BMWの直6エンジン、シルキーシックスは何が良いのか?

BMW 635 CSi

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現代の自動車技術の中で淘汰されつつあるものの一つとして、直列6気筒エンジンがあります。
BMW製直6の「シルキーシックス」という言葉を耳にしたことがある方もいらっしゃると思います。

長年BMWは、なぜ直列6気筒にこだわり続けたのか。
また、BMWの直列6気筒の持つ魅力とはどんなところにあったのでしょうか。
今回はそのあたりを探ってみようと思います。
Chapter
虚飾の日本製高級車群のなかに現れたクラフトマンシップ
直6のメリット、デメリット
ぜひマニュアルでダイレクトに味わってほしい、シルキーシックス
というわけで、今のうちにどうぞ!

虚飾の日本製高級車群のなかに現れたクラフトマンシップ

日本の高級車とは、機能やアクセサリーを充実させることで支持を得ていました。
しかしそれはマッサージ機能だったり、高級オーディオだったりと、クルマを「操る」こととはあまり関係がなく、どちらかというと人間が「住居」に求める機能性に近かったと言えます。

その点、ドイツ車は走らせることの機能を徹底して追求し、ハンドルを握って自らの意思で高速移動することの楽しさや喜びを提供するという価値観を持っていました。日本の高級車とはまったく異なる方向を見てつくられていたわけですね。
しかしそれもそのはず、なにせドイツには速度無制限のアウトバーンという存在がありました。ドライバーが運転に積極的になれるクルマでなければむしろ「危ない」という観点に立っていたというわけですね。

そんな中でもBMWというクルマは、なんといってもエンジンメーカーですから、エンジンを中心に「駆け抜ける喜び」を自らの本分と認識し、主に直列6気筒エンジンの特性を最大限活かしたドライバーズカーとしてのポジションを確立します。

80年代後半、ソアラやクラウン、シーマが闊歩していた日本の道路上を、少し小柄な身体に直列6気筒の珠玉のエンジンを詰め込んだBMWは、それらとは一線を画す、エンジンや走りそのものというクルマの持つ根源的な魅力を訴える、さらにはドイツのクラフトマンシップを武器に多くのドライバーを魅了したのです。

これが日本におけるBMW人気のスタート地点だったと言えるでしょう。

直6のメリット、デメリット

直列6気筒エンジンの魅力とは、なによりそのスムーズさにありますが、その源とはどこにあるのでしょうか。

とてもザックリなご説明になりますが、レシプロエンジンはピストンが上下運動することでクランクシャフトを回転させ、動力とするという仕組みです。その上で複数あるシリンダー、ピストン、それぞれの爆発間隔によって振動の発生のしかたが異なるわけですが、直列6気筒、またはV型12気筒の爆発間隔は各々の発する振動を打ち消し合い、たとえばバランサーシャフトなどを用いなくてもスムーズなフィーリングを獲得できると言われています。

たとえば、クラウンが国産車の中で静かでスムーズという定評を獲得できたのも直列6気筒エンジンによるところが大きかったです。

しかし、直列6気筒エンジンは全長が長くなることでカムシャフトクランクシャフトのフリクション(ねじれ剛性や慣性)管理がややシビアであることと、なにより昨今の安全性確保の風潮から、エンジン全長を抑えてクラッシャブルゾーンに充てるためなどのために、V型エンジンなど全長の短いコンパクトなエンジンが直列6気筒エンジンを淘汰する傾向が著しくなってきています。

安全性と振動の少ないスムーズな走り、この天秤をどちらに傾けるかは、非常に悩ましいところです。

ぜひマニュアルでダイレクトに味わってほしい、シルキーシックス

さてBMWに話は戻します。
BMWが直列6気筒エンジンにこだわり続けたのは、先にも書きましたエンジンとしての振動特性に優れていること、またそれが自らの理想とするエンジンそのものと信じて疑わなかったからでしょう。

もちろん、BMWはのちにV型8気筒や12気筒を作り、それ自体魅力あふれる仕上がりにはなっていましたが、やはりBMWといえば直6というイメージが強いのは確かですよね。

BMWの直列6気筒が、その長所や魅力をさらに引き立てている面があるとするならそれはエンジン以外の部分にも目を向ける必要があるでしょう。
まず、フリクションの少ない軽い回転フィーリングを活かす、ソリッドなエンジンマウント。振動が少なければその分エンジンマウントで振動を殺す必要がありませんから、エンジンマウントのゴムは非常にソリッド、であるがゆえに、エンジンのパワーや鼓動がダイレクトに伝わり、走行フィーリングに雑味がなく、エンジンそのものの魅力がそのまま走りに魅力に直結しているわけですね。
もちろん、その良さをさらにきちんと味わいたいと思うなら、オートマよりマニュアル、というのは、クルマ好きの方ならお分かりだと思います。ダイレクトにつながるマニュアルトランスミッションなら、エンジンの素晴らしさをより濃厚に味わえるはずです。

が・・・。

日本に入ってきているBMWの直列6気筒車のマニュアル、これが本当に少ない。E36のM3、E46のM3、E34のM5、もっとレアなところではE30の320iのスポーツパッケージとか。あと、E46の330iなどもありますが、これらすべて、かなりのレア車。

とはいえ大昔の、たとえばE30の頃はオートマチックのトルコンの滑りも大きかったですし、シルキーシックスの良さを少なからず削いでしまっていましたが、最近の、たとえばE90あたりのオートマならダイレクトさも身につけていますからさほど心配はないかもしれません。

経験談で申し上げておきますと、87年E30型の320i、4段オートマでも十分にカンドウできたものです。
それくらい、当時からBMの直6は違いました。

というわけで、今のうちにどうぞ!

あまり見向きもされていない感じがしますが、「手に入れやすい」直6搭載車、けっこう絶滅危惧種です。

国産モノでもたとえば最新で17系クラウンや110系マークⅡあたりになってしまいますし、当のBMWで直6を新車で買おうとするとかなりの高いグレードになってしまいます。
かといって中古は中古で、じつは国外へ転売されているという事実もお伝えしておく必要があります。
アフリカや東南アジア方面のバイヤーが、日本にあるBMWの中古の6気筒エンジン車を買いあさっているという事実はけっこう知られていません。あちらではいい値段で売れるそうです。ましてや日本では人気がないから安く仕入れられていい商売になってしまう。昔、アメリカモノの並行輸入が日本で幅をきかせたのと同じ原理。

と、いうわけで、安く手に入る今のうちに!というのはけっこう現実的なお話です。

理想のエンジンと言われながら、時代とともに淘汰されつつある直列6気筒エンジン。とくにBMWの直6は、クルマ好きなら、今のうちに、買えるうちに、味わっておいて損はないと、言い切ってしまいたいところでもあります。

低速から滑らかに力を発揮し、タコメーターが上り詰めるのと同調するように素晴らしいサウンドを楽しませてくれるシルキーシックス。どんなにがんばっても他のエンジン型式では再現できないこのフィーリングをぜひご堪能いただきたいものです。

<前田恵之進>
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