初代バネットセレナから始まった日産 セレナの歴史【プロ徹底解説】

日産 セレナ e-POWER ハイウェイスターV(C27)

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初代のバネットセレナから25年以上、世代交代を繰り返しながら生産されてきた日産の2リッタークラスミニバン、セレナ。

日本独自の5ナンバーサイズにこだわりながら、広さと快適性をどのように進化させてきたのか?振り返ってみましょう。

文/萩原 文博

萩原 文博|はぎはら ふみひろ

1970年生まれ。10代後半で走り屋デビューし、大学在学中に中古車情報誌の編集部にアルバイトとして加入。1995年より編集部員として編集作業に本格的に携わる。中古車の流通、販売店に精通し、「中古車相場師」として活動。2006年からフリーランスの編集者となり、中古車だけでなく、現在は日本で最も多くの広報車両を借り出して取材を行い、新車でもユーザー視点のバイヤーズガイドを中心に、人気車種の動向や流行りの装備の価値評価などを加味した、総合的に買いのクルマ・グレードの紹介をモットーとしている。

萩原 文博
Chapter
まだエンジンが運転席の下にあった初代セレナ
ミニバン専用プラットフォームで大きく進化した2代目
熟成の度合いを高めた3代目|プラットフォームをルノーと共同開発
室内がより大きく快適になった4代目
安全&動力性能に磨きをかけた5代目(現行モデル)

まだエンジンが運転席の下にあった初代セレナ

初代セレナ(C23型)は、ワンボックス車のバネットコーチの後継車として、1991年にデビューしたバネットセレナです。運転席下にエンジンをレイアウトしながら、フロントノーズも持ったセミキャブオーバー車でした。

1.6Lと2.0Lの直列4気筒ガソリン、2.0Lの直列4気筒ディーゼル(1993年まで販売)、2.0Lディーゼルターボの4種類のエンジンに、組み合わされるミッションは5速MTと4速ATがありました。

このバネットセレナの特徴は、当時、日産社内で展開されていた「901運動」により、ワンボックスでありながらリアサスペンションにマルチリンクを採用(一部グレードのみ)したり、最上級グレードには四輪操舵のスーパーHICASやビスカス式LSDを採用するなど、高いハンドリングと走行安定性を実現していたことでした。

1994年5月、車名からバネットが取れ、セレナに変更されました。

1997年1月のマイナーチェンジでは、外観デザインの変更に加えて、2、3列目シートにマルチスライドシートを採用し、多彩なシートアレンジが可能に。は、ディーゼルターボが新しくなるとともに、1.6Lガソリンは廃止されるなど整理が行われました。

そのいっぽうで、特別仕様車として発売されていた“ハイウェイスター”がカタログモデルとして設定され、エアロパーツ付きミニバンのルーツとなっています。

ミニバン専用プラットフォームで大きく進化した2代目

2代目のセレナ(C24型)は1999年に登場し、2005年まで販売されました。

先代モデルのC23型はビジネスモデルと共用のプラットフォームでしたが、2代目ではワゴン専用車として開発された低床プラットフォームへと刷新され、駆動方式もFR(後輪駆動)からFF(前輪駆動)に変更されました。

低床化により室内空間も拡大された2代目は、ミニバンとして初めて両側スライドドアを採用。さらにシフトレバーもコラム式に変更され、前席から後席だけでなく、前席間のウォークスルーも可能となるなど利便性が向上しています。

FFの駆動方式を採用したこの2代目セレナが現在のセレナのルーツと呼べるモデルです。

モデル体系は標準モデルとエアロパーツを装着したハイウェイスターの2系統。パワートレインは2.0L直列4気筒ガソリンエンジンと2.5L直列4気筒ディーゼルターボエンジンの2種類。組み合わされるミッションは全車CVTでした。

2000年6月は、室内高を105mm高めたハイルーフ車を一部グレードに追加設定。2001年12月のマイナーチェンジでは、内外装デザインの変更に、両側リモコンオートスライドドア機構の追加で利便性を向上。

2.5Lディーゼルを廃止し、かわりに2.5L直列4気筒ガソリンエンジンを追加。2.0LガソリンエンジンはQR20DE型に変更されました。

熟成の度合いを高めた3代目|プラットフォームをルノーと共同開発

3代目セレナ(C25型)は、2005年5月に販売開始されました。

フランスのルノー社と共同開発したプラットフォームを採用し、2,860mmというロングホイールベースにより、当時クラストップの室内空間を実現しました。

当初、エアロ系ボディのハイウィスターの設定はなく、そのかわりにフロントグリルのある標準系とグリルレスのスポーティ系が用意された3代目セレナのパワートレインは、新型の2.0L直列4気筒ガソリンエンジンのみで、エクストロニックCVTを組み合わせることで、滑らかな加速性能と高い燃費性能を両立していました。

