私の永遠の1台 VOL.17 カワサキ 750RS(Z2)

カワサキ  750RS(Z2)

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小学生の頃、「ドォーン」という咆哮を発しながら山のように大きなバイクが通り過ぎていった。音も姿も、それまで見たのことのない怪物のような乗り物だ。しかもそのバイクは新幹線と同じ速度が出るという……ホンダのCB750Fourだ。

text:宮崎敬一郎 [aheadアーカイブス vol.177 2017年8月号]
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VOL.17 カワサキ 750RS(Z2)

VOL.17 カワサキ 750RS(Z2)

▶︎1972年に海外で発売されたZ1の国内仕様として、翌年から日本の自主規制値である750ccにスケールダウンして販売を開始。正式名称は750RSであり、Zの文字は付かないが、型式名がZ2だったことや、後のカワサキ車にZが付くことからZ750RSと間違って表記されることがある。写真は1973年の初期型だが、宮崎氏が最初に買ったのは、カラーチェンジしたZ2A2型。


いつかは乗ってやる! ガキの心を鷲掴みにするには十分なインパクトだった。だが、免許が取れるようになった頃、そのCBを古臭く見せるバイクが走り回るようになっていた。750RS……Z2だ。

当時もっとも大柄なスポーツバイクの1台だったZ2の前では、大きくて重厚に思えたCBのタンクはカマボコのように見えた。起伏のあるフォルムやひとつひとつのパーツが醸し出す曲面の美しさはたまらなく重厚でいて色っぽく見えたものだ。

高校2年の終わり頃、バイトにバイトを重ね、飛ばすと白煙を吹く「ウリ坊」「虎」と呼ばれたボロボロのZ2A2型を手に入れた。今でいえば、たぶんリッターSS最高級車の中古を高校生が買ったようなものだ。

事実上750㏄までしか乗れなかった日本では、当時、最強最速! 走り出せば駆けっこがしたくなる若犬みたいな16歳には甘美な誘惑が山盛りのバイクだ。だから、自慢だったし、大切にした。この型あたりまでZの塗装やメッキの質はバイク界最高レベルで、深みのあるメタリック塗装や滅多に錆の浮かないメッキなんかも、全てが自慢だった。

だが、大学生になった頃、Zの新型はFXやFX2の時代になり、ライバルもどんどん高性能化。いい加減古かった愛車Z2A2もヤレてきた。白煙吹きの元だったオイル上がりを直すついで860ccにボアアップしてあったが、それだけでは足らない。何とかできないものか? 

色んな本や詳しいショップのアドバイスを聞いては圧縮を上げたりキャブやカムを変えてみた。もともと造りがタフだったZはそれができたのだ。大学時代にZ2A5の中古に買い替えたが、やはりチューニングを繰り返し、足回り変更やフレーム補強の威力も知った。

Z1/Z2が如何に名車であるかは今更書くまでもないだろう。ただ40年以上も前、リアルタイムでZ2は憧れのバイクだった。そして愛車でもあった。学生時代を通して2台と3機のエンジンで十数万㎞を走り、バイクの扱い方やり方、遊び方を学んだバイクだ。

たぶん、Z2が美しくなく、面白くないバイクで、タフでもなかったら、早々に乗り換えてたか、バイクに飽きてただろうし、今の仕事に繋がる感覚や基礎知識は持ってなかったろうと思う。

自分にとって、永遠の1台といえばそんな事を学んだ「Z2」なのだ。

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text:宮崎敬一郎/Keiichiro Miyazaki 
1959年生まれ。福岡県出身。大学卒業後、鈴鹿サーキットを本拠地にメーカー系テストライダーとして働きながらレース活動を行う。’84年頃よりヤングマシン(内外出版)、モーターサイクリスト(八重洲出版)などのメインテストライダーを歴任。1995年にボンネビルで世界最速311km/hのワールドレコードを達成。現在はモーターサイクルジャーナリストとして活躍中。
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