的なものだったが、苦労の甲斐あって仕上がった愛車はいつまでも見ていたいほど愛おしい姿だったことを記憶する。

一体なぜあそこまで情熱を燃やすことができたのか? それはやはりチラリズムの探求であり、オトコの本能のようなものだった気がする。

きっと今回の保安基準の見直しによってアフターパーツ業界も息を吹き返すのではないだろうか? ワンサイズ太いタイヤを入れてみるか? それともホイールを買い替えてみるか? スペーサーを追加してもっとギリギリを突いてみるか? ワクワクしてくる朗報なのである。
簡単に説明すると、従来は、右図の着色されたタイヤ部分が真上から見て、いっさいはみ出してはいけなかったのだが、今回の保安基準の変更により、10㎜未満ならはみ出しても構わないということになった。

但し、はみ出しが許されたのはタイヤだけでホイールのはみ出しは認められない。図の左、写真のフェンダー後部の突起は、日本仕様だけに付けられた“ヒレ”。今後は無くなっていく可能性が高い。

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text:橋本洋平/Yohei Hashimoto
自動車雑誌の編集部在籍中にヴィッツ、フォーミュラK、ロドスターパーティレースなど様々なレースを経験。独立後は、レースにも参戦する“走り系モータージャーナリスト”として活躍している。走り系のクルマはもちろん、エコカーからチューニングカー、タイヤまで執筆範囲は幅広い。「GAZOO Racing 86/BRZ Race」には、84回払いのローンで購入したトヨタ86 Racingで参戦中。
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