電子制御が無いFRに乗るならラストチャンス!? マツダ NB ロードスター徹底解説

マツダ ロードスター NBロードスター

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歴史的大ヒットを記録したユーノスロードスター。その後継モデルとして2代目マツダロードスターは1998年に登場しました。

シリーズ最後の5ナンバー車となるこのモデルは現在でも多くのユーザーに愛されています。中古価格も現在なら比較的リーズナブルで、中古車で「遊びクルマ」を探す際にもよく候補に挙げられやすいモデルです。

果たしてどのようなグレードが存在し、利便性や乗り味、中古車市場はどうなっているのでしょうか?今回はそのような点を解説していきます。

文/写真・西川 昇吾

西川 昇吾|にしかわ しょうご

1997年生まれ。富士スピードウェイ近隣で生まれ育ち、大学で自動車に関する学習をする傍ら、自動車ライターとしての活動を始める。過去にはコミュニティFMのモータースポーツコーナーにてレギュラー出演経験あり。「書くこと、喋ることで自動車やモータースポーツの面白さを伝える」を目標とし、様々なジャンルのライティングや企画に挑戦中。

西川 昇吾
Chapter
歴史的ヒット作の初代ロードスターから近代化改修された2代目
大きく変わったエクステリアデザイン
シンプルでドライビングに集中できるインテリア
広くないが工夫次第で実用的なトランク
現代水準から見ると簡素な装備
低速域でも楽しいハンドリング
全世界で愛されても欠点はある
バリエーション豊かな限定モデル
1999年「10周年記念車」
2001年「マツダスピード ロードスター」
2003年「ロードスター クーペ」
2004年「ロードスターターボ」
中古車を選ぶポイントは?
電子制御がない最後の世代を味わうなら今

歴史的ヒット作の初代ロードスターから近代化改修された2代目

1998年にデビューしたNB型ロードスターは初代NA型の正常進化型と言えるモデルです。基本的なパッケージに大きな変化はありませんが、NA型のネガを潰しグッと現代的になりました。

グレードは1.8Lエンジン搭載車と1.6Lエンジン搭載車の2種類に大きく分けられ、それぞれでMTとATが選べます。しかし走りに振ったグレード(RSなど)ではMTのみの選択となります。

2005年まで販売されたモデルですが、2000年7月にビックマイナーチェンジが行われ、それ以前の年式のものを前期型、それ以降の年式のものを後期型と分けられています。
このビックマイナーチェンジで大きなトピックスはエンジン。1.8Lモデルに可変バルブ機構「S-VT」が採用され、出力が前期型に比べ15馬力向上しました。

それ以外にもブレーキを中心とした足回りの強化やボディ剛性の向上などが走りの進化として挙げられます。

装備面でもキーレスエントリーが上位グレードに採用されたりシートの質感が向上したりと、より現代的になりました。

また様々なマーケティングチャレンジが行われたのもNBロードスターの特徴。
バリエーション豊かな限定車が存在したり、ウェブでエンジンやトランスミッション、ボディ&インテリアカラー、各種オプションを自由に選んで注文できる「ウェブチューンド」システムなどが存在したりしました。

大きく変わったエクステリアデザイン

NA型からNB型へモデルチェンジした際大きく変わったと言われたのはエクステリアデザインです。

リトラクタブルヘッドライトを採用し愛くるしいフロントフェイスで「カエル顔」とも表現されたNA型ですが、NB型では一般的な固定型のヘッドライトとなりました。

これは後に「突起物」扱いとなり装備が禁止されるリトラクタブルを捨てなければいけなかったためです。また固定式ヘッドライトを採用することによりフロントオーバーバング部分の軽量化も実現しています。


ビックマイナーチェンジでは大きく顔つきが変わりました。ちょっと「可愛らしい」イメージのあった顔つきからシャープな顔つきに変化。

前期型のフロントフェイスがお気に入りというユーザーもいますが後期型の方が人気で、中には後期型のヘッドライトやフロントバンパーを流用してしまう前期型オーナーもいるほどです。

