変化した現代の“エグゼクティブ”

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海を一望する邸宅でくつろぐひとりの美女。その時、静寂を破るように漆黒のヘリが姿を現わす。おもむろに立ち上がった美女は、『あの胸にもういちど』のマリアンヌ・フェイスフルを思わせる黒のジャンプスーツに身を包み、颯爽とオートバイで走り出す。飛び出してきたのは、ドゥカティのモンスター696。もちろん車体はブラックだ。

text:山下敦史 photo : 長谷川徹  [aheadアーカイブス vol.120 2012年11月号]
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変化した現代の“エグゼクティブ”

変化した現代の“エグゼクティブ”

何の映画の予告編かと思うような映像なのだが、実はこれ、VISAブラックカードのコマーシャル。だから、もちろんブラックなのだ。一般カードの審査すら危ない自由業者としては縁遠いものではあるのだけれど、このCM、バイクが格好良く登場するということを除いても、おや? とひっかかるものがあった。いい意味で、らしくないのだ。
 
プレミアムカードといえば、世界中どこでも提供される快適で細やかなサービスとか、所持できること自体のステイタスといったものが重要なわけで、僕が持っているイメージも、エグゼクティブとかラグジュアリーといった言葉に集約されるものだった。オートバイのハンドルを握るよりはショーファー付き高級車の後部シートに収まり、遊ぶときはお金を惜しまず思いっきり贅沢に遊ぶ、といったちょっとバブルの匂いが残るような。
 
ところが、だ。このCMで、「エグゼクティブ・ライフ」として描かれているのは、『007』ばりのハイ・アクションでエキサイティングな世界。エグゼクティブ界のことなんか想像するしかないのだが、きっとこれは、エグゼクティブという概念が変わった、あるいは変わらなければならないということなのだろう。
 
世界的な不況が続く中、地位に安穏とする勝者は次も勝者ではいられない。今必要とされるのはラグジュアリーではなく、アクションであり、アグレッシブな姿勢なのだ、と。
 
話をバイクに戻そう。近年(というかここ十数年)、若者のバイク離れが叫ばれ、今ではどうかするとバイクなんてオヤジの道楽ぐらいのことを言われているという。
 
要因はいろいろと考えられるし、何より寂しいことだけど、今バイクに足りないものは、まず憧れなんだと思う。バイクなんて正直、便利だから乗るわけじゃない。楽しさと憧れで乗るんじゃないか? 

その楽しさは今も昔も変わらない。だったら憧れは? このCMが、エグゼクティブをエキサイティングなイメージへ変えようとしているように、僕たちもまた、変わるべき時期にいるのかもしれない。

バイクを取り巻く環境は一朝一夕では変えられないが、僕たち自身は今からだって変われるはずだ。「なんであいつら、たかがバイクにあんなに夢中なんだ」とうらやましがられるように、憧れられるように。初めてバイクに乗ったとき夢見た、なりたかった自分を目指そう。

口で言うほど簡単ではないだろうが、僕にとってはブラックカードを手に入れるよりはまだできそうなことだ。
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