妥協と無縁のポジティブな中古車選び

アヘッド 妥協と無縁のポジティブな中古車選び

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最近、住宅の世界ではリノベーションという言葉をよく聞くようになりました。
旧い住宅に大規模な改修を加えて、従来以上の価値を見出そうとするものです。

そうして周囲を見渡してみると、洋服のリフォームも、靴のリフォームも、
ビフォアー・アフターを見比べてみると、もはや「修理」というイメージからは
かけ離れ、ブランニューに生まれ変わったりしています。

では翻って、クルマの世界はどうなっているのでしょう…?
中古車の世界にも詳しい嶋田智之さんにお話を聞いてみました。

text:嶋田智之 [aheadアーカイブス vol.133 2013年12月号]
Chapter
中古車は不安?
嶋田智之さんが選ぶ おススメの中古車
Part1「初めての輸入車、第一歩を果たす」
Part2「思い切り違う自分になる」

中古車は不安?

———周囲の女性の中には「30万円以上のクルマを買ったことがない」と中古車を乗り継いできたツワモノもいますが、中古車を敬遠する人も多い。後者の場合、誰がどういう風に乗っていたか分からない、古くて壊れるかもしれない、といった不安を感じている人が大半のように思います。嶋田さんは中古車もたくさん乗ってこられたと聞いていますが、実際のところ、どう思われますか?

嶋田 それだけで中古車を嫌うのはもったいないですよ。中古車まで含めるとチョイスの幅がグッと広がるのに。確かに気に入ったクルマを新車で買えるならそれに越したことはないですけど、厳密に言えば、新車だって乗り始めた時点でもう中古車になるわけだし、新しくたって壊れるときは壊れます。

それに「素性も知れない」という気持ちは、分からなくはないんですよ、もちろん。でも、どこの誰が乗っていたか分からないから気持ち悪いというなら、クルマをまるごとクリーニングしてもらったらどうでしょう。専門の業者にお願いすれば、内装もほとんどまっさらにしてくれますし、シートを外して洗浄してもらうこともできます。革のシートでひび割れなどが気になれば、補修に加えて、好きな色にカラーリングもしてもらえるんですよ。最悪、張り替えてもらうこともできる。そのくらい今は業者にお願いできることが多様化してるし、それぞれの技術も進んでいます。ハンドルが気になるなら、新しいのに取り替えればいい。「気持ち悪い」は思っているよりも簡単に払拭できるはずです。外装についても同じ。全塗装も、もちろんクオリティを追求することもできるし、またインターネットなどで探せば格安で受けてくれるところもあります。ホイールのガリ傷だってなかったことにもできます。

それに今は商用車などに見られるように、ラッピングの技術が進んでいます。部分的に自分の好きな色にしたり、1台まるごと色を変えることも以前より気軽にできるようになっています。いろいろと方法がある、ということをまずは知っていただきたいですね。

———なるほど。では機能面ではどうでしょうか。

嶋田 クルマの〝がた〟が一番分かりやすく出るのがサスペンションだと思うんですが、これはディーラーなどで、ダンパーとコイルスプリング、ゴムブッシュ類を交換してもらえば、新車に近い乗り心地がよみがえります。時代を反映して能動的に中古車をしっかり扱う整備工場やメカニックも数年前と較べて増えてきているので、以前より中古車に乗るための環境は随分整っていると思いますよ。

ただ、新車よりもほんの少し積極的にクルマに関わらないといけないのもまた事実です。そういう意味では誰にでも勧められるわけではないかも知れないけど、クルマが好きでクルマのある生活を送りたいという人なら、それも含めてのカーライフと思うようにするべきなんじゃないでしょうか。中古車の方がよりクルマに近寄れるとも言えますね。まずは良い販売店とか整備工場を探すといいと思います。

———しかし…それがなかなか難しい。

嶋田 みんなそう言いますが、でもこれまで30年、40年、50年と人生を積み重ねてきているわけだから、たとえクルマを見る目に自信がなくても、人を見る目はあるはずです。この人から買うのはイヤだと思えば買わなければいいし、この人に整備を任せるのはイヤだと思えば、他を探せばいい。心から信頼し合えてる友人だっているでしょう? 人のネットワークは自分のネットワークみたいなものなんだから、紹介してもらって会いに行って、それで決めればいい。クルマとしては、例えば30万円という金額は小さいかもしれないけれど、日常生活のレベルで見れば大金です。だからお金を掛けないなら手間暇と時間を掛けてでも〝納得〟を探すことが大切です。

