標高4,300mをEVが駆け上る 三菱i-MiEVが挑む『パイクスピーク』

アヘッド 三菱i-MiEVが挑む『パイクスピーク』

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標高4300mの頂上を目指し、雲を突き抜けながら一気に駆け上がる…。それが別名〝Race to the Clouds〟と呼ばれるヒルクライムレース、〝パイクスピーク〟だ。

text:伊丹孝裕 [aheadアーカイブス vol.116 2012年7月号]
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三菱i-MiEVが挑む『パイクスピーク』

三菱i-MiEVが挑む『パイクスピーク』

〝パイクスピーク〟とは本来、アメリカ・コロラド州にある山そのものを指す名称なのだが、いつの間にかレースの名として一般化したもの。初開催は1916年にまでさかのぼり、現存するメジャーレースとしてはマン島TT、インディ500に次ぐ歴史を誇っているため、それも当然のことだろう。

レースはタイムアタックで行われ、山頂までの全長19.9㎞、標高差1439mの山岳路を誰よりも速く駆け上がった車両が勝ち。そんな一発勝負の単純明快さが魅力である。

そんな伝統のレースに、今年は新たな局面が生まれようとしている。それがEV、つまり電気自動車による戦いだ。なにせその顔ぶれが凄い。

まずは、過去7度の総合優勝経験を持つモンスター田嶋こと、田嶋伸博選手がEVマシンに乗り換え、8度目の栄冠を狙う他、トヨタは最高速度240㎞/hをマークするEVレーシングマシンを完成させ、エントリー。

こうした挑戦者を同カテゴリーのコースレコードを保有している横浜ゴム・塙 郁夫選手のEVレーシングカーが迎え撃つ。そんな構図である。
▶︎5月27日、袖ヶ浦フォレストレースウェイ」でi-MiEV Evolutionの走行披露が行われた。ステアリングを握るのは増岡選手。EVは内燃機関(エンジン)とは違い、標高差の影響を受けにくい。今後への期待も高まる。


そしてもう一台注目すべきが、三菱が作り上げたマシン〝アイ・ミーブ・エボリューション〟だ。その名の通り、同社がすでに実用化している電気自動車アイ・ミーブの技術を転用したレーシングマシンで、これをパリ・ダカールラリー2連覇の実績を誇る増岡浩選手がドライブ。もちろん優勝を狙っている。

マシンのフロントマスクにはアイ・ミーブの面影を残すものの、パイプフレームで構成されたシャシーやカーボンカウルなど、その雰囲気は完全なレーシングマシンそのものである。

ただし、搭載されるモーターやバッテリーは市販車のそれを改良したもので、1基あたり80キロワット(=約109ps)を発生させるモーターをフロントに1基、リヤに2基搭載。バッテリーは車体中央に配置し、低重心、かつシャープなハンドリングを達成しているという。

パイクスピーク参戦の意義を増岡は次のように説明する。

「パリダカへの参戦休止を発表して3年が経ち、新たな技術開発と人材育成の場を求め、あえて過酷なパイクスピークを選びました。エンジンと異なり、EVはまだまだやってみなければわからないことばかり。だからこそ挑戦し、環境性能に加えて、走行性能の高さも世界中にアピールしたいと考えています」。

ガソリンに取って代わり、電気での戦いという新たな覇権争いを迎えたモータースポーツ。その先頭に立とうとする〝パイクスピーク〟での三菱とライバルの戦いを楽しみにしたい。

*第90回パイクスピークインターナショナルヒルクライムは、コロラド州で起きた山火事の影響により、6月28日、開催の延期が発表されました。

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text:伊丹孝裕/Takahiro Itami
1971年生まれ。二輪専門誌『クラブマン』の編集長を務めた後にフリーランスのモーターサイクルジャーナリストへ転向。レーシングライダーとしても活動し、これまでマン島TTやパイクスピーク、鈴鹿八耐を始めとする国内外のレースに参戦してきた。国際A級ライダー。
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