【2年半乗って徹底レビュー】”ホンダ S660"の維持や荷室、ドライブ性能、カスタムについて…おひとりさま専用スポーツカー

ホンダの軽スポーツカー、S660が誕生して来年4月で4年が経過する。購入者にクルマの喜びを教えてくれる現代では希有な存在だ。筆者もS660を初めてのマイカーとして買い求め、気づけば2年半が経ち、3万5000キロ以上を走行、そして2019年の夏には初めての車検を迎える。そこでS660というクルマを実際に所有して感じたあれこれを包み隠さずお伝えしたいと思う。

文/写真・栗原祥光

Chapter
ホンダ S660とはどんな車か?
維持費:エコで経済的なS660
荷室性能:ラゲッジスペース(荷室)はどうか?
ドライビング:開放的かつ五感で楽しむドライブ体験
ドライビング:コーナーリング性能の素晴らしさ
カスタム・チューニング:S660を自分好みにカスタマイズ

ホンダ S660とはどんな車か?

ホンダ S660(栗原祥光撮影)

今一度、S660について簡単に説明しよう。ミッドシップ・リアドライブのオープン2シーターというパッケージに、660ccの直列3気筒ターボエンジンを搭載。トランスミッションは6速マニュアルとCVTの2種類から用意されている。端的に言えば、同社が過去販売していたBeatの現代版だ。

開発責任者は当時26歳という椋本陵氏。本田技術研究所の50周年を記念した新商品提案コンペで、「車離れが言われる若い世代から、『車って楽しいんだぜ』というメッセージを世の中にストレートに発信したい」という彼の応募案が優勝したことがきっかけになったという。

また椋本氏は以前S2000を中古で買い求めて所有していたそうだが、その性能を持て余していたため、自分にとって等身大のスポーツカーを作りたいという思いがあったそうだ。

曖昧ながらも明確なコンセプトから誕生したS660は、ホンダでしか作りえない、そして誰もが「ホンダらしい」と思えるクルマに仕上がり世に送り出された。

ホンダは長年、日本のロック・バンド「ハイロウズ」の楽曲「日曜日よりの使者」を企業CMに用いていたが、S660はその言葉がピッタリといったクルマとして、世間に迎え入れられ、発売当初は納車まで1年待ちとまで言われるほどの人気を誇った。現在の納期は2~3ヶ月ほど。それほど待たなくてもS660は貴方の手元にやってくる。

維持費:エコで経済的なS660

ホンダ S660(栗原祥光撮影)

▶︎エンジンフードを空けた状態。

S660の利点は、スポーツカーとしては異例ともいうべき維持費が安いことがあげられる。軽自動車であるため、維持費が普通車に比べてかなり安い。自動車税はリッターカーの1/3といえる金額だし、車体が軽いため新規登録や車検時に納める重量税も控えめだ。

高速道路の通行料ももちろん安い。気になる実燃費も走行シーンによるとはいえリッター17km~18km(CVTの場合)と、さすがにハイブリッド車には劣ってしまうものの、スポーツカーとしてはかなりの高燃費だ。

見た目も、最近のSUVやミニバン、軽バンのような、高さを稼いだ結果による大型グリルと威嚇するような切れ長の目による顔つきとは異なるスマートさを感じさせるもの。1990年台のインテグラやシビックを彷彿とさせる、どこか知的な印象を漂わせる。

軽自動車規格ギリギリの大きさとはいえ、コンパクトなボディは都内の狭い道にも余裕で対応。エコで経済的、それでいてスポーツカーだから走りは楽しい。そんなS660を買わない手はない。

荷室性能:ラゲッジスペース(荷室)はどうか?

