カングーはスポーツカーだった

アヘッド カングー

※この記事には広告が含まれます

1,000台を超える色とりどりのカングーが並び、その周りにはファミリーやカップルが思い思いにくつろぐ。これは全国のカングーオーナーが集うイベント「カングージャンボリー」でお馴染みの光景で、見ているこちらまでゆったりとした心地よさに包まれる。

text:まるも亜希子 [aheadアーカイブス vol.166 2016年9月号]
Chapter
カングーはスポーツカーだった

カングーはスポーツカーだった

そんなカングーだから、走りがどうのこうの、という話はこれまで語られてこなかったし、きっとそれを求める人もいなかったのかもしれない。ぶっちゃけ私もそのひとりだった。2004年にサハラ砂漠でカングーに出逢うまでは。

ラリー競技に当時の初代カングーがエントリーしていたのは、フランス人らしいジョークだとばかり思っていた。それが、荒れ地をワイルドに爆走し、砂丘をヒョイヒョイと越えていく姿を目撃して驚き、すっかり見る目が変わったのだった。

その後日本でMTモデルに試乗し、山道や高速カーブなどを走ってみるとやっぱり。通常はおおらかな乗り味ながら、ここゾという時にはガッシリとした安定感、しなやかな足の動きを披露してくれる。

こちらが求めれば求めるほど、その癒し系キャラに似合わぬスポーツ性が引き出す懐の深さに、思いがけず宝箱を開けたような昂揚感を味わったのだった。

2代目となったカングーは、相変わらずシッカリと走ってくれるものの、室内空間を広げるためボディが拡大したことなどで、ややスポーティさは削がれた印象だった。

とくに1.6ℓ直4エンジン+4ATモデルは、のんびりとしたドライブが似合う、カングーのイメージそのもの。それはそれでまったく文句はなく、ひとつの理想型だと納得していた。

ところが先日、カングーに新たなパワートレーンが加わった。1.2ℓ直噴ターボエンジンに、2ペダルMTとなるEDCを初搭載したものだ。試乗してみると、ビックリ。あの初代に試乗した時の昂揚感が、再び味わえるなんて。

しかも自分でMTを操るよりも、何もかもが的確でなめらかでスカッとする。2.0ℓエンジンに匹敵するというパワーも申し分なく、ずっと走っていたくなる楽しさだ。しかもこれなら、MTはハードルが高いという女性も手軽にトライできる。

カングーの扉を開けた人にしかわからない、癒し系だけじゃない意外な楽しさ。2ペダルMTの登場で、それがグッと引き出しやすくなり、これからまた、カングーの世界はさらに広がりそうだ。
●ルノー カングー ゼン(EDC)
車両本体価格:¥2,590,000(税込)
全長×全幅×全高(㎜):4,280×1,830×1,810
排気量:1,197㏄ 
車両重量:1,450㎏
エンジン:ターボチャージャー付 筒内直接噴射
     直列4気筒DOHC16バルブ
最高出力:84kW(115ps)/4,500rpm
最大トルク:190Nm(19.4kgm)/1,750rpm
JC08モード燃料消費率:14.7㎞/ℓ 
駆動方式:前輪駆動

---------------------------------------------------
text:まるも亜希子/Akiko Marumo
エンスー系自動車雑誌『Tipo』の編集者を経て、カーライフジャーナリストとして独立。ファミリーや女性に対するクルマの魅力解説には定評があり、雑誌やWeb、トークショーなど幅広い分野で活躍中。国際ラリーや国内耐久レースなどモータースポーツにも参戦している。

商品詳細