現代のスーパーカー vol.1 Alfa Romeo TZ3 Corsa/TZ3 Stradare ザガートの魔術

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“スーパーカー”の定義は曖昧で、何をもって“スーパーカー”とするか、それはスーパーカーを想う人の数だけ存在する。けれど誰もが納得せざるを得ない要素というのもあって、「売り物だけど簡単には買えない」というのは確実にそのひとつだ。

text:嶋田智之 [aheadアーカイブス vol.111 2012年2月号]
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vol.1 Alfa Romeo TZ3 Corsa/TZ3 Stradare ザガートの魔術

vol.1 Alfa Romeo TZ3 Corsa/TZ3 Stradare ザガートの魔術

アルファロメオTZ3コルサ/TZ3ストラダーレはその好例で、何せ支払い能力があれば誰にでも売るという類ではない。コルサ(競技仕様)は完全なワンオフ、ストラダーレ(公道仕様)は9台のみがほぼハンドメイドで製作され、このクルマを企画・製作したカロッツェリア・ザガート自体が、世界に点在するカスタマーの中から買い手を選ぶようなカタチなのだ。

そう聞くと高飛車に感じられるかも知れないが、実はそこには“ザガート”というブランドを深く理解して誰よりも強く愛する特別な顧客への贈り物、という意味合いが込められているのである。
 
ミラノのカロッツェリア・ザガートは、1919年創業の老舗のカロッツェリア、つまり車体のデザインから架装までを専門とするファクトリーだ。軽量で空力性能にも優れた車体を生み出すのが巧みで、ザガートのボディを纏ったクルマはレースでも速かった。

アルファロメオとも戦前から良好な関係を保ち数々の名車を生み出してきたが、その中の白眉が1962年発表の“TZ”と、発展型である“TZ2”。長いノーズ、それにルーフから後ろに向かって描くなだらかなラインを突然スパンと切り落とす“コーダトロンカ”デザインが特徴的な、美しいレーシング・スポーツカーだった。今でも世界中のコレクターの垂涎の的である。

“TZ3”はそうした伝統を未来に繋げるためのものとして企画された連作。どちらもザガートのチーフデザイナーである原田則彦さんの手によるものだが、とりわけストラダーレは“過去に習うだけじゃなく、TZというクルマに込められている思想を改めて解釈しなおし、今、創るとしたら?”というような発想で、新たにゼロからデザインされている。
 
600馬力オーバーの強烈な心臓を持ちながら、こだわりどころはあくまでも造形。

原田さんは「このクルマの最大のキモはリアのガラスから後端までの長さで、ここが1㎝違うだけで全然違うクルマになってしまう。バランスを見つけるまでが大変でした」と語ってくれたが、ストラダーレに惹かれ、オーダーが認められた幸福な顧客は、そうしたデザイナー自身の話を直接聞きながら、細部を自分仕様に仕上げてもらうための打ち合わせをすることができる。

これほどクルマ好き冥利につきることはない。フェラーリやランボですらプレタポルテに思えてしまう、特別な世界なのだ。
'50年代から'60年代にかけ、さらに'80年代後半に興味深いクルマを送り出したザガートは'00年に入った頃から再び意欲的なクルマを造るようになった。なお、アルファロメオとの関係が強いザガートだが、アストンマーティンやランチア、マセラティ、フィアットなどとも手を組み特徴的なクルマを送り出している。
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text : 嶋田智之/Tomoyuki Shimada

1964年生まれ。エンスー系自動車雑誌『Tipo』の編集長を長年にわたって務め、総編集長として『ROSSO』のフルリニューアルを果たした後、独立。現在は自動車ライター&エディターとして活躍。
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