次期スカイラインクロスオーバーに搭載!可変圧縮比エンジンって、何がすごいの?

日産 VC-T

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自動車用の次世代パワーユニットは、なにもEVやFCVに限らないわけで、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンでも、まだまだ「次世代」は作れます。

日産が2016年8月15日に発表した、世界初の量産可変圧縮比エンジン「VC-T」もそのひとつです。

※ 2017年5月時点

Chapter
昔よりパワーダウンしてると思いませんか?
高圧縮比でノッキングを起こさない技術
圧縮比を変えるという発想
まずはVQ系を更新

昔よりパワーダウンしてると思いませんか?

最近のクルマは、燃費は良いものの、パワーが足りないと思いませんか?昔のようにNAでもリッター100psオーバー、ターボなら280ps規制の代わりにトルクを鬼のように太らせて…といったパワフル志向のエンジンが、一部を除いて無くなってしまいました。

残ったのはスーパーカーなど、燃費を気にしなくても良いようなクルマばかりです。近年のエンジンは、ピークパワーよりいかに低回転でのピックアップを大事にするかなど、とにかく効率重視です。

その代表的な例が軽自動車用エンジンで、ホンダのアクティ系と三菱を除けば、どれもロングストローク&高圧縮比の、低回転での効率を最重視したエンジンに変わっています。

圧縮比によるノッキングを防ぐため、高回転まで回らない仕様で、このままだと内燃機関(エンジン)はすべてこうなるのではと危惧していたのです。

しかし、自動車メーカー各社は、しっかりと対策を練っていたのでした。

高圧縮比でノッキングを起こさない技術

トヨタのアトキンソンサイクルエンジンしかり、スズキのデュアルジェットエンジンしかり、マツダのSKYACTIVはもちろん、各社とも高圧縮比によるノッキング(異常燃焼)回避技術に力を注いでいます。

ノッキング対策として一番簡単なのは、点火タイミングを遅らせて回避することですが、その場合、肝心のトルクが低下してしまいます。反対に点火タイミングを理想的なものにして効率を求めた場合には、温度や圧力が高まりノッキングが起こるという、いたちごっこのような状態になります。

その温度や圧力を下げ、高圧縮比ながら高回転まで使える仕様とするため、各メーカーではエンジンにさまざまな技術を投入しているというわけです。

そして、そこにまったく別なアプローチ、それもエポックメイクなメカニズムを持ち込んだのが日産でした。

圧縮比を変えるという発想

日産が発表した新型エンジン『VC-T(VCターボ)』は、"高圧縮比が問題なら、必要無い時は圧縮比を下げれば良い"という発想で作られた、世界初の量産可変圧縮比エンジンです。

研究段階では、過去にスウェーデンのサーブなどが作った事例もありましたが、量産レベルまでもっていったのは日産が初めて。

簡単にいうと、クランクシャフトにちょっとした可変機構を組み込むことで、ピストンの上死点、つまり燃焼室内で圧縮をかける位置を変えられるようにしたのです。ピストンが上死点に達したときに位置を下げれば圧縮は下がりますし、上死点を上げれば圧縮を高めることができます。

これを可能にしたVC-Tは、低回転が重視される領域では高圧縮比による効率化で燃費を向上させ、高回転を重視する領域では低圧縮比でターボを使ってパワーを稼げます。圧縮比可変範囲は8~14ですから、1台でまったく違うエンジンを積んでいるかのような効果が出そうです。

また、このエンジンのすごいところは、他メーカーが”上がりきった圧縮比の対策メカや制御を組み込む”のに対し、”そもそも圧縮比が無駄なところで上がらないメカと制御を組み込んだ”という、同じ目標にまったく異なるアプローチで挑んだところ。

量産車での実績がまだ無いだけに、メカニズム的な信用はこれから積み上げていくしかありませんので、かなり思い切った冒険といえるでしょう。

もし成功してヒット作にでもなれば、日産の名がまたひとつ歴史に残るそれくらいすごいエンジンです。

まずはVQ系を更新

※写真はインフィニティ QX50 コンセプト

発表されたVC-Tは、2リッター直4ターボエンジンで、クロスオーバーSUVのQX50(日本名スカイラインクロスオーバー)がモデルチェンジするタイミングに合わせて2018年から搭載。以後3.5リッターV6のVQ35HRなど、VQ系エンジンを更新していくという予想になっています。

現状では直4ターボエンジンのみの採用ですが、うまくいけばV6など他の形式のエンジンにも採用されるでしょう。その過程で日本にも入ってくるのでは無いでしょうか。

どのようなポテンシャルを持つのか、早く試してみたいですね!
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