シンプルでドライビングに集中できるインテリア

インテリアは現代のクルマに比べると至ってシンプル。基本的な操作系は変に凝った造りではなく誰もが自然と使えるように出来ています。

メーターも視認性がよく瞬時に必要な情報を見ることが可能で運転へ集中することを主題として造られている印象を受けます。なお、後期型はホワイトメーターとなります。


パッと見大きな差がない前期型と後期型のインテリアですが、後期型はシート形状が変更を受けよりホールド性が高いものとなっています。その他にもセンターコンソールにドリンクホルダーが装備され使い勝手が向上しています。

またインテリアカラーバリエーションが増えたのも後期型の特徴。ブラックとキャメルカラーのみだったバリエーションに、レッドの差し色が入ったバージョンが選べるようになりました。(RS-Ⅱグレード)

広くないが工夫次第で実用的なトランク

決して広いとは言えないNBロードスターのトランク。ですが確実にNA型に比べて進化しています。

NAロードスターのトランクはスペアタイヤがむき出しの状態でしたが、NBロードスターの場合はトランク内装下にスペアタイアが配置されています。トランクを開けた時の質感が向上しました。

また、カサがあるものを積みたい時はスペアタイヤを下ろして内装を外せば積むことができます。このスペアタイヤを下ろす。内装を外すという行為が簡単に出来るのも特徴。

おそらく開発時から大きなものを積むときだけ…という使い方が考えられていたのでしょう。もちろん元に戻すのも簡単で短時間で行うことができます。

現代水準から見ると簡素な装備

現代のクルマに比べると各種装備は簡素なものとなっています。とは言えパワーウィンドウやエアコンといった基本的な装備が標準で備わっているのはありがたいでしょう。中古車を探すときにグレードに気を使う必要が少なくて済みます。

逆にシガーソケットにシガーライターが装備されている点は時代を感じさせます。ですが大きく時代を感じさせるのは安全装備面です。
横滑り防止装置やトラクションコントロールが装備されていないのはもちろんのことですが、なんとABSですら標準装備されていないのです。(MT車)

ABSはメーカーオプションとして用意されていました。中古車を購入する際に気になる方は実際にチェックした方がいいでしょう。

またグレードごとの装備の違いで挙げられるのがLSDの有無です。NBロードスターにはトルセンLSDが採用されていますが、AT車や1.6Lの下位グレード車には装備されていません。

低速域でも楽しいハンドリング

歴代ロードスターはリアタイヤが着座位置から近いため、お尻を中心に回っていくような軽快なステアフィーリングが魅力の一つで、NBも当然このフィーリングを持っています。

ドライバーが神経を尖らせていればステアリングの僅かな動きに反応してくれる様子が手に取るように分かり、街乗りの低速域でも荷重移動を学ぶことが出来るのがこのクルマの魅力。

先代より性能が高くなりましたが、約20年前の話。限界は高いですが後継のNCやNDと比べると時代の差を感じます。

NAに比べると滑り出しも穏やかでスライドしてからのコントロール性は高いですが、基本的なフィーリングは一緒。「扱いやすく、限界が高くなったNAロードスター」という表現がNBロードスターには合っているかもしれません。
オープンにして走ると当時のオープンカーとしては風の巻き込みは少なくて済みます。オープンにするのもとっても簡単。

2つのロックを外して幌を開けるだけ、幌もガラスウィンドウなので変に気を使う必要はなく、慣れれば運転席に座ったまま開けることができます。このような気軽さがNAから進化したポイント。

1.6Lと1.8Lが用意されるエンジンですがハッキリ言って速くないです。それは15馬力パワーアップした1.8Lの後期型エンジンでも同じことが言えます。

しかしそれでも多くのドライバーに愛されるモデルであるのは、エンジンによる速さがどうでもよくなる程ハンドリングが楽しいクルマということでしょう。

全世界で愛されても欠点はある

今でも人気の高いNBロードスターですが、欠点が決してないわけではありません。むしろ現オーナーに聞くと苦笑いしながら喋ってくれるという印象です。

荷物が乗らなくて不便だとか、古いクルマだから気を使うところが多いなんて言ってしまうのはナンセンスでしょうが、当時のライバルモデルと比べると「隣の芝生は青い」と感じるポイントもあります。

