国交省も認めたミラーレス化

アヘッド ミラーレス化

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国土交通省は'16年6月にも保安基準を改定し、ミラーの代わりにカメラとモニターの組み合わせで代用する技術を認める予定だ。国連の自動車基準調和世界フォーラム(WP29)での決定を受けた改定である。

text:世良耕太 [aheadアーカイブス vol.158 2016年1月号]
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国交省も認めたミラーレス化

国交省も認めたミラーレス化

▶︎将来のレクサスのフラッグシップを示唆するコンセプトカー「LEXUS LF-FC」


WP29は「安全で環境性能の高い自動車を容易に普及させる」観点から、「自動車の認証の国際的な相互承認を推進すること」を目的に組織されたもので、EUに加え、日本、アメリカ、カナダ、オーストラリア、中国、インド、韓国など、35の国と地域がメンバーになっている。

WP29での決定を受けたということは、日本国内のローカルなルールではなく、世界基準のルールになるということだ。

ミラーで後方、あるいはピラーやドアなどによって隠れる死角を確認する行為は、自動運転を成立させるのに不可欠な機能のうち、「認知」に相当する。自動運転では認知が正確にできないと、その後の「判断」や「操作」が成立しなくなってしまう。

人工知能にとっても生身の人間にとっても、安全運転の第一歩はまず、クルマの周囲の状況を漏れなく認知することだ。よく見えるようになるという意味で、ミラーが備えていた機能をカメラとモニターの組み合わせに置き換える技術は、安全性の向上に結びつく。
▶︎スズキの「MIGHTY DECK(マイティデッキ)」


自動車メーカー各社は近い将来に自動運転技術を実用化すると宣言しているが、その実現には、大前提となる「認知」の機能が欠かせない。人間の目にあたるカメラは不可欠で、レーザーレーダーやミリ波レーダーで機能を補完しているのが実状。

そこまで高機能化した技術を搭載していない現在のクルマでも、シフトレバーをリバースに入れれば車載モニターに後方の状況を映し出したり、ボンネット左側やボディ側面の陰に隠れる部分を映したり、自車を上空から俯瞰したような映像を映し出したりする機能が実用化されている。

システムのトラブルが発生した際のバックアップをどうするかという課題は残るものの、技術的にはすでに、ミラーの力を借りなくても、自車の周囲を確認できる状況にはなっている。今回の保安基準改定は、法律が技術に追いついた側面もあると言えそうだ。
▶︎日産が2014年に実用化したスマート・ルームミラーを表す図。車体後方をカメラで捉え、その画像を、ルームミラーに搭載した液晶モニターに映し出す。液晶モニターとミラーを任意に切り替えることができる。


保安基準では、現行のミラーに慣れたドライバーが違和感を感じずに済むよう、ドアミラーやルームミラーに近い位置にモニターの設置場所を限定し、明るさや画質も細かく規定するという。ただし、基本となる基準を満たせば、後方車両や物体、あるいは人物を検知する機能など、追加機能の搭載を認める方針だ。

左右に張り出したドアミラーがなくなることで得られる安全上・実用上のメリットは他にもある。狭い道路でのクルマ同士のすれ違いや、歩行者や自転車を追い越す際の安全性向上にもつながるだろう。

ドアミラーは風切り音を発生させる大きな原因のひとつだが、ミラーレスになることで静かになるし、空気抵抗が減るので燃費向上にも貢献することにもなる。

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text:世良耕太/Kota Sera
F1ジャーナリスト/ライター&エディター。出版社勤務後、独立。F1やWEC(世界耐久選手権)を中心としたモータースポーツ、および量産車の技術面を中心に取材・編集・執筆活動を行う。近編著に『F1機械工学大全』『モータースポーツのテクノロジー2016-2017』(ともに三栄書房)、『図解自動車エンジンの技術』(ナツメ社)など。http://serakota.blog.so-net.ne.jp/
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