AT車の9速、10速レンジ…そんなに必要なものなの?

レンジローバーイヴォーク

※この記事には広告が含まれます

近年、日本のほとんどのクルマがAT仕様となっており、MT車は少数派となっています。その理由は、日本は渋滞が多く、イージードライブを求める人が多いことと、何よりATの進化があげられるでしょう。そんなAT車に、9速、10速レンジを持つモデルが増えていますが、これは必要なのでしょうか?
Chapter
MT以上に進化が続くAT事情…
かつては3速仕様が主流だったAT
9速、10速レンジと多段化が進むAT、これってそんなに必要なの?

MT以上に進化が続くAT事情…

※画像は9速ATを搭載するイヴォーク

一昔前までは、ATといえば、”楽だけど遅い”、”燃費が悪い”、”変速ショックが大きい”、といったネガティブイメージが根付いており、やはりMTが良い…という意見が多数でした。

しかし2017年現在、こうした意見はほぼ聞かなくなりました。これは、MTが機構上、劇的な進化をほぼ止めているのに対し、ATは実にさまざまな技術革新を用いて進化している証しでもあります。

MTが6速までといった状況に対し、ATは多段化が進み、なかには9速、10速まで持っているようなATも存在します。またCVTにいたってはギア自体が存在せず、シームレスな変速を行いますよね。

今回は、こうしたATの多段化について触れてみましょう。

かつては3速仕様が主流だったAT

国産車でATを最初に搭載したのは、岡村製作所のミカサ(1958年)でした。その翌年には、トヨタが「トヨペット・マスターライン」に搭載。トヨグライドと名付けられたこのAT機構は、トルクコンバーター付きの2速セミATでした。その後、トヨグライドは、パブリカやコロナにも搭載されることになります。

また1968年にはホンダが自社技術によるAT機構「ホンダマチック」を開発。この3速フルATは、N360に初めて搭載されました。

その後、3速ATは他社も開発を行い1970年代までの主流でした。この3速ATは、ギア比が離れているため、変速の際のショックの大きさや、上り坂でパワーが足りずにキックダウンすると今度は回転が上がりすぎてしまったり、非常に掻痒感を覚えながら運転した経験もあろうと思います。3速ATに乗っていた方は、記憶にまだ記憶に新しいかもしれませんね。

1980年代になると、ATの4速化と同時にロックアップ機構が登場。この効率が上がったATを各メーカーでは、次々と採用するようになります。そして90年代、軽自動車でも4速ATが奢られるようになり、大衆車でも5速ATなど塔載モデルも現れてきます。

段数が増えれば、細やかな変速ができますから、変速時のショックも小さくできますし、なによりエンジンの特性に適した設定とすることができます。非力なエンジンであればクロスレシオ気味にして、トップギアのみハイギアードにすることもできます。

現在は、かつてでは考えられないほどの多段ATも登場していますね。

9速、10速レンジと多段化が進むAT、これってそんなに必要なの?

※画像はパガーニ・ウアイラ(7速シーケンシャル、シングルクラッチ式の2ペダルMT)

2010年代に入ると、ATの多段化は飛躍的に進み、前述のように9、10速なんて多段ギアを持ったモデルも登場しています。

ひと口にATといっても、現在は機構の違いでいくつかの分類することができます。

たとえばVW等が採用してるDSGはATですが、MTのクラッチ操作をコンピューターが代わりに行うもので、基本的な設計はMTに準じます。ちなみにスズキ アルトのAGSも似たシステムです。

ただし、DSGは、いわゆるDCT(Dual Clutch Transmission)に分類されるATで、奇数ギア、偶数ギア両方にクラッチを持つことで、変速時のタイムラグを減らし、リニアな変速を可能にしたもの。人間の操作よりも確実で速い変速が可能で、現在では多くのスーパースポーツモデルがこうした2ペダルATを採用しています。

パドルやレバーで任意で操作も可能ですし、コンピューターに任せて最適なシフト操作をさせることも当然可能。VWでもMTでは存在しない「7速DSG」ミッションが採用されています。

物理的な操作・機構が必要なMTに比べ、ATであれば電子制御が可能なので、どんなに段数が増えてもフロアにスペースを必要としない、操作が複雑にならないというのも理由でしょう。

こうしたAT化されたMTがある一方で、従来のATでも多段化が進んでおり、コンピューター制御により最適なシフトワークを行うようになっています。人間が操作するには10速シフトは煩雑ですが、機械に任せてしまえばスムースかつ快適、さらに多段化によって燃費、加速の向上も可能となっています。

このような利点から、今後もATは進化を続けるでしょう。とはいえ、MTには自分でクルマを操るという能動的な刺激があり、代えがたい魅力であるのも事実です。

悩ましいミッション事情ですが、ちょっと古い年式の筆者としては、MTがこの世から消える、なんてことが無いよう願うところです。
【お得情報あり】CarMe & CARPRIMEのLINEに登録する

商品詳細