ポルシェ911やVWビートルに採用された「スポルトマチック」とは?

ポルシェ 911タルガ 1967年

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古いポルシェ911やフォルクスワーゲン ビートルの中古車には「スポルトマチック車」と書かれている個体が存在する。このスポルトマチックとは何なのだろうか。

文・山本晋也
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1960年代にポルシェが開発した2ペダルMT
トルクコンバーターとクラッチを併用していた
自動変速のない2ペダルは国産ではMR-Sが最後

1960年代にポルシェが開発した2ペダルMT

1967年に生まれたスポルトマチック車のコクピットを確認すると、シフトノブにはHパターンが描かれているのにペダルは2つしかないという、現代の感覚からすると不思議な光景になっている。

つまり、クラッチ操作は自動ながら、変則操作はマニュアルという2ペダル・トランスミッションがスポルトマチックなのだ。

ちなみに、つづりは「SPORTOMATIC」となる。現在、韓国系ブランドのKIAが「Sportmatic」という商標でマニュアルモードを持つオートマチックトランスミッションを用意しているが、つづりが違うことからもわかるようにも完全に別物だ。

トルクコンバーターとクラッチを併用していた

スポルトマチックのドライビングは、クラッチ操作が機械任せとなっているだけで、ほぼマニュアルといえるものだ。クラッチ操作のトリガーはシフトレバーの動きを検知するセンサーで、シフトを動かそうとするとセンサーが検知してソレノイドを作動させることでクラッチを切り、シフトチェンジを行なってシフトレバーから手を離すとクラッチをつなぐという仕組みだ。

そのためシフトノブにずっと手を置いているクセのあるドライバーではクラッチが切れっぱなしになってしまうのでクセの修正が必要である。ユニットのベースとなっているのは4速MTもしくは3速MT。といってもMTをベースにクラッチを自動にしているだけではなく、駐車時にギアをかみ合わせておくパーキングロック用のギアセットも持っているなど構造は異なっている。

その最大の特徴は、エンジンとトランスミッションの間にトルクコンバーターを介していることだ。トルクコンバーターとギアセットの間に単板式クラッチが置かれている。トルクコンバーターを使うことで、ギアを抜かず(ニュートラルにせず)に停車してもエンジンが止まってしまうことはない。

もちろん、発進時でもトルクコンバーターを使ったことでスムースネスに貢献できる。前述したようにパーキングロックを必要としたのも、こうしてトルクコンバーターを使ったからであろう。

自動変速のない2ペダルは国産ではMR-Sが最後

あらためて整理すれば、ポルシェ911やフォルクスワーゲン・ビートルに採用された「スポルトマチック」とはクラッチ操作のみが自動で、シフトチェンジはドライバーが行なうもの。

車種によってはDレンジを持っているが、あくまでもドライブに最適なギアという意味であって自動変速してくれるわけではない。2ペダルとなっているのでAT限定免許でも運転できるが、事実上のセミATといえる。

MTをベースとしたAT(フォルクスワーゲンのASGやスズキのAGSなど)の多くが自動変速機構を持っていることを考えると、スポルトマチックという名前の通りに、ドライバーの適切なシフトチェンジを要求するトランスミッションだった。

このようなマニュアル変速機構しかもたないセミATというのは珍しく、国産乗用車ではトヨタのミッドシップ・オープンカー「MR-S」が採用したSMT(シーケンシャル マニュアル トランスミッション)を最後として、姿を消している。

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