ラダーフレームを採用する車5選〜国産車編〜

トヨタ ランドクルーザー 2018

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トラックなどを除く、乗用車カテゴリーではすっかり絶滅危惧種となっている「ラダーフレーム構造」。SUVの一部に残るこのメカニズムについて、今回はスポットを当ててみました。

文・山崎友貴
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馬車時代から使われてきた伝統の構造
絶滅危惧種?ラダーフレーム構造の国産車

馬車時代から使われてきた伝統の構造

現在、クルマには大きく分けるとふたつのボディ構造があります。まずひとつが、現在ほとんどの乗用車に使われている「モノコックボディ構造」です。これは、鋼板をプレスしたり、折り曲げたりしてできているボディ構造を指します。ちょうどティッシュペーパーの箱のような作りで、薄い板でも互いの面で支えることで、全体に強度を出すことができます。

プレス加工技術の向上と共に複雑な曲線デザインが可能となっており、併せて軽量化できるのが利点です。またモノコックボディは、ボディに直接サスペンションやエンジンを取り付けるため、作業工程が少なく、構成部品を減らすことができるというメリットも持っています。昨今のSUVもほとんどがモノコック構造となっています。

一方、ハシゴ(H)型フレームに、別に製造したアッパーボディと駆動系シャシーを取り付けるというのが、ラダーフレーム構造です。この方式はトラックやオフロード4WDなどに多く見られます。

その理由としては、第一に大きな荷重にも耐えられるからです。ハシゴ型はフレームは動物の骨格のようなもので、外からの重さや衝撃を吸収します。

ですので、激しいオフロードを走る4WD車は路面からの衝撃吸収も考えて、ラダーフレームを採用するわけです。路面からの衝撃をフレームがほとんど吸収するため、アッパーボディが長持ちするのです。

ラダーフレームは、ボディ、フレーム、駆動系シャシーが別々のために構成部品が多く、生産工程も増えることになります。しかし、どこかが壊れてもその部分のみ外して修理することが可能という利点を持っています。

例えば、樹木にぶつかってボディが激しく損傷しても、ラダーフレームから下が問題なければ、ボディのみを交換すれば走行ができます。足まわりを損傷しても、その部分のみを交換すればすぐに復帰できます。さらに言えば、ボディがヘコもうが、ラダーフレームから下が問題なければ、そのまま走って帰ることができます。

モノコックボディの場合は、大きな衝撃を受けてしまうと、ボディ全体に歪みが生まれる可能性があります。そのため、激しい衝撃を受けた場合はボディの歪みを測定し、歪みがある場合は構成部品を全部下ろして修正する必要が出てきてしまいます。歪みが修正できない場合は、廃車ということもあり得るのです。

オフロード4WDに限って言えば、悪路を走る時に十分なサスペンションストロークが必要です。ラダーフレーム構造であれば、ボディとフレームが離れているため、タイヤとタイヤハウスの距離を離すことができます。さらに重くて大きな径のタイヤ&ホイールを装着しても、フレームがその重さを支えてくれます。

ラダーフレーム構造はこうした利点ゆえに、フレームが木製だった馬車の時代から使われてきました。原始的とも言えますが、修理や整備がしやすいゆえに、ワークホース的なクルマにはいまだに使われているのです。

一方で、頑丈なラダーフレーム構造は衝突時の衝撃を吸収しにくく、乗員へのダメージが大きいと言われています。また重量が重く、燃費という点でも不利になります。

そこで昨今は、ラダーフレームの前部側をクラッシャブルな構造にしたり、モノコックと組み合わせたビルトインモノコック(フレームインモノコック)構造にするなど、工夫がなされているのです。

絶滅危惧種?ラダーフレーム構造の国産車

前でご紹介した通り、安全性や環境性を考慮して、現在ではほとんどの乗用車がモノコックボディを採用しています。その中で、ラダーフレーム構造を採用しているクルマは、トラックを除いてごくわずかとなってしまいました。まずラダーフレーム車代表と言えば、陸の王者「ランドクルーザー」です。

世界100か国以上に輸出されているランドクルーザーは、過酷な場所で、しかも非常に長い期間使用されるというのが実態です。そのため、長く使えるようにという配慮から、ラダーフレーム構造を踏襲し続けています。

ちなみに国内では、ランドクルーザー(200系)とランドクルーザー・プラド(150系)が販売されていますが、どちらもラダーフレーム構造となっています。さらにランドクルーザーと兄弟車である、レクサスLXもフレーム構造は共通です。
トヨタと言えば、2017年に発売されて話題を呼んだ新型「ハイラックス」もラダーフレームを持っています。これは前述の通り、重量物を積載する可能性があることと、オフロードを走るためのピックアップトラックだからです。

ちなみに、ハイラックスはリアサスペンションにリーフスプリング+リジッドアクスル式を採用していますが、これもラダーフレームと似た理由があります。

まず頑丈なホーシングという鋼の筒に駆動系が入ったリジッドアクスルは、非常に頑丈で、荷重や衝撃をラダーフレームと同様に吸収してくれます。第二に、リーフスプリングは何枚か重ねて使うため、仮に1枚が折れてもそのまま走行することが可能ですし、折れたリーフのみを交換すればいいので経済的です。

さらに路面の障害物にぶつけたとしても、簡単に破損しないという頑丈さを備えています。また、アクスルの位置決めをリーフススプリングが兼ねるため、リンク類がいらなくなり、サスペンションの構成部品を減らすことが可能です。つまり整備性が良くなるわけです。
さて本題に戻りましょう。次のモデルは、日本が世界に誇るオフロード4WD「ジムニー」です。この夏に新型が登場すると話題が沸騰中ですが、ジムニーも伝統的にラダーフレームを使ってきました。おかげで長寿命の個体が多く、40年前の車体でも現役で元気に走っています。

またラダーフレームという特性を活かして、アッパーボディを極限まで軽量化でき、しかも小型なため、トライアル競技などモータースポーツでも多くのジムニーが活躍しています。カスタムベースとして楽しむファンも多くいます。
最後は番外編です。かつてオフロード4WDの盟主と言われたのが「パジェロ」です。パジェロは三菱ジープのレジャーバージョンとして誕生しました。

パリ・ダカールラリー(現ダカールラリー)など国際ラリーレイドでの活躍から、スポーティなイメージが強くなり、1999年に登場した3代目以降はビルトインモノコックボディを採用しています。

モノコックボディとラダーフレームが溶接で一体化されているため、通常のラダーフレームとは異なりますが、これも仲間と言えなくもありません。


今回はラダーフレーム構造についてスポットを当ててみましたが、時代の流れやテクノロジーの進化により、やがてこうした形式のボディがなくなってしまうかもしれません。そんな時代が来たとしても、数十年前のラダーフレーム構造の車は確実に現役で走っていることでしょう。

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