岡崎五朗のクルマでいきたい VOL.97 セダンの利点

かつてはクルマの本流だったセダンだが、最近はミニバンやSUV、あるいはハッチバックタイプのコンパクトカーに押されすっかり人気がなくなってしまった。しかし、なぜ本流だったのか、その理由に思いを馳せると、なかなかどうして捨てたもんじゃないなと思えてくる。

text:岡崎五朗 [aheadアーカイブス vol.177 2017年8月号]

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VOL.97 セダンの利点
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VOL.97 セダンの利点

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1ボックスカーとかFF2ボックスとか3ボックスセダンとか、そういう言葉を聞いたことがあるだろうか。最近はあまり使わなくなったが、ここでいうボックスとは“箱"のこと。

セダンの場合、エンジン用の箱と人用の箱と荷物用の箱の合計3つの箱からできているから3ボックス。ハッチバックカーやステーションワゴンはエンジン用の箱と、人&荷物の箱からできているから2ボックス。

1ボックスカーはエンジンと人と荷物を1つの箱に入れてしまう形式だが、ハイエースのようなキャブオーバー型はともかく、最近の乗用ミニバンはエンジンルームが独立しているので、1.5ボックス(エンジンの箱が小さいため)と呼ばれる。

さて本題だ。セダンは3つの箱からできている。それは、人が乗る箱を他の箱と分けることでもっとも快適にするためだ。エンジンと分割するメリットは容易に想像できるだろうが、荷室と分けるメリットもちゃんとある。

荷物が動いてもガタガタ音がしない。スーパーでネギを買っても臭いが車内に入ってこない。後輪を発生源とするタイヤノイズの車内侵入も抑え込みやすい。また、海外ではここが重要視されているが、たとえガラスを破られても車内に置いてある荷物が盗まれない。快適性とセキュリティ面での優位性が、まずはセダンの大きなメリットである。

また、セダンは空気抵抗が小さく、ボディ開口部が小さいためボディ剛性も高めやすく、ルーフ面積が小さいため低重心で、なおかつ重心位置と空力中心点が近いため横風安定性も高まる。そう、いまや「古臭い様式」と捉えられがちなセダンだが、実はエンジニアリング的にみて実に理にかなったカタチなのである。

メルセデス・ベンツSクラスやBMW7シリーズ、アウディA8、はたまたロールスロイスやベントレーなど、世界の名だたる高級車がセダンであることにはちゃんとした理由があるのだ。

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