ハイウェイスターは2006年6月に追加。ほかのモデルは5ナンバーサイズですが、エアロパーツを装着したハイウェイスターは全幅が1,700mmを超え3ナンバー登録となりました。

マイナーチェンジは2007年12月で、エクステリアを刷新すすると同時に、両側スライドドアオートクロージャーを全車標準装備。ハイウェイスターはバイキセノンヘッドランプやアクティブAFSを追加。さらに専用サスペンションを採用し、走行性能に磨きを掛けました。

またこのタイミングスポーティ系の20RS、20RXが廃止されました。

室内がより大きく快適になった4代目

4代目セレナ(C26型)は2010年11月に登場し、2016年まで販売されました。

基本骨格となるプラットフォームは先代からのキャリーオーバーですが、室内長は先代より300mm拡大され、クラストップの室内空間を実現しているのが特徴です。

モデル体系は5ナンバーサイズの標準系と、エアロパーツを装着した3ナンバーサイズのハイウェイスターの2種類。搭載するエンジンは、新開発の2.0L直列4気筒直噴ガソリンエンジンの1種類で、ミッションは全車CVTが組み合わされます。

パワートレインは、エントリーグレードを除いてECOモーターを採用したアイドリングストップ機構を採用し、再始動時の時間短縮と静粛性を向上させています。

装備面では、開口部を広げて利便性が向上したスライドドアには、ボタンを押すだけで開閉できるワンタッチオートスライドドアを装備しました。

2012年に行った一部改良で、2WD車(20Sを除く)に新開発のスマートシンプルハイブリッドを搭載。燃費性能を向上させています。

2013年12月のマイナーチェンジでは、内外装デザインの変更に、前方の車両だけでなく歩行者も検知できるエマージェンシーブレーキとLDW(車線逸脱警報)を全グレード(20Sは2015年の一部改良時に設定)に標準装備

踏み間違い衝突防止アシスト・ふらつき警報・MOD(移動物検知)機能付アラウンドビューモニターをひとまとめにした“アドバンスドセーフティ パッケージ”を追加しています。

安全&動力性能に磨きをかけた5代目(現行モデル)

現行型となるセレナ(C27型)は、2016年8月に登場しました。

日産のデザインアイコンであるVモーショングリルを採用し、エクステリアが今日的なものになりました。

室内は、先代モデルよりも180mm長い3,240mmとなり、クラストップの室内空間を実現。1列目と2列目シートのヘッドレストに穴あきタイプを採用することで、前方や後方の視界を確保しています。

装備面では、インテリジェントキーを身に着けている状態でスライドドアの下にキック操作するだけでドアが自動開閉するハンズフリーオートスライドドアと、上部のガラス部分のみの開閉も可能なハーフバックドアを備えたデュアルバックドアを採用するなど利便性も高めています。

パワートレインは、モーター機能を強化した2.0L直列4気筒エンジンを核としたS-(スマートシンプル)ハイブリッドが、従来の2WD車に加えて、4WD車にも搭載されています。

そしてなんといっても5代目セレナのトピックは、運転支援システムの“プロパイロット”を搭載したことです。

そのほかにもスマート・ルームミラー、アラウンドビューモニター、エマージェンシーブレーキ、踏み間違い衝突防止アシスト、LDW(車線逸脱警報)、さらに駐車枠を指定すると自動でステアリング操作を行い、駐車や車庫入れをサポートするインテリジェントパーキングアシストも搭載されました。
1.2Lガソリンエンジンで発電し、その電力でモーターを駆動させて走行するe-POWERモデルの追加は2018年2月のこと。

2019年8月にはマイナーチェンジを行い、内外装の変更と同時に、日産車初のアダプティブLEDヘッドライトシステム、走行中に隣接レーンの後側方の接近車両との接触回避を支援するインテリジェント BSI(後側方衝突防止支援システム)やBSW(後側方車両検知警報)、後退時に後方を横切ろうとする車両を検知して注意喚起するRCTA(後退時車両検知警報)、踏み間違い衝突防止アシストなど、安全運転に役立つシステムが全車標準装備となりました。

またプロパイロットは、下り坂での設定速度保持やブレーキ操作が可能となっています。さらに2020年の一部改良では、インテリジェントFCW(前方衝突予測警報)も全車に標準装備し、安全性を向上しています。

 
セミキャブオーバースタイルを採用し、高い走行性能を実現した初代セレナから2016年に登場した5代目モデルまで、つねにセレナはその時代のニーズに応えてヒットしてきました。

特に現行モデルは2016年登場と、ミニバンでは最後発となった利点を活かして本来の運動性能にくわえて、広い室内空間やデュアルバックドアなどの利便性、そしてプロパイロットなど安全性と三拍子揃ったモデルとなっています。
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