GT-Rのエンジン「RB26DETT」と「VR38DETT」の性格の違いとは?

出発点の全く異なる両者

よく知られているように、RB26は当時のグループAレースで”勝利するために作られた”エンジンです。そのため、世界に通用するスーパーカー戦線への参入を目指すために作られたVR38とは、その目的が異なります。

日産の”勝つためのエンジン”としての源流は、プリンス時代のR380に積まれたGR8でしょう。このGR8は、ハコスカGT-R(KPGC10)のS20でひとつの頂点に達します。

一方、L型エンジンのチューニングベースの適性として重要な頑丈さを受け継いだRB系に、GR8やS20で培った魂をぶち込んだ突然変異エンジンが、R32スカイランGT−Rに搭載されたRB26です。

いにしえの日本グランプリ以来の血脈が流れ、日産ファンの想いを載せたRB26DETTは、期待通りの活躍でふたたび伝説となりました。また、イギリスなど右ハンドル国を中心にR33GT-Rから始まった輸出、GT-R LMのル・マン参戦などを経て、GT-Rはスーパーカー的な扱いを受け始めます。しかし、スカイラインGT-Rの歴史は、1999年にデビューしたR34(2002年まで生産)で途絶えることになります。

何もかもを変えてしまったRB26DETT

RB26DETTエンジン 1989年

合併前のプリンスが、S50スカイラインにグロリア・スーパー6用のG7を載せてS54を作って以来、レース用に特別なエンジンを載せたモデルを作るというのは、その後も繰り返し行われてきました。

R31スカイラインに設定されたGTS-RにRB20DET-Rを搭載したのも、代表例のひとつですが、そうした特別版のエンジンでは無く、”そのものが特別なエンジン”を作ってしまったのがRB26DETTでした。

よくいわれる「RB26(またはR32GT-R)が出た瞬間に、すべてが変わってしまった」という話は、誇張でもなんでも無く、デビューレースでスカイラインGT-R以外のマシンを周回遅れにして勝利すると、もうレースであれ公道であれ、GT-Rでないと勝てない状態になってしまったのです。

レースが変わりレギュレーションが変わり、RB26を搭載すること自体がアドバンテージでは無くなっても、その実績は残りました。

GT-R RB26DETT エンジン音

「世界の日産」のシンボルに載せられた心臓"VR38DETT"

日産 GT-R VR38DETT エンジン

一方、RB26DETTがいかに高性能で優れたチューニングベースエンジンとはいえ、RB系そのものが旧世代の直列6気筒エンジン(L型)であったことから、、遠からずV型エンジンへ変更されるともいわれていました。

V6ツインターボ、大排気量V8、RB26の継続など、さまざまな憶測が浮かんでは消える状況でした。実際にスーパーGT選手権では、V8のVK45が使われた時期もあり、そういった噂に拍車をかけることになったのです。

結果として選ばれたのは、当時の新世代エンジンVQ35HRとボア・ピッチを同じくしながらも、内容的には別物のR35GT-R専用エンジンとして新開発されたV6ツインターボのVR38DETTでした。

RB20やRB25と同系統ながら、R32 GT-R専用エンジンとして開発されたRB26DETTと同じような出自ですが、当時のVR38DETTには、目標とするのレースがありませんでした。

VRH38DETTは、あくまで日産のフラッグシップスーパースポーツであるGT-Rの心臓として、毎年のように地道に改良を重ねられてはいたものの、存在感はそれほど高いものではなかったのです。

そんな理由もあって、現在ではVLNなどに積極的に参戦しているのかもしれませんね。

VR38DETT エンジン音

重くて頑丈、高回転型のRB26は「飢えた野獣」

世代が違うだけにRB26DETTとVR38DETTは、エンジンとしての性格も異なり、旧世代L型エンジン同様の鋳鉄ブロックを使ったRB26DETTは、頑丈なものの重たいことが弱点としてつきまといました。

可能な限り後ろに低く搭載しても、全長が長くて重たいエンジンでは重量配分やコーナリング時のヨーモーメント最適化も難しく、どれだけパワーを出しても釣り合いを取るのが難しいオモリを積んでいるような状態というハンディは、レーシングエンジンとしては致命的だったのです。

とはいえ、頑丈さゆえに過激なチューニングをものともせず飲み込む「飢えた野獣」のような野蛮さは、このエンジンの魅力でした。

レースのために決められた2,600ccという排気量から大パワーを生み出すため、典型的な高回転、高出力エンジンだったRB26DETTは、可能な限り大型のタービンが搭載されるとともに、不足する低速トルクを補うため排気量アップもはかられるなど、数多くのチューニングエンジンが生み出されました。

その結果として、瞬間最大出力で1,500ps以上、街乗りにも耐える範囲では1,000ps程度のエンジンが生まれました。とはいえ、今度はそれに見合う補機類によるさらなる重量増加や、駆動系の限界といった問題との戦いが待っていました。

その点が、より余裕のある設計だったトヨタの2JZ系などと比べると、近年チューニングベースとしては低調な原因かもしれません。

軽くてコンパクト、フラットトルクなVR38はまだ発展途上

一方のVR38DETTは、大排気量と最新かつ精密なコンピュータ制御を生かしたフラットトルクという性格のアルミ製V6エンジンです。

コンパクトなVR38DETTは、フロントミッドシップに小さくまとまり、ドライサンプやトランスアクスルの採用もあり、旧世代GT-Rほど重量や加速のためのトルク不足に関する苦労をせずとも済みました。

これだけ書くと「小さくまとまった優等生」のようにも思えますが、RB26DETT同様に基礎となったエンジンより頑丈な作りなため、チューニングベースとしては2,000psオーバーのモンスターが存在し、素材としてはRB26以上のものを持っています。

そのVR38DETTの惜しいところは、その生い立ちゆえにレースなどの輝かしい実績や伝説的なエピソードを持たない、つまり"カリスマ性の欠如"でしょうか。

V6ツインターボという、ありきたりなエンジンに見えてしまうところから、スーパーカー用エンジンとしても押し出しに欠けるところではありますが、今後は手頃なチューニングベースとしてもエピソードを生み出していくかもしれません。

VR38DETTがRB26DETTのように"記憶に残るエンジン”になるかどうかは、まだまだこれからです。

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