———今のお話はそれこそ、納得です。

〝安い〟から中古車、
ではない。

———インターネットの中古車情報を検索してみると、さまざまな中古車がアップされています。さて、この中からどうやって選べばいいのか…。

嶋田 それは、根っこの部分では新車も中古車も変わらないと思いますよ。誰しも「こういうクルマが欲しい」という、クルマに求めるテーマみたいなものが先にあるはず。例えば、エレガントに乗りたいとか、実用的だけどオシャレじゃなきゃイヤとか、堂々としてセレブに見えるクルマがいいとか。ただ、それを新車で叶えようとすると、多くの場合、大幅に予算をオーバーしてしまうことになりがちですよね。予算がふんだんにあれば、新車を買えばいい。でも、なかなかそうはいかない。そこに中古車を選ぶ意味が出て来るんです。だって10年、15年前のクルマに遡って自分の好みに照準が合わせられるわけですから。

———仮に独身の女性が「かっこいい自分に見られたいから、思い切ってオープン2シーターに乗りたい」というテーマがあったとして、新車なら…これはかなり高価な買い物になりますね。BMW「Z4」で499万円から、アウディ「TTロードスター」で543万円から、マツダ・ロードスターでも233万円から。

嶋田 そうですね。でも中古車なら、例えば初代のメルセデスSLKだったら50万円くらいから探すことができるんです。でもね、ただ安いからいいというだけではないんですよ。今のSLKはサイズが大きくなりすぎてるし、スタイリングにもSLとかの上級メルセデスへのコンプレックスが見え隠れしてる、という見方がある。「〜が買えないから…」というやや消極的な理由で選ばれることがあるんですが、でも、初代にはそれがない。もともとSLの持つ世界観をぎゅーっと凝縮してコンパクトにまとめたクルマで、肩肘張ってるような頑張っちゃった感がない。そのうえ登場から年月が経って脂っこさも抜けてて、そういうところを超越してる感じがある。好きで乗ってるんだな、って周りからもストレートに見てもらえそう。

あとは、アルファロメオのスパイダーのように、誰もが憧れるクルマに乗れるのも中古車のいいところですね。新車のときには400〜500万円くらいしましたが、今の相場ではびっくりするくらい安くなっています。具体的には1995〜2006年まで生産された2代目スパイダーの2ℓツインパークスがおススメです。エンジンのサウンドが美しいし、鼻先が軽いからハンドルを切ったときにすっとノーズが入って行く。走っていて楽しいんです。ただし実用性は全くない。でもスポーツカーはそういう不便も含めて楽しむのがいいと思うんです。

それにかっこいいでしょう? 

「何乗ってるの?」「アルファロメオ」「アルファロメオの何?」「スパイダー」って。クルマは自己演出のツールでもあるのだから、そういうのもすごく大切だと思います。

年式が古くて不安な人は、少し新しい年式のものにすればいい。そこは予算との相談です。いずれにしても、100万円の車両に、100万円掛けて手を入れたとしても、同じカテゴリーの新車を買うより断然リーズナブルということも多々あるんです。

さらに付け加えれば、例えば真っ赤なボディに、ミラーだけ黄色くしたらかわいいなと思っても、新車だともったいなくてとてもいじれないけど、中古車だとためらいなくできたりする。だから自分のイメージ通りのクルマに仕立て上げるには中古車の方が良かったりしますね。

———〝安いから中古車〟ではないんですね。中古車だからこそ、自分を表現できたり、奥深いクルマの世界に触れられたり、クルマに近づけたり、冒険できたりもする…。中古車の世界には無限大の可能性があるということが分かった気がします。

嶋田 もちろん本人次第ではありますけど、あらゆる意味でクルマ生活に深みが増すのは確かだと思います。むやみに敬遠せず、リサーチしたり考えたりしてみて、できればぜひチャレンジしてみて欲しいと思いますね。

嶋田智之さんが選ぶ おススメの中古車

ひと言で中古車といっても、突き詰めていけば話は多方向に広がる上にディープな世界ではあります。例えば購入するにあたっての賢い進め方みたいなものもあればタブーのようなものもありますし、購入してから可能な限り積極的にしておく方がベターなことに関するノウハウみたいなものも存在します。が、残念ながら今回はそうした諸々に言及することはできず、少しばかり心苦しく感じていたりするところはあります。

今回はあくまでも皆さんがこれまでおそらくあまり触れてきたことのなかった個性豊かな中古輸入車について、“こういう世界もある”ということを知っていただくことが第一目的。車両本体の相場価格で考えられるオススメの車種を、価格帯別に並べてみました(諸経費を加算したものではありません)。

