VWとマツダのディーゼルエンジン、それぞれの特徴は?

VW TDIエンジン

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2017年3月現在、VWの排ガス不正問題から早一年半が経ちましたね。すでにVW自身も不正を認めており、VWの業績は低迷するかと思いきや、2016年の世界販売台数ではトヨタを抜き首位に返り咲きました。しかし、このVWがディーゼルエンジンに与えたマイナスイメージは計り知れません。加えて、BMWのディーゼルにも疑惑が向けられるなど、ディーゼルはいまだ疑惑の目で見られるかもしれません。
Chapter
ディーゼルエンジンとは?
ディーゼルの悪癖
VWのディーゼルエンジン
マツダのディーゼルの構造

ディーゼルエンジンとは?

ディーゼルエンジンは、重くて回らない。けどトルクフルで燃費がいい。それがこれまでのディーゼルエンジンの印象でした。バスやトラックが走るときのイメージが、まさにディーゼルエンジンのそれですね。

ディーゼルエンジンは、空気を高い圧縮比で圧縮し、温度が上がったところに燃料(軽油)を噴射、自然発火させてエンジンを動かします。この高圧縮比のため、爆発圧力が大きく、エンジンはそれなりの強度を確保しなければならず、基本的に重くなります。

ピストンやコンロッドも重くなっているので、高回転は苦手。しかし低回転でトルクが出る特性で、効率にすぐれたエンジンが出来上がります。

このように良さも悪さも合わせ持つディーゼルエンジンは、トラックなどの大型車(トルクを必要とする)や、長距離走行を行う場合などには非常にメリットがあります。

ディーゼルの悪癖

2017年現在から20年近く前の1999年。元東京都知事石原慎太郎氏は、ディーゼル車が排出するPM(粒子状物質)の危険性を世の中に広めました。そして、排ガス規制が強化された結果、ディーゼルエンジンはしばらく日本の乗用車から姿を消すことになったのです。

ディーゼルが吐き出す有害物質は、NOx(窒素酸化物)とPMです。NOxは以前から問題視されていましたが、PMも危険であることを訴えたのが前出の石原元都知事。軽油を燃焼させることで、これらの有害物質は発生します。

燃焼温度が高く、混合気の空気の割合が多くなるとNOxが発生し、混合気の空気の割合が少なくなり燃料の不完全燃焼が増えるとPMが発生します。

つまり、NOxPMはトレードオフの関係で、2つを同時に減らすことが困難なのです。そこでメーカーは、エンジン側でNOxを減らして排気系にPMを低減させるシステムを使うか、エンジン側でPMを減らして排気系でNOxを低減させるかをしています。

VWのディーゼルエンジン

VWのTDI(Turbo Direct Injection:直噴ターボ)エンジンは、ディーゼルエンジンとして歴史も長く、日本からディーゼル乗用車が消えた際にも、欧州を中心に長く販売されてきました。

シリンダー内にターボで圧縮した空気を送り込み、そこに燃料を直接噴射することで効率を高めるというもの。

採用されるコモンレールタイプの燃料噴射装置と、ピエゾエレクトリックインジェクターから精密にコントロールした燃料を高圧で噴射することにより燃焼を高めており、さらにNOx削減装置を備えるほか、EGRという排気循環システムによってもNOxを低減しています。

残ったPMは、排気系に装備されるディーゼル微粒子捕集フィルター(DPF)によって削減されています。

ちなみにメルセデスなどでは、尿素SCRというNOx浄化装置を使っています。これは、NOxとアンモニアを結合させて、窒素(N2)と水(H20)を生み出すことでNOxを減らすシステムで、このアンモニアの元となるのが尿素というわけです。

TDIのそれは、尿素SCRを使わない浄化装置で、PMの排出量も基準値に収まっている、はずだったのですが…。

マツダのディーゼルの構造

マツダのディーゼルは、圧縮比が低いのがポイントです。これまでのディーゼルのキモは、高圧縮により高温状態となった空気に燃料を噴射する。という構造とそこから生み出されるトルクと低燃費です。

しかし、マツダはあっさりとこれを捨て、圧縮比を落とすことによって、大幅なNOx削減を実現しました。圧縮比が低下するとシリンダー内の温度が下がり、燃料を噴射してもすぐには着火しないため、空気と燃料を上手く混ぜることができ、不完全燃焼が少なくなります。それによって、NOxPMも低減されているといいます。

さらに、圧縮比を下げたことによりエンジンの強度もこれまでのディーゼルのような高強度である必要がなくなり、部品が軽く設計できるようになります。そのため、スカイアクティブDではアルミのシリンダーブロックを使用した、軽いエンジンが作れるようになりました。さらに、圧力を下げたことによりガラガラとうるさい音も減っています。

ところが、点火プラグを持たないディーゼルエンジンでは、圧縮を下げると低温時の始動性悪化や、暖気中の失火という問題が起こります。これに対してマツダでは、バルブの開閉コントロール、マルチホールピエゾインジェクター、セラミックグロープラグなどで、問題を解決しています。

逆転の発想により、ディーゼルの悪癖は、おおむね解消されることになったマツダのスカイアクティブDと、熟成されてきたVWのTDI。同じディーゼルでもまったく違うアプローチですね。

日本の技術力を見せつけるかのようなマツダのスカイアクテイブDは、これからもラインナップを増やしていってほしいところです。


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