日本のトップサスペンションメーカー「TEIN」がプレミアム・リプレイスメントで世界に打って出る

TEIN リプレイスメント 発表会 宮越孝政

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自動車のアフターマーケット市場というと、いわゆるチューニングやカスタムを想像するかもしれないが、それだけではありません。リプレイスメントと呼ばれる補修部品のマーケットも大きく、とくに世界中で自動車の販売台数が増えている昨今、グローバルには拡大中です。チューニングでは、趣味性の強い乗り味や性能アップが求められますが、リプレイスメントでは純正相当の機能や耐久性、そしてリーズナブルな価格が求められます。そうした世界のリプレイスメント市場に、日本のチューニングサスペンション業界のトップランナーである「TEIN(テイン)」が本格参入するという未来戦略が発表されました。

文・山本晋也/写真・宮越孝政

山本 晋也|やまもと しんや

自動車メディア業界に足を踏みいれて四半世紀。いくつかの自動車雑誌で編集長を務めた後フリーランスへ転身。近年は自動車コミュニケータ、自動車コラムニストとして活動している。ジェンダーフリーを意識した切り口で自動車が持つメカニカルな魅力を伝えることを模索中。

山本 晋也
Chapter
創業1985年、日本では車高調整サスの4割を占める
純正相当の交換品=リプレイスメントに向けた新製品
「エンデュラプロ」に試乗、大容量のよさを実感した

創業1985年、日本では車高調整サスの4割を占める

代表取締役専務 藤本 吉郎氏
もともとはラリーなどモータースポーツ用サスペンションを開発するメーカーとして1985年に誕生したTEIN(テイン)。ニッチなニーズに応えるために鍛えた技術力は、多くのユーザーの求めるスポーツサスペンションにつながります。いまでは日本国内における車高調サスペンション市場においてシェア40%を占めるほどの支持を集めているほか、2002年にはJASDAQ市場に上場するなどアングラなチューニングとは一線を画したクリーンなイメージが特徴です。
ちなみに車高調サスペンションというのは、スプリングシートやブラケット部分の位置を動かすことでクルマの車高を変えることができるサスペンション。かつてはマニアックなチューニングアイテムでしたが、それをポピュラーなものとしたのも、テインの果たした功績のひとつといえるでしょう。
さて、テインがリリースしているのはスポーツサスペンションとしての車高調だけではありません。2017年には純正形状の「Endura Pro(エンデュラプロ)」、「Endura Pro PLUS(エンデュラプロ プラス)」を発売しています。これは、ノーマルスプリングを使うことを前提とした純正形状のショックアブソーバーで、車高調サスペンションで鍛えた高品質や優れた耐久性を持った、リプレイスメントのイメージに近いサスペンションになります。なお、「Endura Pro PLUS」には16段階の減衰力調整機構が備わるのが特徴。減衰力というのはスプリングが伸び縮みする際の振動を抑える機能のことですが、その強弱を調整できるということは乗車人数により変化してしまう乗り心地の確保や、速度域の違いによる安定感の違いなどでアドバンテージを持つということになります。スポーツサスペンションでの経験が活きた純正形状のショックアブソーバーというわけです。

純正相当の交換品=リプレイスメントに向けた新製品

テインでは「Endura Pro」シリーズをプレミアム・リプレイスメントと定義しています。世界中でニーズの高まるリプレイスメント向けのショックアブソーバーにおいて、テインらしい味付けを加えたアイテムというわけです。ところで、なぜ世界的にショックアブソーバーのリプレイスメント市場が拡大しているかといえば、自動車の普及に対して、まだまだ道路などの基本的なインフラ整備が進んでいないことが挙げられます。日本では、多くの道が舗装され、ショックアブソーバーが壊れてしまうようなことはありません。保安基準を満たすというレベルでいえば、クルマの寿命とショックアブソーバーの寿命は同程度といえます。しかし、悪路ばかりを走るような地域ではショックアブソーバーへの負担は大きく、なかには一年程度の交換を余儀なくされることもあるといいます。タイヤとショックアブソーバーは毎年新品にする、というわけです。
写真:フロント側
写真;リア側
テインによると、そうして地域では純正ショックアブソーバーの再生事業などもあるそうですが、もともと容量や強度が足りない純正ショックアブソーバーですから交換頻度が短くなるわけではありません。日本ではライトチューン的なスポーツサスペンションのエントリーといった捉えられ方もしている「Endura Pro」シリーズは、強度や容量をアップしたケースやスポーツサスペンションで鍛えたピストンロッドといった部品の内製化による高品質がセールスポイントです。つまり純正よりも優れた補修部品=プレミアム・リプレイスメントといえるというのが、その主張です。
さらに「Endura Pro」シリーズには、ラリーで鍛えた『H.B.S.(ハイドロ・バンプ・ストッパ)』というテインの独自テクノロジーが採用されています。一般的なサスペンションではショックアブソーバーがフルストロークしないようゴムやウレタンでできたバンプラバーという部品を使って大きな衝撃を吸収しています。しかし、バンプラバーは変形によって衝撃を受け止めますから、その反動でクルマが上下に揺れてしまいます。これが段差を乗り越えたときのブァンブァンとした動きになります。しかし、H.B.S.はオイルによって受け止めるため、衝撃は熱エネルギーに変換されます。つまり、段差を乗り越えたときの揺れ返しが非常に少なくなるといいます。
「Endura Pro」シリーズは耐久性で純正品を超え、また乗り味でもテインらしさを示す純正のアップグレード部品、すなわちプレミアム・リプレイスメントといえるのです。

「エンデュラプロ」に試乗、大容量のよさを実感した

では、「Endura Pro」シリーズの走り味はどのようなものなのでしょうか。テインが用意したデモカーに試乗することができました。クルマはトヨタ・ヴェルファイア、インチアップしたタイヤを「Endura Pro PLUS」が支えるといったフットワークになっています。
写真:操作イメージ
試乗は、標準設定といえる減衰力8段で行ないました。
まず感じたのはタイヤが路面を捉えている様子がステアリングを通してリアルに手に伝わってくることです。試乗車には245/40R20という大きなタイヤが装着されていましたが、幅広いトレッド面が舗装を掴んでいる様子が、まさに手に取るように感じます。またインチアップしているタイヤは純正より重くなっていますからバタつきを感じるものですが、全体にしっとりとしたフィーリングになっているのは、まさにプレミアムといえる印象。いずれにしてもショックアブソーバーの剛性と容量がアップしていることが感じられたのです。
H.B.S.の効果は大きな段差での乗り心地にありますが、まずは運転席で体感すると20インチのタイヤとは思えないほどスッと衝撃を受け止めることに驚かされます。さらにヴェルファイアでは主役が座る2列目シートでも印象は変わりません。段差を乗り越えたときの衝撃が一発で収束することが実感できます。インチアップというのは乗り心地にはネガが大きいカスタムですが、快適性を犠牲にしないカスタムを楽しむにはこうしたサスペンションのチューニングというのも重要である、とあらためて実感することができました。
こうした乗り心地面でのアドバンテージというのはモータリゼーションが進む地域においてユーザーニーズと合致することは容易に想像できます。
テインでは「Endura Pro」シリーズの生産拠点を中国に置き、グローバルサプライチェーンを確立。中国、モンゴル、アセアン地域での展開を考えているといいます。さらに欧州車への対応も進め、ヨーロッパでの成長も狙っています。 世界戦略製品といえる「Endura Pro」は、リプレイスメント市場向けですから1~2万円/本というリーズナブルな価格も魅力。サスペンションのライトチューンとして、覚えておきたい名前といえるでしょう。
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