新車購入とは異なるリスクが多少なりともあるのは確かです。が、初期投資としては圧倒的に安価であるのも事実です。賢く選び賢く維持すれば相対的にリーズナブルで楽しい自動車生活が過ごせるということを、僕は経験で知っています。

案ずるより産むが易しではありませんが、垣根はそう高いものではありません。まずは関心を持っていただいて、想像の中で御自身を遊ばせることから始めてみてください。

(嶋田智之)

Part1「初めての輸入車、第一歩を果たす」

今や輸入車であっても低予算で買える中古車はたくさん。新車ですら日本車との価格差が縮まってるのだから当然ですね。けれど初めてなら、やはり信頼性と維持のしやすさが重要でしょう。となると、ドイツ車が最適かも知れません。

50万円 フォルクスワーゲン・ゴルフ(ゴルフ5)

最もオススメできるのは問答無用でゴルフです。同世代のライバル達と較べてあらゆる面で常に一歩抜きん出ている優秀なクルマであり、使い勝手もよければ走りも活発、経済性にも優れてるという面が前提としてあるのはもちろんですが、一番の理由は車体の作りがとにかく堅牢で車齢を重ねても比較的衰えが少ないという点。それに世界のベストセラーカーである、ということは信頼性が高いことの証明でもありますね。実直な秘書課のクルマなので面白みに欠けるともいえますが、平均点の高さとシンプルな装いには飽きがこないのも確か。そろそろ2003〜2009年の第5世代が射程距離です。

100万円 アウディ・A3スポーツバック (2代目A3)

フォルクスワーゲンの姉にあたるポジションにいる上級ブランドがアウディであり、ゴルフの年上の従姉妹みたいな存在がA3でしょうか。基本的なメカニズムはゴルフと共通ですが、全般的に1枚ウワテな存在であることが求められ、それを成し遂げているモデルです。そもそもA3のコンセプトは“小さな高級車”。例えばインテリアのアウディらしい上質感やクオリティの高さはA4など上のモデル達と何ら変わらず、ゴルフを大きく凌ぎます。実用一本なゴルフと異なり、気品や色気のあるルックスを持つのも美点です。スポーツバックは普通の5ドアハッチ以上ワゴン未満のショートワゴン。使い勝手の良さと生活感のない小股の切れ上がった感じが魅力です。

150万円 メルセデス・ベンツCクラス (2代目のW203、最後期)

メルセデスにだって楽々手が届きます。高級車の代名詞のようにいわれがちですが、メルセデスは何も高級なモノを作ろうとしてるわけではなく、自動車という道具として最良のモノを目指しているのみ、その結果が新車時の高価な値付け。つまり高級車というより最高品質車と呼ぶべき存在です。なのでセダンとして最も親しみやすいグレードの“C”も、同じクラスのライバル達に引けを取る部分はありません。何より良い道具は使っているだけで気分がいいものです。いや、理屈はどうでもいいですね。メルセデスはメルセデス。それだけで選ぶ理由になりますゆえ。ちなみに、いかつい初代や3代目より、エレガントな雰囲気の2代目が個人的にはオススメです。

Part2「思い切り違う自分になる」

かっこいい自分に

かっこいい自分でいるために必要なのは、ホントは道具じゃなくて“生き方”。
ならば生き方が変わるくらいドラマチックなクルマを選ぶのがいいかも知れません。ひとつ覚悟を決めて、スポーツカーなどいかがでしょう?

50万円 フィアット・バルケッタ

どんな通りでも小気味良く駆け抜けていけそうな、小さくてスタイリッシュなスポーツカー。それも気分次第で大空と向かい合い、風と触れ合えるオープンエアモータリング。そういうクルマを気負わずサラッとアシに使ってる女性は、男から見たら無条件でかっこよく感じられます。相棒と呼びたくなるクルマ達の中で、最も安価なのは、“小舟”の名を持つイタリア生まれのこのクルマ。マニアには知られた存在でも一般認知は高くないのが安価の理由です。でも、走りは思わず笑みが浮かぶほど。元気よく加速し、スパンと曲がります。スレンダーなフォルムはコンパクトで扱いに困ることもない。よくできたスポーツカーなのです。ただし激安車は車体の状態に注意して。

100万円 アルファ・ロメオ・ スパイダー(2代目/916型)

手頃な価格帯で手に入れられるオープンスポーツカーの中で、いや、数多あるオープンスポーツカーの中で、最もアーティスティックなスタイリングを持つクルマの1台といえるのが、この時代のアルファ・スパイダー。幌を閉じた姿まで美しいそのデザインには、生産中止から8年経った今もファンが多いのです。が、この官能的な雰囲気に似合う男性は僅か。不思議と女性に似合うのです。異なるふたつの女性性が互いを引き立て合うのかも知れません。この時代のスパイダーは、エンジンのサウンドもデザインされてるかのように美しい音色を奏でます。飛ばさなくても気持ちいいスポーツカーなのです。そうしたゆとりは女性をさらに美しく見せるのでしょうね。