ホンダ S660(栗原祥光撮影)

▶︎ラゲッジスペース(荷室)を空けたところ。雨が降っても浸水することはないが、横幅が狭いため、入れるものはかなり限られる。

しかし、そんなS660を購入する上で最大の障害になるのは、走りと引き換えに失った実用性の乏しさだ。ラゲッジスペース(荷室)といえる場所がほとんどないため、物を運ぶ、ということには適していないのだ。

フロントに幌を収容する場所があるので、そこに何かを入れることはできるのだが、直近にラジエーターが配置されているため、庫内はかなり熱くなる。そのため収納できるものは限られる上に、幅が狭いためボストンバッグの一つも入らない。よって運転手の荷物は助手席に置くことになるのだが、どんな大きさでも、というわけにはいかず、経験上飛行機内持ち込み可能な大きさのバッグが上限といったところ。

旅行取材の多い筆者は、その大きさのバッグを複数個用意し、まるでパズルゲームのごとく車内に詰め込むことで対応している。そのような有様だから、助手席に人を乗せる必要がある場合は、自身の荷物は財布と鍵だけとし、かつ同乗者に対して事前に「手荷物は一つまで」と伝えて対応するか、レンタカーを借りるなど別のクルマを利用するのが懸命だ。

このラゲッジスペース(荷室)問題に関しては「おひとりさま専用スポーツカー」と言わざるを得ない。それさえ納得すれば、乗り出し250万円強で、日々の生活がよりハッピーになるカーライフが約束されている。

ドライビング:開放的かつ五感で楽しむドライブ体験

家に引きこもり寝て過ごすだけだった筆者の休日は、S660を迎えてから実に有意義なものとなった。まるで「日曜日よりの使者」が私に一緒にどこかへ行こうよ、と誘いかけてくるかのように、休みの日はクルマででかけたくなってしまうのだ。山中湖や箱根、湘南や鎌倉、鴨川や養老渓谷。都内から1~2時間クルマを走らせるだけで、こんなにも素敵な場所があることを知った。

ルーフを開けると、五感で土地の空気や四季を感じとれ、日本の素晴らしさを知る。もちろん都内でのオープンドライブも素敵だ。表参道をはじめとする冬のイルミネーションは、満点のきら星のよう。桜並木の下を通ると、クルマがほのかに甘い桜の香りがと景色に溶け込んでいく。開放的かつ五感で楽しむドライブ体験は屋根のついたクルマでは味わえないオープンカーならではの特権だ。

ホンダ S660(栗原祥光撮影)

▶︎フロントを空けると幌を収納する専用ラゲッジスペース(荷室)が見える。

ホンダ S660(栗原祥光撮影)

▶︎幌は助手席に置くことが多い。

ホンダ S660(栗原祥光撮影)

▶︎ウイングは止めるネジ穴を変えることで4段階に調整可能

ホンダ S660(栗原祥光撮影)

▶︎幌を取り付ける際、フロント側のフックをゴムに当てないように注意。ひっかけるとゴムが破けてしまう。

オープンカーというと雨漏りを気にする方がいらっしゃるが、洗車を含めて雨水が車内に侵入したことははない。ただ時速100km/hを超えると風切り音やハイグリップタイヤゆえのロードノイズからくる騒音で車内は隣の人との会話が難しくなってくる。スポーツカーだからといってスピードはそれほど出さずに、走りを楽しむことをオススメしたい。S660は低速でも走りが楽しめるクルマだ。

ルーフは電動ではなく海苔巻きのようにしてたたむのだが、慣れれば車内から1分かからずに脱着可能。信号待ちの間に取り付けることだってできる。取り外したルーフは、もちろん助手席へ。ただ、前側にフックがあり、それをゴムにひっかけると切れてしまうので、取り付ける時だけは注意した方がいい。

ドライビング:コーナーリング性能の素晴らしさ

ホンダ S660(栗原祥光撮影)

▶︎SUV車との比較。SUV車両がハイビームをするとサイドミラーやルームミラーに光が直撃する。

ホンダ S660(栗原祥光撮影)

▶︎SUVが発するハイビームがルームミラーに直撃した状態。

コーナーリング性能の素晴らしさも特筆すべきもの。フロントにエンジンがないことによる回頭性の良さは、信号ひとつ曲がるだけでも笑顔になる。峠道などは、まさに水を得た魚。自分を中心にクルマ動く感覚は痛快そのものだ。

軽自動車ゆえ64馬力という出力はいかんともし難いものはあるものの、必要にして十分。常にドライバーの手中にクルマがコントロールできる感覚があり、じゃじゃ馬で手を焼く、ということはない。

