最高出力500馬力、世界限定700台のBMW M4 GTS…搭載された水噴射装置の実力とは?

M4 GTS

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東京モーターショーでワールドプレミア(初公開)されるやいなや大人気!早くも全世界限定700台は完売になったというBMW4シリーズの高性能版「M4」のさらなるハイパフォーマンスモデル「M4GTS」そこには単なるスペックにとどまらない、BMWの挑戦がありました。
Chapter
「M3生誕30周年モデル」のベースとなったM4
通常のM4とM4GTSのスペック比較
今度のBMWは「水芸」で攻める!
水噴射装置とBMWの航空機用エンジン
この価格、ライバルと比較して高いか安いか?

「M3生誕30周年モデル」のベースとなったM4

「M4GTS」は、「M3誕生30周年記念」の限定ハイパフォーマンスモデル。現行M3には4ドアセダンしか無いため、かつてのM3クーペのポジションについた「M4クーペ」がベースに選ばれました。

初代M3のキャラクターからは、2015年10月発表の「M2」が近い感じもしますが、特別仕様車を出すにはまだ新しすぎるのかもしれません。

通常のM4とM4GTSのスペック比較

各メディアで既出ではありますが、一応スペックをおさらいしておきましょう。エンジントルクのみNmからkgmに換算してあります。
(カッコ内は通常のM4)

エンジン:直6 3.0Lツインターボ(同)
最大出力:500馬力(431馬力)
最大トルク:61.2kgm(56.1kgm)
0-100km/h加速タイム:3.8秒(4.1秒)
最高時速:305km/h(280km/h)
ミッション:7速DCT(7速DCT/6MT)
車両重量:1510kg(1640kg・7速DCT)
パワーウェイトレシオ:3.02kg/ps(3.8kg/ps)
トルクウェイトレシオ:24.67kg/kgm(26.80kg/kgm)

比較すれば、まさに「GTS」と呼ぶのにふさわしいモデルだという事がわかります。より軽く、よりパワフルにというだけで十分で、「リアコンビネーションランプにBMWの市販車としては初めてOLED(有機発酵ダイオード)を採用!」などというニュースは霞んでしまいます。

通常のM4より130kgも軽量化するためバケットシートやボンネット。ルーフ、リアディフューザーなどもカーボン化。このあたりはボディ各部のカーボン採用に熱心で、日本企業と合弁でカーボン素材工場まで作ってしまったBMWならではのアプローチです。

しかし!BMWらしいアプローチと言えば、大事なものがもう一つあります!

今度のBMWは「水芸」で攻める!

M4GTSがこれだけパワーアップできた理由の一つが「ダイレクト・ウォーター・インジェクション」つまりエンジン内部への水噴射装置です。

ガソリンエンジンに限らず、内燃機関は吸気温度が低いほど効率が良くなり、パワーが出ます。一方、パワーを上げるためターボやスーパーチャージャーといった過給機でブースト圧(過給圧)を高めて吸気を圧縮すると、吸気温度が上がってデトネーション(異常燃焼)が起こりやすくなります。そのため、インタークーラーで冷やしてから吸気を送り、さらに濃く噴射した燃料の気化熱で冷却する必要があるのです。

しかし環境問題に厳しい現代、いかにBMWといえども、ハイパワーのために濃い燃料吹いて燃費や排ガスに悪影響を及ぼせません。そこでガソリンの代わりに水を噴射し、その気化熱で吸気温度を下げるのが「ダイレクト・ウォーター・インジェクション」です。自動車ではレーシングカーやラリーカーで使用例がありますが、市販乗用車ではおそらくM4GTSが世界初採用ではないでしょうか?

しかも、BMWは今から60年以上前の航空機用エンジンで、同種の機構を採用しておりました。

水噴射装置とBMWの航空機用エンジン

元々BMWは航空機用エンジンメーカーでもありました。

第二次世界大戦中にもドイツ空軍の戦闘機「フォッケウルフFW190A」に搭載された空冷星型エンジン「BMW801D」などを開発しており、そこにも水噴射装置を採用していたのです。極寒の高空で凍結を防止するため水とメタノールを混合噴射した「BMW801D」は、通常の1700馬力から、水メタノール噴射中は2100馬力の緊急出力を発揮できたそうです。

第二次大戦後半、ハイオクガソリンが乏しかった日本やドイツの航空機用エンジンは、吸気温度上昇によるデトネーションを防止しつつ出力を稼ぐため、水メタノール噴射を多用しました。そのため、BMWが60年たって市販乗用車用エンジンに水噴射を採用してきたと聞くと、航空ファンにとってはまた別な感動があるんです。

なお、M4GTSの水噴射システムは、5Lのタンクが空になれば使えず、全開走行を続けて水が無くなれば最大出力の500馬力から出力ダウンしてしまうシステムだそうです。水の補充はエアコンから自動的に行われ(冷房を使うと車の下からポタポタ落ちている水の再利用なようです)、走行中でもある程度補充はされるという違いはあれど、最高出力が水の量次第という点は昔の「BMW801D」と似ていますね。

この価格、ライバルと比較して高いか安いか?

さて、最後は既に完売済で2016年早々にデリバリーが開始されるM4GTSの気になるお値段ですが、ヨーロッパ向けは142,600ユーロ(現在の日本円で約1,903万円)です。米国向けは134,200ドル(約1,656万円)という情報もありますが、少し安すぎるかもしれません。日本向けの価格は、イギリス価格の12万ポンド(同2,233万円)に近いと言われており、20~30台が入ってくる模様です。
※レートは2015年12月

そこでBMWが想定しているライバルとの価格比較ですが、メルセデス・ベンツのAMG C63S(1325万円)やAMG GTS(1840万円)よりは高く、ポルシェの911GT3 RS(2530万円)よりは安いという、中間ポジション。案外迷うお値段では無いのかも?

※メルセデス・ベンツおよびポルシェ各車の価格は、各メーカーの日本公式サイトを参照しました。
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Source:
clubmini.jp
carview.yahoo.co.jp
jp.hotcarfans.com
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