それはエンジン。ハッキリ言って速くないと先に書きましたが、そのエンジンフィーリングは「乗用車のエンジンだなぁ…」という印象。当時このクラスで無敵の速さを誇ったホンダのVTEC軍団などと比べてはいけません。

エンジンパワーはもちろん、ハイメカチューンの高回転まで突き抜けるフィーリングも期待してはいけません。
それは吸気バルブタイミングを最適化するS-VT機構を採用し、160馬力を誇る後期型1.8Lモデルでも一緒。

VTECはもちろん、三菱のMIVECエンジンのような「この回転からパワーが湧いてくる!」というトキメキもありません。

ロードスターに搭載されたエンジンは乗用車エンジンベース。それを長年改良し続けてきて進化させてきたものです。スポーツエンジンらしいトキメキがないのがスポーツカーとしての欠点でしょう。

しかしそれが全て悪いわけではなく、全域でトルクフルなエンジンは初心者でも扱いやすく、街乗りでギアチェンジの回数が少なく済むのです。

バリエーション豊かな限定モデル

約7年販売されたNBロードスターですが、ロードスター兄弟の例に漏れず様々な限定モデルが多く登場しました。

しかし、NBロードスターは他のロードスター兄弟と違い、クローズドクーペボディや過給機付きモデルなど異色の限定モデルが世に送り出されました。そこで他とはちょっと違った限定モデルを中古車動向と共に紹介していきます。

1999年「10周年記念車」

1989年に販売が開始された初代ロードスターは世界的な大ヒット。そのロードスターの販売10周年を記念したモデル。世界7500台限定で、運転席側のフロントフェンダーにシリアルナンバーが刻まれたオーナメントが施されています。

走りのトップグレード「RS」をベースに仕上げられているこのモデル、見えるところはもちろん見えないところもこだわって造られています。

まずエクステリア。ボディカラーは当時販売されていたマツダのフラッグシップスポーツカーRX-7のテーマカラーの「イノセントブルーマイカ」に塗られています。標準で黒の幌も青色に、ホイールはバフ仕上げできらびやかになっています。


インテリアを見るとステアリングやシートにブルーの差し色が施されている他、フロアマットまでもがブルーになっています。

そしてこのモデルの注目がエンジン。スペックこそカタログモデルと変わりはありませんが、バランス取りされたピストン、コンロッドが組み込まれていて、フライホイールもノーマルとは異なるものが採用されています。

NBロードスター史上ピカイチのエンジンレスポンスを見せるのがこの限定車の魅力です。

中古市場ではベースとなった前期型RSと比べると特段高値で取引されている訳ではありませんが、流通台数は多くありません。走りの気持ち良さを求めるならばオススメなので、条件が合えばまずは現車確認が吉でしょう。

2001年「マツダスピード ロードスター」

後期型RSをベースにチューニングされたモデル。200台限定で販売されました。簡単に言えばマツダスピードのパーツが装着されたお買い得モデルという限定車です。エクステリアでまず印象的なのがボディカラーです。

当時新色のスターリーブルーマイカで塗られています。カタログモデルには無かった鮮やかな青です。そしてホイールもゴールドに塗装されています。その他には純正オプションでも選べたエアロパーツが標準で装備され、よりスポーティな見た目に仕上げられています。

そしてこのモデルの価値は中身にあります。まずノーマルながら車高調整式サスペンションが標準装備されています。そして排気系チューニング、エキゾーストマニホールドとテールマフラーはマツダスピード性へ変更されています。

NBロードスターを検討している方はカスタマイズ前提の方も多くいるかもしれませんが、様々定番機能系パーツが最初から装着されているマツダスピードロードスターは、カスタマイズ前提の方にオススメの1台です。中古市場の動向は10周年記念車と近いものがあります。欲しい人は条件が合えばまずは現車確認をオススメします。