S660を購入した方にオススメしたいのは、よりクルマと一体感を得るためのフルバケットシートの導入だ。これにより、自分を中心としてクルマが旋回するという感覚がより一層強くなるし、背の高い人にとっては、座面を下げることで天井に頭を当ててタンコブをつくらなくて済むという副次的効果がある。

身体が痛くなるのでは?と思われがちだが、お尻が痛くなったり腰痛になったことはない。また防眩ミラーの導入も検討されるとよいだろう。車高が低いため、後続車がSUVや軽ワゴンだった場合、そのヘッドライトビームの直撃を受けてミラーはかなり眩しくなる。

ホンダ S660(栗原祥光撮影)

▶︎痛々しい事故の様子。

2年半の消耗品としては、定期的にエンジンオイルやオイルエレメント、ワイパーゴム、そしてCVTフルードを交換した程度だ。エンジンオイルは粘度は0W20か5W30が推奨、量は5リットル缶を買えば2回分交換できるため、筆者は3000kmごと、約3ヶ月に1度のペースで変えている。このエンジンオイルでフィーリングがかなり変わるようだ。

クルマとして何かトラブルがあったかといえば、信号待ちをしている際に後ろからSUV車が追突してきたこと位だろう。もちろん修理代は相手の保険料だが、写真の程度で60万円位と小さい割には結構修理代がかかるため、任意保険に加入する際は車両保険も合わせて加入することをオススメしたい。

筆者がディーラーで加入した三井住友海上の場合、初年度は年間13万円程度、以降次年度10万円弱、3年目8万円強である。愛車を万が一のことから守るには、是非検討していただきたい。

カスタム・チューニング:S660を自分好みにカスタマイズ

ホンダ S660(栗原祥光撮影)

▶︎筆者は足回りをHKSの車高調整式サスペンションHIPERMAXⅣGTに交換。

ホンダ S660(栗原祥光撮影)

▶︎タイムアタック用のエアロで知られるVOLTEXのTYPE-12ウイング。ステーはスワンネックタイプだ。

走って楽しいS660。オーナーはそんな愛車を自分好みにカスタマイズする傾向が強いようだ。以前とあるアフターパーツメーカーの営業マンによると「アフターパーツでよく売れるのは86/BRZとS660、似たようなクルマとしてコペンやND型ロードスターがありますが、比ではない」という声を聞いた。

また、純正アクセサリーの一つで、時速約70km/hになると自動でせり上がるModuloの「アクティブスポイラー」は16万8000円と高額であるにも関わらず、新車装着率は2割を超える人気商品だ。

そのためか、今ではアフターパーツの点数は1000種類をゆうに超える。嬉しいことに軽自動車ゆえか、パーツが他車より手に入りやすい価格帯に設定されており、気がつけば次から次へと買い求めてしまう。

こうして自分好みに仕上げられたクルマは、一層の愛着が湧いて大切に扱うと共に、Hondaがスーパーフォーミュラのレース開催時に行うパレードランであったり、SNSを通じてオフ会へと参加するようになる。

ホンダ S660(栗原祥光撮影)

▶︎12月23日(日)、大黒パーキングで行われたオフ会の様子。SNSを通じて40台以上が集まった。

S660のオフ会に参加すると、本当に同じ仕様のクルマが一台も無いことに驚くだろう。もちろんノーマルの車両であったり、Modulo Xと呼ぶコンプリートカーで参加される方もいらっしゃる。

しかし、その数はまだまだ少ない。ちなみに参加されるオーナーは20~30代、または50代の男性が多いが、若い女性オーナーの姿を見かけることもある。いずれも熱心な方々ばかりで、S660という共通の話題で、何時間も立ち話で盛り上がる。S660は人と人をつなげるクルマでもあるのだ。

多くの人が忘れかけていた「ホンダらしいホンダのクルマ」であるS660。もし機会があるのならぜひ試乗してほしい。初めてクルマに乗った時の楽しさが蘇ると共に、欲しくなること間違いないだろう。そして色々なところに出向いて、クルマとの楽しい思い出を一つでも多く作って欲しい。筆者はS660を迎えて心の底から良かったと思っている。

S660 プロドライバーによるインプレッション

S660 Modulo X 走行動画