150万円 フォード・マスタング・ クーペV6(6代目)

日本では昔からいわゆる“アメ車”、それもスポーツ色の強いマッスルカー系は男の乗り物であると決めつけられてきたようなところがあります。それも“ワル”のアイテム、みたいに。けれど、そうしたいかついクルマほど女性が転がしてかっこよく見えるモノはありません。ワルな感じで乗ると馬鹿な男の後を追ってるように見えるので、凛と知的な雰囲気、あるいは明るくスマートなカジュアルで。現行のマスタングもV6の初期モノならターゲットになりつつあります。日本では大柄ではありますが、見た目から想像するより遥かに乗りやすく快適なクルマです。力もそこそこあってロングドライブも苦にはなりません。か弱いばかりがオンナじゃない、でしょ?

エレガントな自分に

“エレガンス”が似合うのは、男性よりも圧倒的に女性。いわば女性の特権みたいなものでしょう。伝統か、必然か、造形か。
女性のエレガンスを引き立ててくれるクルマを、イメージ優先で選んでみることにしましょう。

50万円 クラシック・ミニ

歴史と伝統が上手に育んできたクラシカルな雰囲気は、時として驚くほどのエレガンスを放ちます。といって本格的なクラシックカーは荷が重い。ならばデビューこそ1959年と旧いものの2000年まで生産され続けた、クラシック・ミニはいかが? 全長3m、全幅1.4mの小さな車体は、大きなクルマばかりの現代の路上においては、それだけで小粋に見えます。基本メカニズムは古いけど機械としては熟成されていて、メンテさえ怠らなければそう壊れるものでもありません。運転にクセはありますがすぐに慣れますし、なにより走らせる楽しさはスポーツカー並。最初から古臭いので飽きも来ません。そろそろ安価なミニは少なくなってきました。ラストミニッツです。

100万円 メルセデス・ベンツ CLK(2代目)

メルセデスには押しの強い顔をしたモデルが多く、好嫌分かれるところです。またセダンやワゴンはビジネスライクな印象で、華やかさには欠けています。が、クーペになるとガラッと異なるのがメルセデスの面白さ。目的に対してどうあるのが最良か、そこに拘るメーカーであるがゆえ、です。CLKはメカニズム的にはCクラスとEクラスのいいとこどりみたいなもの。基本性能や快適性に疑いの余地はありません。そして美しくエレガントなフォルムとの組み合わせ。間違いなくひとつのベストチョイスでしょう。それも穏やかなのに端正なバランスのいい顔立ちを持つ2代目なら、多少古くなって乗り続けても「好きだから」で周囲がすんなり納得してくれそうです。

150万円 アルファ・ロメオ159

ちょうど今のタイミングで最も美しく感じられるセダンはどれだろう? と、頭を捻らせるまでもなく姿が浮かんでくるのが、このアルファ159。キリッとしてるのにコワモテではない端正な顔立ち、4ドアセダンでありながら生活臭の全くしない少々官能的なボディラインと面の張り、全身から漂ってくるモード系のエレガンス。見てるだけでドキドキしてきますね。2011年の生産終了後、これを超える洒落者セダンはまだ1台も生まれてきてないように思います。しかもアルファロメオですから走りの質は抜群によく、素直にスムーズに曲がってくれるハンドリングは感動モノ。セダンとしての実用性もまずまずです。日常使いできる非日常系の存在感がいいですね。

元気な自分に

人間、ただ生きてるだけでも結構きつい。女性であれば、なおのことでしょう。
だからこそワクワクできる御褒美のような時間って大切だと思うのです。それが元気のタネ。パートナーにはこんなクルマがふさわいしかも。

50万円 アルファ・ロメオ147

静かなクルマやそこに個性のないクルマに乗ってると気づかないものですが、エンジンの回転する音が心地好いと、人間、自然と気持ちに活力が生まれてくるものです。その点ではアルファ147が積むツインスパーク・エンジンの右に出るモノはなかなかありません。かのフェラーリが4気筒のエンジンを作ったらこんな? とすら感じられるほどの快音なのです。ちょっとした買い物すら、このクルマでは最高の気分転換。そんなクルマはそうあるものじゃありません。しかも穏やかでハンサムな顔立ちに生活感のないスタイリングデザイン。役割としては実用ハッチなのに、スポーティな走りにも存分に応えてくれる熱いヤツ。これ、実はかなりの名車なのです。