ですが、市場の中には低走行で金額が高い個体もあるので、のちにカスタマイズすることを考えると、このような個体はあまりお買い得とは言えないでしょう。

2003年「ロードスター クーペ」

2003年に受注生産という形で販売されたロードスタークーペ。ロードスターなのにクーペという矛盾したモデル名が特徴。

奇しくも「国産車最後の5ナンバーFRクーペ」となったロードスタークーペ。(2020年現在)限定車ながらオープンボディをベースにクーペを作るという大胆なモデルはそうそうありません。

スポーティなエアロパーツを装備したTypeA(限定200台)。エレガントなTypeE(限定150台)。ベーシックなTypeSが用意されました。しかし、工場の火災によりラインオフされたロードスタークーペは全体で200台にも満たないそうです。

中古市場では希少性もあり高値で取引されている傾向にありますが、まず出物が出てきません。あっても新車価格並みかそれを超える金額で取引されています。

2004年「ロードスターターボ」

歴代ロードスターの中で唯一過給機が搭載されたモデル(2020現在)国内限定350台で販売されました。名前の通りターボでパワーアップが図られ、それに伴い駆動系や足回りも強化されています。

気になるパワーは…カタログモデルと比べ12馬力アップの172馬力。トルクは4kgmアップの21.3kgmとなっています。過激な過給機チューンでないですが、馬力アップよりもトルク向上による体感効果の方が大きいでしょう。

中古市場ではこちらもカタログモデルに比べ高値で取引されていますが、クーペよりは強気の金額設定ではない印象。軽量でそこそこのパワー&トルクのFRが欲しいという方には、魅力的なモデルではないでしょうか。

中古車を選ぶポイントは?

金額の幅が大きいのがNBロードスター中古市場の特徴。1.6LエンジンのAT車で20万円を切るものから、上は300万円オーバーのクーペまでという具合。バリエーションも豊かなので目的に合ったグレードや年式を選ぶのがまず重要です。

まずサーキットでのスポーツ走行等を考えていて走りを重視する方には後期型の1.8Lモデルの「RS」がオススメ。

金額は車両の状態によって差がありますが、走行距離よりも修復暦の有無やボディの状態を気にしましょう。ただ人気が高いので狙っていた個体がすぐに売れてしまうことも、気になった個体があればまずは問い合わせてみましょう。

次に「ドライブを楽しみたい」という方。MTかATか、1.6か1.8か、前期か後期か…など色々あると思いますが、そこまでの速さを求めないのであれば色や見た目(前期or後期)などの好みで探すのをオススメします。
自身で探すならば各々条件があるはず。その条件に合った個体を見つけることが、NBロードスターを長く楽しめる秘訣。

さて、ここまではグレードの話、ここからは実際に探す際のチェックポイントを簡単ながらご紹介しています。まずは走行距離よりもボディや下回りの状態にこだわりましょう。

目立つサビがある個体や、下回りがオイルまみれな個体は避けたほうがいいです。修復暦はしっかりと直されているのが分かっていて、納得して購入するならいいでしょう。

そして幌。最終型でももう15年も前のクルマ。1度は幌を交換していないと状態はひどいものが多いです。状態がひどいものは交換前提で割り切って考えた方がいいでしょう。
なお、幌よりも車体の状態の方が優先です。車体の状態がよく幌も最近交換したばかりの個体ならバッチリでしょう。

「走行距離は本当に気にしなくていいの?」という声もあるかもしれませんが、10万キロ超えの車両でもキチンとメンテナンスしていれば丈夫なエンジンはトラブルに悩まされることは少ないです。

ただ絶対ではありません。古いクルマという理解と割り切りは必要です。

何はともあれ、NBロードスターをこれから購入しようと思うならば、先に述べたように色などで「好きになった個体」を乗るのが一番かもしれません。

電子制御がない最後の世代を味わうなら今

ここまでNBロードスターを紹介してきました。冷静に考えてみると「今更NB?」という声もあるかもしれません。

しかしNBロードスターは現代の交通状況で一番苦労なく「自然吸気・FR・MT・電子制御なし」という基本系を味わえる1台でしょう。

そのような観点からも運転技術を学ぶために選ぶのはもちろん「アガリの1台」に選ぶのにもオススメです。

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