GT-Rも採用するトランスアクスル方式のメリットとは?

日産 GT-R 2007

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日産 GT-Rやレクサス LFAなど、世界でもごく一部の高性能スポーツカーのみに採用されている「トランスアクスル」レイアウト。このトランスアクスルは、どのような技術なのでしょうか?またそのメリットは?

文・吉川賢一
Chapter
トランスアクスルとは?
トランスアクスルのメリットとデメリット
トランスアクスルの採用例

トランスアクスルとは?

※画像は日産 GT-R(2007年発売)

「トランスアクスル」とは、トランスミッションとデフを一体化した動力伝達機構を指します。

エンジンが、駆動輪の近くに配置されるFF車やRR車、ミドシップ車の動力伝達機構もトランスアクスルと呼びます。これらは、トランスミッションとデフをユニット(集合体)として作ることで、スペース効率が高く、また軽量化にもつながります。

また、モーターとエンジンを搭載するEVやPHEVでも、モーター駆動のためにトランスアクスルを使うのが、一般的です。そのなかで、今回着目するのは、FRのトランスアクスルです。

トランスアクスルを採用する理由は、重量物が車両の前方に集中するのを避けるためです。

車体のなかでも重量物であるパワーユニットのエンジンとトランスミッションを切り離し、ミッションと後軸のファイナルデフを一体化して、重量配分を適正化します。

冒頭に挙げた日産 GT-Rやレクサス LFAなどは、フロントヘビーによる回頭性の低下を避けるために、トランスアクスルを採用しているのです。

トランスアクスルのメリットとデメリット

クルマの操縦性や運動性能を向上させるには、重心を下げ、重量物を車両中央に集中させる、車両の前後重量のバランスをとるなど、基本的な車両のポテンシャルを向上させることが効果的です。

重量物を車両中央に集中させる代表的なレイアウトといえばミドシップ方式ですが、ミドシップでは後席スペースや音・振動面で、明らかに不利になります。レーシングカーでミドシップが主流となっているのは、その後席スペースや音・振動面といった要素を排除することが可能で、かつ運動性能を追求するためです。

そういう割り切ったレイアウトでもクルマを販売できるのは、フェラーリやランボルギーニ、さらには一部のスーパーカーのみ。ある程度の居住性と、快適性を求めた場合、トランスアクスル方式はとても魅力的なレイアウトとなるのです。

しかしデメリットもあり、エンジンが生み出したパワー(回転)を後輪に伝えるプロペラシャフトは、通常は減速されることがないので、振動・騒音に対する対策もシビアになります。そのため、製作にコストの掛かるレイアウトになってしまいます。

また、一般的なFR車に比べて、複雑な構造のために、メンテナンスしにくい(=メンテナンス費用が高い)という問題も生じます。

トランスアクスルの採用例

これまで市販車にトランスアクスルを採用したのは、アルファロメオ、ポルシェ、シボレー コルベット、フェラーリ、ランチア、マセラティなど。なかでも有名なのは、1970〜1990年代に生産されたアルファロメオのアルフェッタ/75系で、50:50の前後重量配分を実現し、その走りに関して、非常に高い評価を得ていました。

2007年発売の日産 GT-Rのトランスアクスルは、トランスミッションとデフのみならず、クラッチや4駆システムを含めて1ユニット化し、後輪側に配置しました。このタイプのトランスアクスルは世界初で、前後重量配分を適正化し、R35の圧倒的な走りや安定性に貢献をしています。

また、2010年発売のレクサスLFAは、エンジン等の重量パーツは、できるだけ低い位置に、できるだけ車両中央に寄せることを目標に、トランスアクスルを後輪の直前に配置しました。その結果、前後重量配分は48:52となりました。

FR車のトランスアクスル方式は、クルマの操縦性や運動性能を左右する車両重量配分を、適正化するためのレイアウトです。小型化と静音化が進めば、一般的なFR車にも採用される可能性はあるのではないかと考えられますので、今後の技術進歩に期待したいですね。

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