100万円 ニューミニ・ コンバーチブル(初代)

ゴーカートみたいにパキパキと曲がってくれるフットワークの軽さに、スイッチひとつで大きなソフトトップがガバッと開いてくれる開放感。愛らしいスタイルと爽快な走りが楽しい気持ちにさせてくれるミニにオープンエアモータリングの醍醐味をアドオンしたコンバーチブルは、毎日の暮らしの瞬間瞬間をアトラクションに変えてしまう小さな魔法使いのようなもの。このクルマで楽しくないなら、きっと何に乗っても楽しさは感じられないんじゃないか? と思うくらいです。ひとりで走っても楽しいし、気の合う仲間4人フル乗車で週末旅行に出るのも楽しいし。どんなつきあい方をしても、このクルマはきっと元気を山盛りに分けてくれるはずです。

150万円 フィアット500

楽しいから笑顔になるのか、笑顔でいるから楽しくなるのか。ニワトリかタマゴかの話みたいですが、どっちも然りなのだと思います。このクルマを見てください。ほら、笑っちゃってるでしょ? 思わずこちらもつられて笑っちゃったりしませんか? すべての人を微笑ましい気持ちにさせるイタリア生まれのヤンチャ坊主。乗り心地もフツーに快適だったり荷物もそれなりに積めたりと実用性の面でも見た目以上に活躍してくれますが、何よりもその気になればイタヅラっ子が飛び回るみたいな軽快な足どりで元気よく走ってくれるのが最高の美点のひとつです。コイツでブンブン走り回ってみてください。やっぱり思わず笑っちゃいますから。何せ楽しくて。

アバンギャルドな自分に

前衛的、先進的、革命的。転じて徹底した独自性を持ったモノがアバンギャルドと呼ばれます。
言葉の出所は、良くも悪くも個人主義大国であるフランス。クルマも他国からは生まれない独特の味を持つ個性派ばかりです。

50万円 シトロエン・C3(初代)

コンパクトカーの常識としては、限られたサイズを有効に使うために四角を基調として角を丸めるようなデザインが主流なのですが、このC3は丸。丸をベースに作られたかのようなカタチをしています。かつての名車“2CV”の面影をあちこちに盛り込みながら、あざといレトロ風味を廃した、優しく穏やかなスタイリング。実は乗り心地もしなやかでフラットで、その尖ったところのない柔軟で優しいフィーリングは、ちょっと病みつきになってしまいそうなほど。特別な仕組みも何もないのにヘタな高級車よりも快適。身体にも心にも優しい、かなり手練な癒し系なのです。何かと疲れさせられることの多い日々の中で強い味方になってくれるのは間違いありません。

100万円 ルノー・メガーヌ (2代目)

タイヤは四隅ギリギリ、車体の側面をロールケーキを横に倒したみたいに丸く膨らませ、直立したまま左右に円形に回り込むリアウインドーとそこからポコンと飛び出て膨らむリアゲートパネル。正面から見るとスッキリなのに、横や後ろから見ると2代目メガーヌのスタイリングはかなり独特です。他のブランドに似たクルマは全く存在せず、自然と視線が惹きつけられてしまいます。これこそフランスならではのアバンギャルド。けれど実用車としての実力は驚くほど高く、抜かりはありません。しなやかで快適な乗り心地と想像以上に元気のいい走りもなかなか。普段使いの実用車でも、面白いデザインをしたクルマとつきあう方が毎日楽しいと思うのです。

150万円 プジョー・207CC

普段は2+2クーペだけど、気分次第でスイッチオン!メタルのトップがあっというまにボディ後部に収まって、オープンカーのできあがり。プジョーは電動格納式のハードトップという贅沢を小さなクルマに与えた先駆者です。猫目パッチリ顔の207シリーズにも当然のごとく。なぜならオープンエアがどれほど気持ちいいものか、容易くそれが手に入ることがどれほど嬉しいか、良く知ってるから。大空や大気に直接触れ合う気持ちよさは大自然からのギフトなのです。ハッチバックほど荷物は積めませんが、そう難儀するほどでもありません。もちろん元気よく走ってくれます。毎日アシに使って、自分を avant(前進)させる気持ちを楽しみながら養いましょう。

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text:嶋田智之/Tomoyuki Shimada
1964年生まれ。エンスー系自動車雑誌『Tipo』の編集長を長年にわたって務め、総編集長として『ROSSO』のフルリニューアルを果たした後、独立。現在は自動車ライター&エディターとして活躍。
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