埋もれちゃいけない名車たち vol.68 本当の名車になれるか、ユーストカー市場に期待「フォルクスワーゲン・New Beetle」

アヘッド VW ニュービートル

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今回の巻頭特集のテーマの中にある〝世代〟という言葉を目にしてふと思ったのは、〝いかなる世代に対しても説得力を持つクルマがあるとするなら、それこそ名車中の名車だろう〟ということだった。……さて、果たして存在するものだろうか?

text:嶋田智之 [aheadアーカイブス vol.184 2018年3月号]
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vol.68 本当の名車になれるか、ユーストカー市場に期待「フォルクスワーゲン・New Beetle」

vol.68 本当の名車になれるか、ユーストカー市場に期待「フォルクスワーゲン・New Beetle」

単一のモデルとして考えると難しいものがあるかも知れない。が、同じ名前を持ったひとつのシリーズとしてなら、いくつかありそうだ。例えば連綿と作り続けられているポルシェ911、偉大なる御先祖様とその世界観を再現したり拡大したりした新旧フィアット500や新旧ミニは、間違いなくそこに入る。

では、500やミニと並ぶ存在のフォルクスワーゲン・ビートルはどうか。1938年から半世紀以上にわたって生産された初代ビートルにも、同じ名前の同じイメージを持った心情的後継が存在する。1998年デビューのニュー・ビートルと2011年からのザ・ビートルだ。だが、ザ・ビートルは2019年で生産中止になることが発表されている。

ニュー・ビートルの登場はセンセーショナルだった。1994年発表のデザイン・スタディ的コンセプトカーとそれを現実的にした1995年のコンセプトカーが世界中で大好評となり、市販が決定した。ニュー・ビートルは望まれて世に出たのだ。

ルックスは初代ビートルの愛嬌ある姿を大幅にモダナイズさせたといえるもので、インテリアも大きな円形メーターやダッシュボードに備える一輪挿しなど、初代の持つ魅力的なモチーフを巧みに採り入れていた。注目度も高く、発売と同時に人気モデルとなった。中身はゴルフと同じだから基本性能も悪くなかった。

が、次第に尻すぼみとなり、いつしか話題に上らなくなり、2011年にフルモデルチェンジ。次のザ・ビートルはワイド&ローの新たなスタイリングを得、基本性能も上がったが、ニュー・ビートルのときのような話題にはならなかった。

新しい500は10年が過ぎても売れ続けている。新しいミニは巧みに発展を続け、常に人気モデルだ。それはかつての名車の楽しい世界観を上手に今に伝えていること、メーカー側が常に施策を練り続けてきたことが大きい。ならばビートルは?残念だが、今ひとつ思い浮かばないのだ。

初代ビートルも世界中で愛されて、様々な楽しみ方がなされたモデルだった。ニュー・ビートルもそうなる要素はあった。けれど、メーカーとしてそこを活かさなかったのだ。

今、ニュー・ビートルはカブリオレも含め、ユーストカー市場では相当にリーズナブルだ。それを手に入れて持ち味を活かした楽しい乗り方をするユーザーがもっともっと増えれば、ニュー・ビートルに対する見方も変わっていくだろう。人が創り上げるのも、また名車なのである。

フォルクスワーゲン・New Beetle

フォルクスワーゲン・ニュー・ビートルは、同社が生んだかつての国民車であるビートルこと“タイプ1”をモチーフに生み出されたスペシャルティ・モデル。日本では1989年に発売開始。エンジンは当初は2リッター、2004年からは1.6リッターが追加された。また2003年にはカブリオレが追加され、そちらは2リッターのみの導入だった。

小型車のベンチマーク的存在であるゴルフをベースに開発されたため、走りのテイストはゴルフに似たマジメで良好なものだった。2010年に生産中止、翌年に後継のザ・ビートルが登場する。

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text:嶋田智之/Tomoyuki Shimada
1964年生まれ。エンスー系自動車雑誌『Tipo』の編集長を長年にわたって務め、総編集長として『ROSSO』のフルリニューアルを果たした後、独立。現在は自動車ライター&エディターとして活躍。
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