【プロフェッサー武田の試乗記】懐古派ジャガー愛好家、良い意味で裏切られた4気筒ターボ「F-TYPE」
更新日:2020.01.09
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1922年に「スワロー・サイドカー」として創業して以来、あと数年で100周年を迎えようとしているジャガー。その長い歴史の中で創造された「最高傑作」と言えば、筆者を含む多くのファンが「E-TYPE」の名を挙げるに違いない。
文・武田公実
文・武田公実
ジャガーの最高傑作といえば「E-TYPE」
1961年に鮮烈なデビューを果たしたのち、1975年まで生産、北米市場では「XK-E」とも呼ばれたジャガーE-TYPEは、ジャガーのみならず、世界のスポーツカーの歴史においても最高ランクに属する名車として知られる。
その素晴らしいカリスマ性はジャガー自身も認識しており、そののち開発した二台のパーソナルカー「XK8(1996~2006年生産)」および、「XK(2006~2014年生産)」でもE-TYPEへのオマージュを明確に示したスタイルが選択されていた。
そして2013年、ジャガーE-TYPEのD.N.A.をよりピュアなかたちで体現する2シータースポーツカーとして誕生したのが、そのネーミングからして正統なE-TYPE後継車であることを主張する「F-TYPE」である。
その素晴らしいカリスマ性はジャガー自身も認識しており、そののち開発した二台のパーソナルカー「XK8(1996~2006年生産)」および、「XK(2006~2014年生産)」でもE-TYPEへのオマージュを明確に示したスタイルが選択されていた。
そして2013年、ジャガーE-TYPEのD.N.A.をよりピュアなかたちで体現する2シータースポーツカーとして誕生したのが、そのネーミングからして正統なE-TYPE後継車であることを主張する「F-TYPE」である。
E-TYPEの後継車「F-TYPE」の誕生
同じ年の春から日本マーケットに正規導入されたF-TYPEには、これまで最高出力340ps/380psの3リッターV6スーパーチャージャー、ないしは550psの5リッターV8スーパーチャージャーからなる二つのパワーユニットが設定されてきたが、2018年モデルからは「XE」や「XF」、あるいは「F-PACE」や新生「E-PACE」にも既に搭載されている2リッター直4「インジニウム」ターボエンジンが加わることになった。
F-TYPEに搭載されるインジニウム・ガソリンターボエンジンは、300psを発生。最高速で250km/h、0-100km/h加速では5.7秒(欧州仕様データ)と、高性能スポーツカーと呼ぶにもまったく問題の無いパフォーマンスを獲得しているという。
また、エコロジーが最優先されるべき現代の「ダウンサイジング」トレンドを思えば不可避的な採用であることも理屈では分かるのだが、筆者のような大排気量/マルチシリンダーのジャガーを長らく愛好してきた懐古派のジャガー愛好家にとっては、一抹の違和感や寂寥感を覚えさせる選択であったのも間違いない。
F-TYPEに搭載されるインジニウム・ガソリンターボエンジンは、300psを発生。最高速で250km/h、0-100km/h加速では5.7秒(欧州仕様データ)と、高性能スポーツカーと呼ぶにもまったく問題の無いパフォーマンスを獲得しているという。
また、エコロジーが最優先されるべき現代の「ダウンサイジング」トレンドを思えば不可避的な採用であることも理屈では分かるのだが、筆者のような大排気量/マルチシリンダーのジャガーを長らく愛好してきた懐古派のジャガー愛好家にとっては、一抹の違和感や寂寥感を覚えさせる選択であったのも間違いない。
圧倒的に軽くなったフットワーク
そんなネガティブな先入観を抱きつつもエンジンに火を入れ、公道に出たところでアクセルを踏み込むと、筆者の意地の悪い予想は一瞬にして消し飛ぶことになった。
300psもあれば当然かもしれないが、3リッターV6スーパーチャージャー版と比べても遜色のないトルクの盛り上がりで、みるみるスピードを上げてゆく。当世のダウンサイジング・ターボにしてはレスポンスも良好で、8速ATのパドル操作で気持ちよく走らせることができる。
この速さに歓喜したのちに冷静さを取り戻すと、今度は4気筒ということで抱いていたエンジンサウンドへの疑念が、まったくの杞憂であることも判明する。もちろん直6やV6、あるいはV8とはまったく異なるのだが、さりとて一般的な直列4気筒とも異なるちょっと不思議な排気音。でも、ジャガーのリアルスポーツカーに相応しい快音であることも間違いないのだ。
300psもあれば当然かもしれないが、3リッターV6スーパーチャージャー版と比べても遜色のないトルクの盛り上がりで、みるみるスピードを上げてゆく。当世のダウンサイジング・ターボにしてはレスポンスも良好で、8速ATのパドル操作で気持ちよく走らせることができる。
この速さに歓喜したのちに冷静さを取り戻すと、今度は4気筒ということで抱いていたエンジンサウンドへの疑念が、まったくの杞憂であることも判明する。もちろん直6やV6、あるいはV8とはまったく異なるのだが、さりとて一般的な直列4気筒とも異なるちょっと不思議な排気音。でも、ジャガーのリアルスポーツカーに相応しい快音であることも間違いないのだ。
しかし、2リッター4気筒版F-TYPEの真骨頂は、やはり圧倒的に軽くなったフットワークにあると言わねばなるまい。同じ「クーペR-ダイナミック」グレードで比較しても、3リッターV6版より60kgも軽い。しかもその軽量化された分の大方はフロントアクスル側に集中しているのだから当然かもしれないが、ハンドリングのシャープな切れ味はV6/V8版のF-TYPEを凌ぐもの。
ヒラリヒラリとカーブを駆け抜ける快感は、例えばマーケットではライバルと目されるミッドシップ車、ポルシェ・ケイマン/ボクスターと比べても大差は無いと断じてしまっても良いレベルにある。
しかもその一方で、もはや一部のジャガー愛好家を除いては死語にも等しい「ネコ脚」という単語を思い出させるしなやかな乗り心地も両立していることから、より気楽にデイリーユーズに供することもできるだろう。
昨今のダウンサイジング時代の産物として生まれたはずの2リッター4気筒モデルが、実は最もピュアなスポーツカーとなっていたことは、驚きに値する。そして上質な軽妙さを見せるドライブフィールは、かのE-TYPEの精神的後継車としての在り方までも最も明確に示しているかに思われたのである。
ヒラリヒラリとカーブを駆け抜ける快感は、例えばマーケットではライバルと目されるミッドシップ車、ポルシェ・ケイマン/ボクスターと比べても大差は無いと断じてしまっても良いレベルにある。
しかもその一方で、もはや一部のジャガー愛好家を除いては死語にも等しい「ネコ脚」という単語を思い出させるしなやかな乗り心地も両立していることから、より気楽にデイリーユーズに供することもできるだろう。
昨今のダウンサイジング時代の産物として生まれたはずの2リッター4気筒モデルが、実は最もピュアなスポーツカーとなっていたことは、驚きに値する。そして上質な軽妙さを見せるドライブフィールは、かのE-TYPEの精神的後継車としての在り方までも最も明確に示しているかに思われたのである。
ジャガー F-TYPE
武田公実|Takeda Hiromi
かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッドで営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、クラシックカー専門店などで勤務ののち、自動車ライターおよびイタリア語翻訳者として活動。また「東京コンクール・デレガンス」、「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントにも参画したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム」ではキュレーションを担当している。