公道を走れるレーシングカー!? "ホモロゲーションモデル"とは?

メルセデス・ベンツ 190E 2.3-16

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自動車メーカーが開発する特別な市販車”ホモロゲーションモデル”をご存知でしょうか。レーシングカーのデザインを持ちながらも、公道を走れるまでに落としこんだその市販車は、モータースポーツファンの憧れです。今回は有名なホモロゲーションモデルを紹介していきます。

文・立花義人
Chapter
ホモロゲーションモデルとは?
プジョー205 T16
メルセデス・ベンツ 190E 2.3-16
三菱 ランサーエボリューション
ランチア ストラトス

ホモロゲーションモデルとは?

”ホモロゲーション(Homologation)”とは、「承認」「認証」という意味であり、FIA(国際自動車連盟)などの機関による公認レースに出場する車両に課される規定と、それにともなう認証のことです。

自動車レースには、F1やWRC(世界ラリー選手権)、ツーリングカー選手権など、さまざまなカテゴリーがあり、それぞれに細かな規定があります。

FIA公認レースは、F1のようにレース専用に開発された車両で競うカテゴリーと、市販車を改造した車両で行うカテゴリーがあります。当然のことながら、市販車ベースの競技車両であれば、ホモロゲーション(認証)を取得する条件として”市販車であること”という規定が加わります。

たとえば、市販車に近いグループNというカテゴリーは、『連続した12ヶ月間に2,500台以上生産された、4座席以上の車のうち、グループAのホモロゲーションを取得した車両』という規定になっています。

レースに参加する車両には、非常に細かな規定があり、それによって各クラスでマシン性能の均一化を図っています。市販車ベースのレースカテゴリーでは、改造範囲が限られたものも多く、ベース車に依存する部分が大きくなっています。

そのため、自動車メーカーは競技で勝つために「規定に合わせて性能を高めたベース車両」を開発して、市販モデルとして販売することがあります。これが”ホモロゲーションモデル”です。

では、勝利に情熱を燃やしたメーカーが開発してきたホモロゲーションモデルを、いくつか見てみましょう。

プジョー205 T16

世界ラリー選手権のグループB規定に則り、200台が製造されました。1984年に発売され、1.8Lのターボ付きエンジンをミッドシップに搭載、ロードバージョンは200psを発生するものでしたが、競技用のワークスカーは最大で540psを発揮しました。

外観こそ、コンパクトハッチのプジョー 205に似ていたものの、エンジンの搭載位置はもちろん、ボディの基本構造、駆動方式まで、まったく別物のモンスターマシンでした。

スピードが凄まじく速く、消滅したWRCのグループBで、2年間連続タイトルを獲得。グループB最強のラリーカーと言われています。

メルセデス・ベンツ 190E 2.3-16

1988年、ドイツ ツーリングカー選手権(DTM)に参戦するメルセデス・ベンツが、ホモロゲーション取得のために生産されたモデルです。

エンジンは、メルセデス製エンジンをベースに、レーシングコンストラクターのコスワースが開発した2.3LのDOHC16バルブを搭載、低い車高に前後スポイラーなどが標準で装備されていました。

ライバルは、BMWの初代M3で、DTMのレギュレーション変更に合わせるように、市販モデルも進化。メルセデス・ベンツの190Eは、1989年に190E 2.5-16 エボリューションI、1990年には190E 2.5-16 エボリューションIIとなります。生産台数は、エボⅠ、Ⅱともに500台です。

三菱 ランサーエボリューション

WRCの出場資格を取得するため、1991年に発売されたランサーGSR1800をベースに、ギャランに搭載されていた4G63型ターボエンジンとドライブトレインを移植して開発したホモロゲーションモデルです。

当時のWRCは、グループA規定で争われており、ランエボも当然、グループAを取得できる2,500台が生産されました。メディアなどを使ったプロモーションを行わなかったランエボですが、わずか3日で完売となり、2,500台が追加生産されました。

ランチア ストラトス

イタリアの自動車メーカー、ランチアがWRCで勝利することを目的に開発したクルマです。1974年から量産車として販売されました。

搭載されるエンジンは、フェラーリのディーノ246GTなどに使用されたものと基本的に同じ、フィアット製の2,4L V型6気筒DOHC。市販モデルでは190psの出力となります。

特筆すべきは1トンを切る軽量な車体と、現行の軽自動車よりも短い2,180mmというホイールベース。これにより、優れた回頭性を発揮しましたが、代わりに直進安定性が犠牲となっていました。

当時のラリーはグループ4規定(連続した12ヶ月で400台を生産)で争われていたことから、生産台数は492台と言われています。

登場から40年以上を経過した車両ですから、現存するものはわずかしかありません。その中古車価格相場は日本円で5,000万円程度と、新車のスーパーカーが買えるほどの価格にまで高騰しています。まさにストラトスは、マニア垂涎のホモロゲーションモデルと言えるでしょう。


自動車メーカーの情熱が注がれて生み出されたホモロゲーションモデルの魅力は、快適性よりも性能を追求したストイックさにあります。こうしたワクワク感をもたらすクルマがまた登場してくれたらと願います。

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文・立花義人
フリーライター。5歳の頃に自動車図鑑で見たアルファロメオのデザインに衝撃を受け、以降クルマに魅了される。様々なクルマの個性を知りたいと考え、免許取得後国産・輸入車問わず20台以上を乗り継ぐ。車検整備を取り扱う企業に勤務していた際、メンテナンスや整備に関する技術や知識を学ぶ。趣味はドライブ、食べ歩き。現在の愛車はパサート・ヴァリアント。
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